札幌から戻ってきました。


 残すところ、あと1回。





 きょうの彼は悲しそうな感じがする。


 笑顔なんだけど、背中が泣いてるの。





 間もなくくる、再生ZONEの彼女たちとの別れがつらいんだよね。


 口では、強がるよ。


 「契約を終えることができたら、あのガキどもとさよならできて、せいせいするよ」


 心の中は正反対。


 臨床心理士が見たら、一発でわかる。


 心だけは絶対に隠すことができない。


 顔に必ず表れてるんだ。





 最初は、正直、失敗するだろうと思っていた。


 彼には失礼かもしれないけどね。


 でも、回を追うごとに、目の前がだんだん開けてきた。





 再生ZONEの彼女たち、ほんとにすごいよ。


 今回参加できなかった元メンバーの分を埋めてる。


 最初はバンドとして、まとまりを欠いて、彼が怒ってパイプイスを振り上げたこともあった。


 でも、今ではどこにも負けないスーパーバンドだよ。


 


 彼と相棒のタッグが抜群だったのかもしれない。


 でも、それだけじゃダメなんだと思う。


 彼と相棒はあくまで指令を出すに過ぎない。


 それを実行する彼女たちがいて、初めて成立することだからね。





 帰りの車の中で、彼は面白い話をしてくれた。


 彼は「財津和夫とチューリップ」のファンで、解散コンサートで財津さんが口にした、


 「21世紀の1月、金閣寺でまた逢いましょう」


 って言葉を、守ってくれるかどうか、わざわざアメリカから見にきた。


 ニューヨークー成田間って、56万円だよ、エアクーポン(航空券)が。


 それに京都までの新幹線が必要だよね。


 百万円以上のお金をかけて、そんなことだけを見にきた。


 もし、裏切られれば、それで大金はパーでんねん、でしょう。


 世紀の大バカ。不思議ちゃん。


 そんなのは普通は口だけでしょ。


 コンサートが盛り上がって、感極まって口を突いて出た一言でしょ。


 本人は絶対に忘れてるって。





 ところが、彼が金閣寺で、信じたファンたちと待っていると、財津さんが現れたんだって。


 「約束を憶えていてくれてありがとう。お待たせしました」


 それだけで、彼は感極まって、アーティストとはこうでなければいけない、って、心に刻んだんだって。


 それを見届けると、最後までその場に留まらずに、アメリカに帰った。





 だから、ZONEの「10年後の8月またここで逢えるの信じて」は、彼にとって、ものすごく重たい響きで聴こえるんだろうね。


 


 大丈夫だよ、サコちゃん。


 彼女たちの瞳をみてよ。まぶしすぎるほど輝いてるよ。


 絶対に成功するって。





 事務所の社長から、1枚のCDをもらった。


 彼の最新サウンド・プロデュース作品。


 バンドの名前はサカナクション。


 曲名は『バッハの旋律を夜に聴いたせいです』

 昨年、武道館を満員にしたんだって。

 彼、嘆いてた。後輩がみんな追い越していく、って。

 彼もバンドをやってるし、ZONEの曲はほとんど彼のバンドがオリジナルだから。

 同じ事務所の、彼の後輩。


 今どき珍しいエレクトロニック・ポップ・グループ。


 彼が25年前に試みて、レーベルを倒産に追い込んだことを、今になってやっている。

 それだけ頭の中が進んでるってことだよね。不思議ちゃん。

 いいじゃん。


 正直言って、クラシックをずっと続けてきたわたしには、ビジュアル系とか、うるさいだけのサウンドって、嫌い。


 Xもラルクも受け付けないんだ。


 でも、彼が聴かせてくれるYMO、とかプラスティックモデルなんかは、すんなりと耳に入ってくるし、心地いいんだよね。





 彼に言わせれば、日本版クラフトワークかな、ってことなんだけど、そのバンドは知らない。


 ドイツのグループで、4人組なんだけど、全員がクラシックでものすごいキャリアを持ってる。


 でも、それをあえてぶち壊して、エレクトロニック・ポップを始めた。


 1回のコンサートに数十億円を投じるんだって。


 それで世界ツアーもやる。


 天文学的数字の制作費。


 彼は大ファンでアナログをすべてCDに買い換えて、持っているし、コンサートの模様を収めたDVDも、ドイツから個人輸入するほど。


 XBOX360はリージョン・フリーだから、今度DVDを見せるよ、サプライズだらけのコンサートで、あんなに楽しいのは他にない、ってべた褒め。





 とりあえず、YouTubeから、映像を探したので、載せておきます。


 彼の最新作プロデュース作品もね。