だいたいの医者

 

っていうか外科医はさ

 

大学病院や大きな病院から研修をはじめるから

 

オペ室なんて

 

出来上がっているところで働き始めるもんなんだよ

 

看護師も師長から主任、新人ナースまでしっかりとした組織が出来ていてさ

 

麻酔科の医者なんかもカンファレンスかなんか毎日やったりしてさ

 

清潔の概念とか

 

オペ室独自のルールなんてのも存在して

 

そりゃ学生時代にオペ室入るなんていったら怖いもんだったわな

 

そこ触らないで!!

 

とか

 

帽子しっかりかぶりなさい!!

 

なんて

 

すぐにナースが飛び出してきて怒られる

 

虫なんて出ようもんなら大騒ぎだよ

 

清潔が何より大切な区域だからね

 

 

それがうちのオペ室なんてどうよ

 

開院依頼30年以上物置になっていて

 

陽圧でもなければ

 

二重扉もない

 

設備も昭和のまま

 

酸素もなけりゃ

 

麻酔機もない

 

あるのは

 

昭和時代のカチカチのオペ台と

 

今にも消えそうな無影灯

 

手動で開け閉めする手洗い台

 

そこからオペ室の立ち上げが始まったんだよ

 

外来で

 

これは手術が必要だ

 

って患者さんを口説いて

 

オペ第一号にしたのが10年前

 

もちろん麻酔は俺が自分でかける

 

オペってのは

 

飛行機のフライトに似てる

 

一度飛び出した以上、目的地にたどり着いて安全に着地するまでがフライト

 

オペも始めた以上、目的を達成して麻酔が覚めるまで何一つミスがあっちゃいけない

 

うちの病院で初めてのオペをした時も

 

何日も必要な材料や滅菌方法を考えて

 

購入するもの

 

借りるもの

 

用意する薬剤

 

を滞りなく準備した

 

患者さんの検査も抜けが無いように注意し

 

当日

 

麻酔をかけ

 

病棟からモニターと酸素を持ってきて

 

滅菌した覆布をかけ

 

よし

 

オペを始めるぞ!!

 

と成ったとき

 

ふと横をみると

 

野良着を着たおっさんが立ってる

 

ん?

 

清潔にしてなくちゃいけないオペ室に

 

なんだこのおっさんは?

 

するとナースが

 

あ、患者さんの旦那さんでーす

 

おっさんも何のこっちゃか分かってないのに

 

ナースに呼び込まれてオペ室まで入ってきちゃってた・・・・

 

ダメ~

 

お父さん外で待っててね~

 

って

 

これ

 

21世紀の話だよ

 

一番やんなくちゃいけない

 

スタッフの教育を忘れていたって話ね

 

そこから10年

 

俺の専門分野では

 

今や関東でも有数のオペ件数を誇るようになっちゃってんのよ

 

 

 

世の中なにが起こるかわからんねぇ~