とうとう本番1日目の朝です。

 「街の恵みまちなか食べまるしぇ」。

 きのうから、彼は出品作品の仕込みで、ほとんど寝てない。

 わたしも、寝てない、っては言わない。

 しっかり寝たよ。

 だって、料理に関して手伝えることはないしね。

 お菓子一つ作れないから。

 わたしは、その代わり売り込み。

 販売員でがんばるから。


 休みの若い看護師たちも応援で販売員にきてくれるっていうから、心強いよ。

 実家がコンビニの宇野看護師もいるしね。

 彼には言っておかないとね、彼女がヘコむようなことは言わないこと、って。

 それになんと、おやじ殺しの佐橋看護師と紺野看護師コンビ。

 二人はオヤジ殺しを自負してるし、病棟でも、言うことを聴かないオヤジ患者さんを一発で従わせるからね。特殊能力だよね。

 

 で、出品作品は、いろいろと試作した中で、病棟スタッフの人気トップ1と2になったものにした。

 トップ1は、この街で開発され、この街でしか作付けされていない希少米を挽いて米粉にしたものにケフィア菌という菌を入れて発酵させたプレーン・ヨーグルト。

 これが、ヨーグルト独特の酸味が強くなくて、やわらかな酸味でヨーグルトは嫌いって人でも食べることができる。

 これを、250mlと500mlパックで。


 トップ2は、同じ米粉を使ったドーナッツ。しかも揚げないで蒸したから、油っこくない。むしろコッペパン感覚。

 最初はリングだったんだけど、紺野看護師が、リングの部分を薄く閉じて、くぼみにホイップトクリームとフルーツをトッピングしたら? と、意見をくれて、やってみたら最高。蒸してるからプレーンなドーナッツだけでは味が淡白で物足りない。

 そこで、出た意見を全面的に取り入れた。

 幸い、この街の周辺の街は、いちご・スイカ・メロンなどフルーツの産地だから、トッピングして味がぶつからないものを選んでのせてみた。

 もっちもちで、ミスタードーナッツにもない食感と味。

 フルーツがそれに加わると、フルーツが味を主張するから、プレーンの砂糖だけの味よりいい感じ。


 これを、アネさん医長とヲタク副医長が取り合ったんだよ。

 1つ食べながら、もう一つ片手に持っていて、お互いをはしたないと非難して。

 子どもみたいなものだね。


 11日最終日の夜に審査結果が出る。

 優秀作品は、この街の菓子店で売られる。

 さあ、どうなるんだろうね。

 

 わたしは、お客さんに訊かれたら、自分で試食してみた素直な感想を言うつもり。

 常に正直でないと販売員はダメだよ。

 コンビニ対応もダメ。

 3つしか言葉を言わないでしょ。

 いらっしゃいませ

 ××円のお買い上げです

 ありがとうございました

 ロボットみたいで嫌い。

 白くまくんセヴン・イレヴン・プレミアムがあるから行くけど、でなかったら行かないね。

 ああいうマニュアル対応はしたくない。


 さあ、やるよー!