「ニキビ跡は治る」とインターネット上で表現されることがあります。

フラクショナルレーザーやその他の機械の治療を用いて何回か繰り返せばいつかニキビ跡が治ると多くの方が思われるでしょう。下の写真は私が2年ほど継続的に治療していたモニター様ですが、複雑な形状をしたニキビ跡も比較的目立たなくぼかされているかと思います。単一の治療ではなく、外科的治療、プラズマ治療、他複数の治療を行っています。しかし治ったかというと少し違うと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

医学的にニキビ跡が治るとは「白色で平坦に近い、目立ちにくい瘢痕にしていくこと」なのだと思います。ニキビ跡は瘢痕組織ですのでそれが治ると言っていいのかわかりません。凹凸した形状をした硬いニキビ跡を治療により少しずつ形状を改善させ、質感をぼかしていく治療はある程度までいくと限界はあります。

しかし一般の方はニキビ跡が消えてなくなり、正常な皮膚(ニキビ跡に陥る前の状態)に戻るものだとイメージしてらっしゃる方が多いように思います。色調、硬さ、光沢など質感はやはり違いますし、自然光ではほとんど平坦であっても照明のあたり方によっては影ができたりすると思います。また、むくみやたるみの程度、しわの寄り方なども正常皮膚とニキビ跡の部分とで若干違いがでてきます。これらを完璧に補正するのは恐らく不可能でしょう。

治療回数も1-2回で終わると思われることがあるのですが、一般に年単位になります。当院でも最低でも1年(治療回数6回)は治療しないとある程度の満足度は得られないと考えています。

医学的にニキビ跡が治った=見た目上、ニキビ跡が消えた ではないと私は思います。
ニキビ跡は形状の問題(凹凸)のことを一般にさしますが、色調の問題(色素沈着や赤み)のことをさして表現するクリニックがあります。これは誤解を生みやすいところですが、色調の問題は時間がくればしっかり治ると思います。形状の問題は完璧に治すのは現実的に難しいです。

世間で普及しているレーザー治療を何十回繰り返しても残念ながらそれは変わりませんし、むしろ周囲の肌質低下(レーザーの後遺症)の方を気にされる方もいらっしゃいます。当院は傷跡治療の患者様が多いので、過去に治療歴10年以上、30回以上レーザー治療をされた方、レーザーアブレ―ジョン治療、培養表皮移植をされた方も数多く見てきています。

また、ニキビ跡の改善の評価は主観的なものが多いように思います。1年が経過して客観的に写真で比較すると改善はしていても、ご本人は1年前の状態を忘れていることは少なくありません。毎日ご自分で鏡で見ているとニキビ跡の微妙な変化は実感できないことも多々ありますし、当然のことだと思います。

皆様は平等に自然老化(加齢)と光老化(紫外線の影響)にさらされます。これらは年々コラーゲンなど真皮成分の量や質に影響を与えます。30代以降になるとそれはしわ、たるみ、肌質低下、毛穴の開きなど色んな肌の悩みで表れてきます。若い頃は目立たないニキビ跡も40代以降になり目立ってくることがあります。ある程度よい状態になった後も何かしらのアンチエイジング治療は継続した方がよい状態がキープできると思います。コラーゲンが増える類の治療であればマイクロニードルセラピーでもメソセラピーでもフォトフェイシャルでも軽い治療でもよいので継続できるものなら何でもよいと思います。