TVを見ると幻覚といえるものが映った。特に朝食をとる前、みんな教室の机みたいに待っているのだが、TVがついてるとき、特にCMなどの時、なんと形容したらいいだろうか。パチンコで大当たりがずっと続くような幻覚があった。うわづってそれがみえたり聞こえたりするので、無理にテンションをあげられる感覚で気持ちが悪かった。
 それに加えて、モテキさんという人が車椅子で前の席でいつも待っているのだが、お菓子のCMになるとコレも食べた!アレも食べた!と叫んでてうるさくて、みんな辟易していた。
 そういうのも、だんだんおさまってきたころ、やっと退院できるかな?と思っていたのだが、ひとつ自分に悪いくせがあることを指摘された。一週間のお金のやりくりが下手なのだ。
その日一日を楽しく過ごそうと、空調設備のバイトの癖でその日暮らしに近いことをしてしまう。これが良くなれば退院と言われた。
 前の病棟に10ヶ月、次の病棟に10ヶ月、なんとかよけいなエネルギーもおさまってきて、ようやく退院できた。ここから、長ーい入退院を繰り返す13年間が始まるとも知らずに。