今日は奥さんが大阪の学会に行っているため,夜更かししている.奥さんがいないと酒を片手にブログを夜中まで亢進するのが習慣になってしまった.

当直先には宮城県北の病院が多い.そんなに長いドライブではないが,朝行く場合は面倒だからたいてい高速道路をつかってシャーっと行ってしまう.帰りはだらだらと下の道を通ってくることが多い.仙台市の泉区あたりから北へ大崎(旧古川)までの間は県道56号線というのが通っていて,これがまたいい道なんである.宮城県北から岩手県南にかけては基本的に丘陵地帯であり,なだらかな斜面に棚田状の開墾が行われている.

もともと関東平野育ちであるからして,基本的に地面とは平らで,どこまでもつづくものという感覚がある.赤城や秩父はあっという間に急峻な山岳である.丘というものは存在しない.極端なことをばらすと,私は「暑いぜ熊谷!」の熊谷生まれ&育ちであるが,熊谷市の平均海抜はたしか23メートル.市内で一番高い地点は,海抜80メートルの「観音山」である.冗談ではない.山とはおこがましいくらいの,ちょっとおおきめの「古墳」といった趣である.市内には坂というものが存在しない.東京に行ったとき,なんでこの町はこんなに急峻な坂が多いのかと驚いたくらいだ.

だから昔から「丘陵地帯」というものに対する,憧れ・セレブで優雅な雰囲気,みたいなものを持っていた.そしてこの宮城県北,県道56号線は,この私のノスタルジーにクリーンヒットをかましているのである.信号はほとんどなく,なだらかな丘と適度なカーブ,交通量も少なく,ドライブには最適である.「カーグラフィック」などは,箱根なんかで撮影をやっている場合ではなく,宮城県・県道56号線を使うべきである.

そして道がいいだけでなく,ほんとうに景色が美しいのである.仙台から大崎だけでなく,その先の田尻・瀬峰あたりまでの道も非常に美しい.ヨーロッパ(私はイタリアしかみたことがないが)の農村地帯も確かに美しいが,この宮城県北の農村風景も十分それに張り合えると思う.問題は農家のたたずまいが地味なことだが,これはもう仕方ないだろう.確かにイタリアの赤い屋根や黄色い壁は非常に栄えがあって美しいが,日本にはそもそもそのような色の粘土がない.

この景色をゆっくり堪能しながら,大抵はモーツアルトを,そして気分が乗っているときはチャイコフスキーを爆音でかけて走っている.いつか写真を御供覧したいところである.



決定版 徳大寺有恒のクルマ運転術