🟧 【フランスに暮らしていた頃の記憶──火を止める人、バー・ドゥ・フー】
パリに暮らしていたある日。
病院で知り合ったフランス人のマダムが、こんな言葉を口にしました。
「やけどしたら、バー・ドゥ・フーに電話した?」
……バー・ドゥ・フー?
最初は何かのカフェかと思いましたが、全く違いました。
それは「火を止める人」(火止め師、fire healer)──やけどや放射線障害の痛みを“遠隔で癒す”不思議な存在。
フランス、スイス、ベルギーなどで古くから伝わる民間療法の担い手です。
🔥 Barreur de feu(バー・ドゥ・フー)とは?
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やけどや放射線治療後の皮膚炎などに対して、電話越しに祈りや念を送る人々。
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「名前・部位・症状」を聞いたうえで、独自の方法で“火”を止めるとされます。
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実際に患者からは「痛みが引いた」「腫れがひいた」という声が多く寄せられます。
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多くは無償奉仕で行い、「治す」のではなく「助ける」という姿勢を大切にしています。
🧠 科学では測れない領域?
もちろん、明確な医学的エビデンスはまだありません。
でも──
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プラセボ以上の効果があるのでは?と現場の医師が首を傾げる場面。
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炎症の治まりや治癒のスピードが明らかに変わったという体験談。
こうした「説明できないが、否定しきれない事例」が静かに積み重なっているのも事実です。
🏥 医療との“共存”という選択
驚くことに、フランスではいくつかのがんセンターで
医師の黙認のもと、バー・ドゥ・フーが活動しているケースもあるのです。
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放射線治療の患者が自主的に依頼
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精神腫瘍学(psycho-oncology)の文脈で「痛みと不安の緩和」を評価
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医療の“外側”ではなく“並列”で機能する文化的補完療法
という扱い。
🌿 これはオカルトではなく“文化”
フランスでは医療において、
以下のような「やさしい医療(Médecines douces)」が広く受け入れられています。
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ホメオパシー
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フィトセラピー(植物療法)
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メディカルアロマテラピー
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エネルギー療法(気功や手かざしに近いもの)
いずれも、「信じる・信じない」を超えて、人間の尊厳を尊ぶケアの一部として捉えられているのです。
🗣 つぶやき:
火を止める人──バー・ドゥ・フー。
それは、科学では説明できないけれど、フランスでは病院のそばに“祈る手”があることが普通なんです。
日本では“怪しい”と片づけられることも、他国では“癒し科学の一部”。
これこそ、医療と文化、そして人間の尊厳を考える出発点なのかもしれません。
📚 補足:
この“火止め師”に関する修士論文や人類学的研究も複数存在しています。
「制度医療と民間医療のグレーゾーンにある文化現象」として、ヨーロッパの大学でも研究対象になっています。