皆さんこんにちは、珠下なぎです。
初めての方は、初めまして。心療内科医でゆるく作家活動をしております、珠下なぎと申します。
本日はAmazonkindle版で発売中の電子書籍「遠の朝廷(みかど)にオニが舞う」とは1ミリも関係ない個人的なお話です。
電子書籍に関するエッセイは、4月24日に更新の予定です。
前回の記事にTVドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(通称チェリまほ)の感想を書きましたら、いつもよりたくさんのアクセスを頂きました。
更新から数日たっても毎日新規のアクセスを頂いています。ありがとうございます。
前回の記事はこちら↓
天邪鬼考3~イメージの完成&なぎの独り言~電子書籍にまつわるエッセイその㊳ | 心療内科医が現代日本の病理を斬る!~心のケアのあり方から震災後の日本社会について考える~ (ameblo.jp)
というわけで、今回は以前から書きたかった、チェリまほ11話の謎について考察したいと思います。
(以下ドラマのネタバレを含みます。これから視聴する予定のある方はご注意ください)
チェリまほ11話のラストで、紆余曲折の末にやっと両想いとなった主人公・安達清と、同僚の黒沢優一は、いったん別れを選択することになります。
きっかけになったのは、安達が黒沢に、「30歳になってから、触れると人の心が読める魔法を使えるようになった」ことを黒沢に告白したこと。
ところが原作では、ドラマと異なり、二人は別れを選択することはありませんでした。
ドラマでは、どうして二人が別れを選ばざるを得なかったのか?
7年間も安達に片思いし、安達からの告白を受けて、「逃げ出したくなっても、もう離してあげられない」とまで言った黒沢が、どうして「俺たち、もうここでやめておこうか」などと言ってしまったのか。
チェリまほファンの皆さんやライターの方たちの間で、様々な憶測や感想が生まれるきっかけになりました。
断っておきますが、私もその全てを読んだわけでもありませんし、心療内科医の視点から見ているからこれが絶対に正しい!などと言えるものではありません。あくまで一つの見方にすぎません。
人の心は立体的なもの。切り口が異なれば見方も異なります。また、視点を一つに固定して、「切る」ことが、正しいわけでもありません。
ある視点から見ると、このような形にも見えるのではないか?というだけの話です。
以下、チェリまほ11話のラストシーンを、私なりに解釈した感想です。
少し心理学に興味を持ったことがある方なら、「ダブルバインド」という言葉をお聞きになったことがあるかもしれません。
アメリカの文化人類学者・グレゴリー・ベイトソンンによって提唱された概念です。
ダブルバインド=二重拘束とは、「相反する二つのメッセージを含むコミュニケーション状態に置かれること」です。
よく例に出されるのは、子どもが悪いことをした時、「正直に話せば怒らない」言っておいて、話したらやっぱり怒られる、というもの。これをされると、子どもは次に同じ状況になった時、「正直に話しても話さなくても怒られる」ことになり、身動きがとれなくなってしまいます。
11話の場合はどうでしょう。
安達は、魔法の力でプレゼンが評価されたことを、「ズルをした」と自分を責めます。そこで、「魔法がなくなればいい」と、黒沢との関係を進めようとします。黒沢に対して、「関係を進めたい」というメッセージがここで出されます。ところが直後に安達は黒沢を払いのけて、魔法のことを告白します。ここで出されるのは、「魔法を失いたくない🟰関係を進めたくない」というメッセージ。
そしてどちらを選んでも、安達は傷つくのです。
黒沢はダブルバインドの状態におかれ、それではいっそ、と、黒沢らしくない選択をしてしまいます。
冷静に考えれば、12話で言っていたように、「魔法は関係ない」と言えたはず。
しかし、ダブルバインドの状態に置かれたことが、黒沢の判断を狂わせます。
あるいは、関係を進めれば安達だけが傷つき、進めなければ2人とも傷つくと考え、あの選択をしたのかもしれません。
そして安達自身も、自分が出したメッセージによってダブルバインドの状態に置かれ、ただ黒沢の提案にうなずくしかできなかったのでは。
また、原作と違い、安達への恋心を「あってはならないもの」と押し殺し続けてきた、ドラマ独自の黒沢の性格も、大いに関係しているのではないでしょうか。自分の中に芽生えた安達くんへの恋心に対して、基本的にポジティブな原作の黒沢さんは、絶対にあんな選択はしないですからね。
2023年12月20日追記。
この記事は古いため、大幅に加筆修正した記事を公式ブログにアップしています。黒沢の行動について、より深く考察しておりますので、興味を持たれた方はぜひご覧下さい。
チェリまほ11話ネタバレあり感想と考察~心理学の立場から - たまなぎブログ by LTA出版事業部 (ltap.website)
最後に初めての方へ。
珠下なぎはオリジナル小説も発表しています。
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