日曜礼拝の後、1日前送りのハロウィンがありました。


 本当は10月31日なのですが、今年は月曜日で、夜に行っても参加できない信者さんが多いんです。


 残業とか、営業職の方はそれからの時間が客を捕まえられるからって。


 これだけはどうしようもないんですよ。


 教会では、自分の職業を優先するように指導されていますから。





 ハロウィンって、今ではキリスト教徒でなくても、その意味を全く知らなくても、行う人が多いですよね。


 でも、バカ騒ぎはやめてください。


 そんなことをする日ではないんです。


 菓子メーカーやファミレス、某ドーナッツ・ショップなんかが売り上げをあげたいために一般向けにキャンペーンを張ったのが原因だと思いますけど、安易に乗せられないで下さい。


 プロテスタントはそのことを憂い、また許してはいません。


 正式にハロウィンを楽しむのなら、洗礼を受け、プロテスタントになってください。








 ハロウィンは、もともとヨーロッパのケルト人たちが、1年の収穫を神に対して感謝する、というおごそかな儀式でした。





 日本の神社でも常滑祭という、同じ趣意を持った儀式が11月の上旬にありますよね。


 それと同じなんです。


 神社でバカ騒ぎはしませんよね。


 とてもおごそかで静かに執り行われているはずです。





 ハロウィンもそれと同じなんです。


 トリック・オア・トリート


 お化けかぼちゃランタン


 仮装などは、カトリックというキリスト系カルトがアメリカにハロウィンを持ち込むときに始めたもので、正式なキリスト教会では、そのようなことはありません。


 カトリックで言うハロウィンとは万世節といって、カトリックが聖典としている本の大神が生れた日とされています。聖神降臨祭などとも言われています。


 神が降りてきたから大騒ぎで迎える。


 カトリックではその意味で派手なパーティーをするんです。


 


 わたしたちプロテスタントでは、パンとスープというささやかな食事をするだけ。


 今年は1年いい収穫がありました。神様ありがとうございます。


 来年も今年以上にいい収穫がありますように。


 と、神様に祈るのが本当のハロウィンの意味なんです。


 農家が神社に新米を納めて、収穫を神様に感謝するのと同じで、違うのはどの神様なのか、ってだけです。


 最近になって仮装はOKになりました。


 でも、顔と手は素肌でいなければいけないという律法があって、それに準じた仮装ならどうぞってことです。





 若い信者さんはやっぱり仮装してる方もいます。


 でも、律法だけはしっかりと守っています。


 


 わたしたちは、妹や紺野看護師を含めて、仮装はしませんでした。


 彼は仮装してボケるかな、と思っていたんですが、礼拝後に着替えに行かず、多目的室での食事の準備、テーブルとイスを並べランチョンマットを敷いていくようなことに夢中になっていました。


 彼はわたしなんかよりもずっと敬虔だから、仮装はもってのほかなんでしょうね。





 牧師さんの、聖句を引用したお話を聴き、また信者さんみんなで世間話をしながら食事をして、それでハロウィンは終わりました。





 そこからが大変。


 一旦、病室に飛んで帰り、フォーマルな衣装から、わたしはデニムにパーカー、彼はステージ衣装の白いスーツに着替え、慌ててコンサート会場へ。


 着いたのは開場時間の午後6時。


 本番30分前。


 彼は慌ててサックスの音出しを始めるし、わたしは楽屋でそれを見ているだけで。


 彼は夕食抜きですよ。


 わたしもつきあって抜きました。コンサート後にラーメンを食べに妹と佐橋看護師と紺野看護師全員で行きましたが。


 食事の後2時間は管楽器を吹けないんです。


 胃が完全に消化しきってからじゃないと、汚い話ですが、戻ってくるんですよ、楽器の中に。


 それと食事を完全に消化してないと、横隔膜が完全に動かないんです。


 管楽器は腹式呼吸じゃないと音は出ませんから、横隔膜のアップダウンがとても大切なんです。


 本当は団員以外の人間が楽屋に入ることは禁じられているんですが、わたしは特別に許可をもらっているんです。


 ということは、肺癌を経験した人間は、完全に治療は終わりましたよ、腫瘍は残っていません、と言われた日から5年間は、親族がかたときも目を離してはいけないんです。


 再発の危険度がものすごく高いんです。


 大腸や胃はそんなことはないんですけどね。


 再発率の1位が肺癌ですから、本人は恥ずかしいかもしれないけど、わたしはついていないとね。


 腫瘍を摘出したから再発はないだろう、というとノーですね。


 癌は遺伝子の病気ですから、腫瘍があろうがなかろうがおかまいなしです。





 1ベル(開演10分前)でわたしは楽屋を離れて、自分の席へ移動しました。


 翔子と佐橋看護師、紺野看護師がわたしの席を押さえてくれていたので、聴きやすく見やすい席に座ることができました。


 満員です。


 これが、彼の普段やっているモダン・ジャズ、いわゆるビ・バップとかハード・バップなら、聴く人を選ぶのでこんなに客が入らないんでしょうが、ビッグ・バンド・ジャズって吹奏楽の延長で聴きやすいですからね。





 グレン・ミラー・オーケストラのテーマでもある「ムーンライト・セレナーデ」で緞帳があがりました。


 グレンの独特のサウンド、キラー・ディラーを生み出した曲です。


 コンサートの前日の最終リハーサルで、トランペット奏者が唇を切ってしまって、フレーズが吹けなくなって、他のトランペットに廻したらどうかという周囲にも、


 「彼ほどふけるヤツはいないんだよ」


 と答えつつ、


 「よし、このフレーズはクラリネットにしよう」


 金管がリードするのが常識であったビッグ・バンド界にあって、その常識を打ち破って、自らのサウンドを見つけた。


 オリジナルでトランペットが吹けなくなって、クラリネットに廻されたソロ・フレーズを、今夜は彼が吹きました。





 客演のコーラスグループに彼が加わって、やはりグレン・ミラーの「チャタヌガ・チュ・チュー」。




 この曲はグレン・ミラー楽団が主演した映画『銀嶺セレナーデ』のテーマ曲として作られたもので、女性バンドウーマンを1人含むバンドマンのコーラス・グループと男性歌手の掛け合い(この動画では女性歌手と男性コーラスです。でもコーラスはバンドマンから選抜された人たちです。「モダネアーズ」という名称まであるんです。グレン・ミラー楽団って世界一オーディションが厳しくて有名ですが、飛びぬけて素晴らしい楽器のプレイヤーでありながら一流の歌手でもなければならないんですよ。これから君の乗るのは何番線なの?なんていうナンパめいた歌がユニークで、さらにクラリネットのフレーズもどこか道化めいていていい曲です。





 映画『愛情物語』から「トゥ・ラブ・アゲイン」。


 珍しいです。


 この曲はピアノのソロのための曲で、確かにオーケストラ・アレンジもありますが、ビッグ・バンドで、っていうのは初めてです。


 彼が得意にしていて、動画投稿サイトに投稿したりしているんですが、残念ながらきょうは彼はフルートを吹いていました。





 「イン・ザ・ムード」。


 またまたグレン・ミラーです。


 この曲はサックス・セクションがセンター・マイクの前に集まり、フレーズを繋いだり、掛け合い(1人の出したフレーズに対する返答フレーズをもう一人が吹く。フレーズを投げかけた人が、返答する人を指名するんですよ。だからニューヨークで彼が在籍したスクールも、フレーズを繋ぐことを、ハードにやらせたんでしょうね。基本なんでしょう。ジャズの即興性の象徴ですね)をします。その後、自分の席に戻ると今度はバンド全体が楽しいことをするんです。終わりに見せかけて、また演奏を始める、というのを数回続けて、全員スタンド・アップで見事なハーモニーを聴かせて終わり。





 まだまだ、たくさん楽しませてもらいました。


 グレン・ミラー楽団で最も有名な曲。

 「茶色の小瓶」。



 もとはアイルランド民謡で、グレンの妻の大好きな曲なんですが、グレンは田舎っぽいと嫌っているんです。とは言いながら妻に内緒でアレンジして、クリスマスの生放送ラジオ番組で妻にサプライズで披露しようと企んでいましたが、グレンを乗せた軍用機は(軍楽隊に志願してグレン・ミラー大尉でしたから)天候不順で霧の中をさまよい、英仏海峡で消息を絶ちます。

 クリスマスの夜、リーダーを失った楽団はグレンからの妻へのクリスマス・プレゼントとして演奏したという曲なんです。

 グレンの乗っていた軍用機は戦後60年経っても発見されずに、行方不明のままでしたが、つい最近、フランスの「ノチール」という深海潜水艇が発見しました。

 乗員の中にいたのは彼。

 海溝調査が目的で英仏海峡に潜っていたら、たまたま発見した、なんて言ってますけど彼がアルバイトとしてその海溝調査に参加したのは、どうもグレンの軍用機を探すつもりだったんじゃないかな。

 彼は潜水艇操縦士の資格も持ってますからね。

 海溝調査は英仏海峡の下を通っているユーロトンネルのためにユーロトンネルを竣工した日本の三菱重機からの依頼で、トンネルの上か周囲に危険な断層はないか、の調査。

 でも彼はグレンの消息の方が大切だったと思います。

 他人のお金を利用して趣味を実行するのは彼のスタイル。

 機体の傷みが激しく引き揚げは無理で、仕方なく写真とビデオに撮影し、グレン・ミラー財団に届けたとか。

 でも、楽団のオーディションには落ちた。

 考えることが狡いよ。


 一流クラリネット吹きがリーダーを務めたベニー・グッドマン楽団のナンバーとか、ピアノのデューク・エリントン楽団のナンバー。





 エリントンと言えば楽団のテーマ曲の「A列車で行こう」ですが、わたし、つい1週間ほど前にA列車に乗りました。



 想像上のものではなく、本当に走っている列車なんです。


 


 曲のタイトルにある「A列車」とは、ニューヨーク市地下鉄の、ブルックリン東地区からハーレムを経てマンハッタン北部を結ぶ8番街急行 (A Eighth Avenue Express) の名称です。蒸気機関車が驀進し客車を引く様を表現するイメージを膨らませたアレンジも存在しますが、もともとの意味は地下鉄のことです。


 ニューヨーク市地下鉄では同一ルートの路線に「A」(8番街急行、快速運転をしており停車駅が少ない)・「C」「E」(ともに各駅停車、運転区間・系統が異なる)などの運行系統および種別がありました。各系統の電車の前面には、利用者への誤乗防止の注意喚起として「A」「C」「E」等の丸い円盤状の看板(日本でいう種別札)が掲げられていて、ホームに入線してきた電車正面の表示板を見るだけで、その電車の系統と停車駅がわかる仕組みなんですよ。


 この曲の題名と歌詞には、「(ジャズを楽しめる)ハーレムに行くなら、速く行ける "A"看板の電車(すなわち "A" train = 8番街急行)にお乗りなさい」という意味がこめられているんです。


歌詞中の「シュガーヒル」は、ハーレムの西に位置する高級住宅街で、沿線のメインストリートである125丁目には黒人音楽の聖地アポロ・シアターがありました。


 『サタデーナイト・ライブ』という人気番組で、ブルース・ブラザーズ、エディー・マーフィー、バーニー・マック(『チャーリーズ・エンジェル・フルスロットル』のボズレーの弟で、プロデューサーと揉め事を起こして降板したビル・マーレーの弟(ビル・マーレーは白人だし、バーニー・マックは黒人だからあり得ないんだけど)役で、チャーリーからの指令をエンジェルたちに伝え、時には協力プレイもみせた彼も、アポロ・シアター出身で、彼は下ネタを連発して笑いを獲る芸風みたいですよ。


 白人では他にトム・グリーンというコメディアン。やはり映画『チャーリーズ・エンジェル』2本を通してドリュー・バリモアの恋人(というかアッシー君、メッシー君みたいな関係だけど)チャドちゃんもやはりアポロ・シアター出身で、彼は放送禁止用語を連発する芸風。


 番組は生放送なんですよ。


 だから言ったものが勝ち、みたいなところを見事に利用してスターになったんです。


 プロデューサーの1人であったドリュー・バリモアはビル・マーレーに残って欲しかったけど、もう1人の、TVシリーズからのプロデューサーが引っ掻き回してたみたいです。


 彼も1本で降板を命じられて、慌てたドリューが資金を出したソニー・ピクチャーズに訴えて、もう1人のプロデューサーは名前だけで、一切の権限をドリューに与えるようにしてもらい、まず彼を音楽監督として慰留して、ビル・マーレーはスケジュールの都合で無理ということで、『サタデーナイト・ライブ』ファンのドリューがバーニー・マックが気に入って起用したんだそうです。





 また迷走した・・・・・。





 アンコールは、彼を大フィーチャー。


 アルト・サックスのレス・ブラウン楽団の十八番「ハーレム・ノクターン」。



 割とHな感じの曲ってイメージが日本では先行しているんですけど、テナー・サックスがHに吹いてるみたいな。


 でも、それはいつからかはわからないけどそうなってしまっただけなんです。


 本当はトランペットとアルトサックスにソロのある、Hでもなんでもない楽しい曲です。


 イメージだけで決め付けるのはダメですよ。


 特にジャズに関しては。


 プレイヤーによってまったく違う解釈で演奏されるんですから。


 そこが、クラシックプレイヤーが憧れる理由なんです。


 クラシックでは、作曲者の意図、つまり、どんな風景をみて、何を想って曲を書いたのかを見抜かなければならない。


 解釈は1つで、後は理解できない三流、または失格者。


 ピアノ教室ではっきりと言われますよ。


 でも、ジャズは完全自由とは言わないけど、解釈にとらわれなくても、自己表現が可能な音楽で、わたしはそこに魅かれたんです。


 ジャズって難解で騒々しい音楽だとずっと感じていたんだけど、彼が最初に聴いてみるといいって言ってくれたビル・エヴァンス・トリオの「ワルツ・フォー・デビィー」を聴いて思ったんです。


 なんだ、ジャズってクラシックと同じなんだ。ちょっとイケてるクラシックがジャズなんだ、って。


 でも、ハマったら最後ですよ。底なし沼のごとくズルズルと。





 何曲か彼をフィーチャーしたアンコールは続き、いよいよラスト(バンド・テーマを除いて)はベニー・グッドマン楽団の「シング・シング・シング」。


 普通のビッグバンドのコンサートなら第1部で演奏されるらしいんですが、最後を迎える彼をフィーチャーして華を持たせてくれるためにあえてラスト・アンコールにしたんです。




 本当に輝いてましたよ、彼。


 医師の時の彼もボケるときは輝いてますけど。


 診療も輝いてますが、やっぱりジャズのときの輝きとはまったく違います。


 メンバー1人1人にフレーズを吹いて贈って、またソロを。


 思いっきりやったんだと思います。


 イタチは最後にブーとやって逃げるでしょう。


 イタチの最後なんとか。


 でも彼は、最後だからといっていい加減にしたわけでもなく、むしろ自分の中の全てを出し切ったんだと思います。





 終演後の楽屋の彼は、まだ輝きっぱなしで、ニコニコとわたしを迎えてくれました。


 耳もとで小さく「ありがとう」って。


 その途端にじわーっと熱いものがこみあげてきて。


 彼、また耳もとで、


 「だめだよ、それ以上熱くなっちゃ。コンタクトがはずれるよ」


 


 アッマーイ!。


 安達祐美さんの元ダンナ。


 安達さんは彼が音楽でプロになった、高校時代に所属していた大手プロダクションの後輩で、私たちの結婚に際してその旨を伝えようか迷って、結局、本人には伝えませんでした。


 別れてしばらくたってからが、一番辛い時期でしょう。


 ショックが強すぎるかなと思って。


 「ぼくは絶対に結婚はしない」


 なんてあちこちで言ってるから、裏切られたって思われて、なおさら追い込んでもね。


 いつか、彼女もまた幸せになったときに言えばいいかなって。


 でも、同じ立場のSPEEDの今井絵里子さんには伝えたんですよ。


 彼女っていうよりは、彼女の息子さんに伝えたんです。


 ハンディカムで手話で、出会いから結婚までを伝えて、最後に、


 「また、ママも、幸せに、なると、いいね」


 DVDにして送ったんですよ。

 知ってる人は知ってるでしょうけど、彼女の息子さんは聾なんですよね。


 だから手話が必要で。


 絵里子さんも一緒に視たって電話をくれて、彼はごめんねって言ったんだけど、彼女はなんくるないさーって云ってくれたって。


 彼は一時、必ず、SPEEDの「White Love」のプロデュースのっていうのが頭につけられて嫌だったって。


 あの曲は楽曲を書いた伊秩弘将さんがプロデュースをする予定だったんだけど、自分のグループの活動とスケジュールが重なって、彼にニューヨーク録音でプロデュースを頼んできてOKした、って裏話があって、彼はそんなに売れる曲だとは思わなかったらしいんだけど、SPEED最大のヒットになって、ニューヨークまで、日本の税務署が白色申告の手続きをするよう申告書を送りつけてきた、って今でも笑い話になってるから。


 今は不定期でHIROさんとジャズ・ユニット”CoCoDor'"をやってるけど、リリースすると必ずレコード大賞の優秀アルバム賞を受賞するというジンクスがあるんだよね。でも、今年はやってない。



 去年の12月から彼は、癌のことだけで突っ走ってきたんだから当たり前か。


 それだけじゃないんだよ。


 毎年年末から年始にかけて、レコード大賞、紅白、『カウントダウンTV』カウントダウン&ニューイヤーライブも、ジルベスター・コンサートっていう、クラシックのカウントダウンコンサートにも出演を辞退した。


 紅白はクリスマス明けからリハーサルがあってすべてに出演しなければならない、拘束って契約だから、長期間病棟を空けることになるし、必ずわたしが付き添っていなければならないから、そうなると病棟は医師が3人になる。


 年末年始は今の状態であれば、患者さんは全員一時退院できるから、病棟は空になるはずなんだけど、彼が気にするのは、救急救命室。


 名前だけでなんの救命もできなくて、彼を呼びつけるから。


 今年は病棟でカウントダウンを迎えるって。


 たまにTVで、自分の出ていた番組がどんなものなのか客観的に視たいんだって。


 客観的ときたか。


 わたしは素直になって、ちゃんと毎年こなしてたことだけはやってほしい、わたしがついてるから大丈夫だから、って、涙を見せて頼んだよ。


 彼、困ったような顔をしたから、やっぱり女の涙にはどんな男も落ちるって思った。


 そうしたら、


 「いやー、救急搬送がどうってことじゃないんだなー。あのねー、映画音楽がたまってしまってどうにもならないの。TVに出てる閑があるなら書かないとね。「はやぶさ」プロジェクトの映画化だけであと2本依頼があるんだよ。来年2月と3月に公開されるんだけど、締め切りがかなり危険なの。もうギリギリでね。「はやぶさ」が帰還できなくなるから。それに、もう数日で、ハリウッド映画が2本シネプロがあがるんだよ。そうしたら音をつけて送り返さないと撮影のインを遅らせたら組合がしっかりしてるから莫大な違約金を請求されるの」


 シネプロって何?


 「日本の映画ではやらないけど、ハリウッドでは公開される映画を製作するために、全く同じ映画を1本撮影して編集して音楽をつけて、スタッフとキャストだけが観るんだ。そして針の穴をつつくようにしてシーンごとに検討してから、公開用の撮影をする。1本の映画には2本の映画が存在するんだ。だから俳優はみんな演技が上手いように見えるし、完成度が邦画より高くなる。


 1本は聖書がテーマだよ。失敗したらぼくは破門されるでしょ」


 まあ・・・・・・かも、ね


 「だからそっちをなんとかしないと。大体ね、なんで「はやぶさ」プロジェクトの映画の音楽をすべてぼくがやらなきゃいけないの?」


 だって、プロジェクトのメンバーだし


 「だからって、これは酷いよ。同じテーマの音楽なんてそうそうたくさん書けないって。重複は映画会社が違うから許されないし。もういや、「はやぶさ」なんか忘れたい」


 AKBとどっちがいい?


 「それは「はやぶさ」がいいですよ。でもね、アイツはプロジェクトのメンバーだから、アイツに押し付けろっていうのが見えるんだよ」


 サコちゃんにとってそれだけ意味のあるプロジェクトだったんじゃないかな


 サンプル・リターン・ミッションって人類初でしょ


 NASAができなかったことを町工場の集合体がやったんでしょ


 それにサコちゃんがいなければサンプルを持って地球に帰還できなかったんでしょ


 わたしが映画のプロデューサーだったら、「はやぶさ」のミッションを成功させたのは簡単な構造のバイパス回路だと思うよ


 そしてそれを設計した本人が音楽家なら迷わず頼みたいよ


 実話だからリアリティーがなければならないし、だとしたら現場にいた人間が最適だもん


 「うーん。でもプレッシャーで胃癌になる。いや胃は全摘出したから食道癌か」


 わかった


 じゃあ、締め切りに間に合うように、アバウトなものじゃなく立派な音楽を作ってよ


 それなら年末年始はTVに出なくていいから


 その代わり、あしなが基金のコンサートとクリスマス・ディナーショーはきちんとやること


 手抜きなしでだよ


 AKBもいいと思うけどなぁー


 「冗談じゃないよ。なんで、あんな相撲部屋の親方みたいな人に、額に汗して働くことを拒否してギャンブルや株式投資で生活してる連中より高い税率で納税しなきゃいけないの。スタッフ・ステーションの古い新聞をめくったら、相撲部屋の親方がゴルフクラブが折れるほど弟子を殴りつけたって書いてあったけど、あれってあの人のことじゃないの。それに選挙やじゃんけんは企画じゃない、単なる秋元の思いつき。利用される篠田麻里子がかわいそうだよ。人権無視だ」


 やっぱり篠田さんは恋しいんだ。


 その前はほしのあきさんだったんだよ。


 抱き枕のカヴァーがほしのさんの写真。もちろんビキニ。


 結婚したら、自宅に戻ってきれいにたたんで箱に戻した。


 そしてきょうは病棟に箱ごともってきた。


 妊娠3ヶ月がショックで、明日のゴミに出すんだって。




 本当に、ジャズをやってるときと別人だよ。


 こんなにユニークで楽しいのって他にはないと思う。


 だから離婚はできないな。


 こんなに不思議な研究動物はいないからね。