僕の外来日は週に2日あります。


水曜日の午後2時から4時までの『ひざの専門外来』と、木曜日の午前9時から12時までの一般外来です。

そして月一で土曜日に当番制で初診外来もしています。

水曜日は完全に膝についての診察しかしていません。

木曜日はひざ以外に、腰、肩、手、足などいろいろな部位の疾患の診察をしています。


患者さんの中には、僕は膝しか診れない(手術できない)先生と勘違いされている人もいます。

(実際はなんでも手術やってます。)


ある時、僕が左膝の人工関節置換術をした患者さんが、今度は右の大腿骨を骨折されました(しかも股関節は過去に他院で人工関節受けている)。

たまたま土曜日の当番制の外来で僕が診察しました。

手術が必要になること説明しますと、患者さんとその家族の方が、


「先生で大丈夫ですか?」


僕は思わず「え?何がです?」

と聞き返しました。


「先生は股関節の手術したことあるんですか?膝の手術しかしてないって聞いたんですが。」


その質問に、もうびっくりしました。

と同時に、ちょっとムカッときました。


「僕は整形外科の医者し始めて、もう20年くらいになりますけど、大腿骨の骨折はよくありますし、今までいっぱいしてきてますけど?」

「僕で不安でしたら、研修医上がりのバリバリの若い先生に手術をお任せしますよ。」

「もちろん、僕も手術には入らせてもらいますが、執刀はその先生にお願いしますけどそれでいいですか?」


患者さん

「いえいえ、そんな若い先生も逆に不安です。先生でお願いします。」


それってなんか、僕にも若い先生にも失礼やなぁとそのとき思ってしまいました。


けど、いちいちそんなことにムカッと来ている僕もまだまだ小者です。

そんなこと言われても軽く笑い飛ばせるような、もっとおおらかな人間にならないといけません。

奈良医大の教授であり、『足の外科』の世界で有名であることを全くひけらかさずに、ずーっと毎週水曜日にうちの病院で普通に一般外来をされている、われわれの教授のように。


ちなみに、この大腿骨骨折(今回の症例はインプラント周囲骨折といいます)の症例は文句なしの完璧な手術をしました。