新居ができあがった。

 日曜礼拝の後に見てきた。

 壁一面すべてが収納。

 なんか『解決ビフォーアフター』の世界だね。


 持ち込むのはテレビと、キッチン周りに電子レンジとかシューサーミキサー、炊飯器。

 刃物類は必要だけど、彼の自宅から持ってくればいいって。

 テレビ以外は、彼が自宅で使用していたもので済ませる。

 PCはそれぞれの部屋に、それぞれのものを取り付けて。居間に1台あれば便利なんだろうけどね。

 それはこれから考えればいい。

 寝室にはダブルベッド。

 彼と濃密な時を過ごす。

 なんてことは、ほとんどないから。

 眠るために帰るだけなんだ。


 この家にも、1年のうちに1ヶ月くらい帰ることができるかできないか。

 病院からはものすごく近いよ。歩いて2分くらいだから。

 でも、その2分が患者さんの生死を分ける。

 家から車で飛び出して、彼に急患用出入り口に横付けしてもらって、ロッカーで白衣に着替えて、それから病棟の患者さんのところへ走って。

 家から2分じゃすまないでしょ。

 だから、どうしても病院内にいないと、患者さんを救うことはできない。

 彼は、わたしより自由かもしれない。

 でも、患者さんの容態が急変して、身内が集まってきた時に、冷静にさせて状況を説明するのは彼の仕事だからね。

 他に2人の臨床心理士がいるから、彼女たちでもいいのかもしれない。

 でも、彼はすべてを自分で引き受ける。

 彼女たちには、普通の女の子としての時間を与えてやりたいんだって。

 残業手当とかが目的じゃないよ。

 残業手当なんか一切ないから。

 24時間働いても、8時間働いても、給与は同じ。

 だから、すべてを自分でかぶってる。

 そういう男なんだ、彼って。

 だから、手当てにもならない、看護師交代時の寮までの送り迎えまでやってるんだし。


 このまま特別室を借りて、生活するようになるよ。

 普通の夫婦の生活がしたい。

 でも、できない。

 わたしは医師だから。