スタッフ・ステーションのTVでは、衆院予算委員会を流していた。


 彼が巡回に行く準備を整えていた頃だったと思う。


 小泉新次郎さんが質問に立っていた。


 政府をガンガン追い込んでいく姿勢に、彼はそうだ、いけっ! と格闘技に夢中になる少年のように応援していた。


 新次郎さんの発言はこうだ。


 「東日本の被災者は職を失って、きょうを生きることも難しい。それで、私からの提案ですが、インフラの復旧や建て替え、整備などをボランティアとしてやってもらいましょう。工具やヘルメット、作業服は国で全て与える。自分の街は自分で整備する。ただ義援金を受け取って、配給を頼りに大の男がごろごろと1日を過ごすなんて、恥ずかしいことだと思いませんか。でも、求人倍率は厳しく、職に就くことさえままならない。だから、そうやって働いてもらって、生活は生活保護を受給してまかなってもらう。どうですか、総理」


 すごい。


 親の血だね。


 アイディアがぬきんでてる。


 流石だね。


 りゅうせきだね。


 ながれいしだね。


 出るなよ、おだてブタ。


 お父さん、元気?。


 「いいねー。自分の街は自分で復旧する。神戸でも、ボランティアが働いていると、次々と被災者自身がボランティアに登録して、自分で汗を流して自分の街を取り戻していった。ぼくが交代で受付にいたとき、地元の壮年のおじさんが登録に来た。


 これがおもしろいおじさんでさ。名前は書いたけど、そこで手を止めたんだ。どうしたのかなと思ったら、いやー住所なんだけど、元住んでいたところは被災で名前しか残ってないから。・・・・・・現住所って用紙にあるよね。現住所ってことはあれだ、今住んでいるところってことだ。つまり、この避難所だな。よし・・・・・・・ここの住所ってどこだっけ?。 俺たちの街だから俺たちが元通りにする。遠くから来てくれたみんなにまかせてぐうたらしてられるか、ってさ。みんな意地だったな。東北人は、あんな街の人たちより馬力があるし、意地だってあるはずだ。募集したらものすごいたくさん集まるさ。ボランティアでいいから打ち込める仕事を与えてやるんだ。なんでもかんでも税金を投入するというのは間違っている。おそらく政府とゼネコンの間に金の関係があるんだろうけど、そうはさせるか」


 所得税増税にびくつく人の発言でした。


 それで、意気揚々と巡回に出た。瞬間に戻ってきた。


 「だめっ、今のだめっ」


 「どうしたんだ、真っ赤な顔をして」


 アネさん。


 「いや、矛盾があります。今の提案」


 「矛盾?」


 「ボランティアで働いてもらって、生活は生活保護を活用することはできません。たとえボランティアでも、労働したら、仕事の内容によって最低賃金ですが時給かける何時間とか日給として計算されて、その分は保護費から減額されます。下手をすれば、ボランティアで使われて、一銭の生活費もないってことになります。彼、勉強不足ですよ。やっぱりお父さんほどの切れがないなー。あれだったら笑いものにされてしまう」


 そういい残し、巡回に出て行った。


 「冷静になれば、たしかにそうだな。今の生活保護のシステムでは、必ず起こる。あの提案を生かすには、特別立法を成立させる必要がある。でも、それだけの時間は残されていない。生活保護のシステムを知らずに堂々と発言したのか、ばか。オヤジさんも破天荒だったけど、息子は別の意味で破天荒だな」


 アネさんは深いため息をついて、押し黙った。


 元受給者の経験談。


 佐藤健さん、って自民無所属の会(要するに派閥に入らない人)の議員さん。



 いつもながら質問が鋭い。


 1点集中方式。


 厚生労働大臣をターゲットにしたら、1問ごとにとても短い質問を浴びせて、返答に立たせるの。


 今の厚生労働大臣って、元NHKのニュース・キャスターで、偉そうなことをバンバン発言していい気になっていたから、ちょっとスカッとする。


 政府席に戻って座るか座らないかのうちに、すぐ質問して、出てくるまで呼び出し続ける。


 ウラをしっかりとっている質問だから答えるほうも詰まるんだよね。


 すると詰まったことについて質問攻め。


 議員としては理想だよ。


 いい加減厚生労働大臣を叩いたら、今度は外務大臣をこれでもかってくらいに叩く。


 彼は笑っていた。


 何がおもしろいの?


 「ある人を思い出したんだ」


 ある人?


 「元・社会党の議員さん。今の衆院議長がいるでしょ」


 元・北海道知事の横路孝弘さんだよね、たしか


 「そう。そのお父さんで横路節雄さん。議会では佐藤さんと同じようなスタイルだった。でも普段はとても柔和な人で、誰彼構わず声をかけ、勝ち組にも負け組にも平等に接して、いつも、何か問題はないか、自転車で遠い村まで走ってた。奥さんにお弁当を作ってもらって、水筒をぶらさげてね。選挙運動も自転車に、店でも売れなくなったような沁みだらけの白布をのぼりにして、候補者名も、自分で筆で書く。選挙事務所もつくらなかった。会合は講演会三役の自宅を持ち回りで行う。ウチの祖父が三役だったから、会合もやってた。たしかぼくが一緒に撮ってもらった写真をたくさん貼ったアルバムがあるはずだな。引越しのときに捨てなかったと思う。学生服の衆院議長とも2ショットがあるよ。とにかく型破りというか、小泉純一郎+佐藤健って感じだった。横路家も小泉家と同じみたいで。大変なんだよなーお父さんが大きすぎると。わかるよね。脳神経外科のスーパードクターを父に持つと」


 わからない


 変なおじさんは変なおじさん


 わたしはわたし


 専門科目がちがうから、比べられない


 「あー、だよね。それはそうだ。ごめんね」


 T-FALで殴られないだけでもありがたいと思え。





 でも、国会中継って、朝10時から午後5時まであるけど、成果がないね。


 1日やっても1歩も進まない。


 みんな、結局は自分の票を取るための宣伝で質問してる。


 わたしはこんなにいい質問をしました。


 次の選挙では1票をお願いします。


 見え見えだよ。


 莫大な歳費(給与)をもらってるんだから、しっかりしようね。