あえて挑戦的なタイトルを付けてみた。議論をふっかけているわけではなく、そのように断定してみるのも面白いかなというぐらいのつもりである。



このト長調のソナタは「雨の歌」という表題(もちろん作者がつけたわけではない)がついているが、これは彼自身の歌曲「雨の歌」にこのヴァイオリンソナタ第1番の第3楽章の一部を引用したために流布された通称である。

つまり雨がテーマではない(またこのパターンだ)。

雨がテーマと言えばまっさきに浮かぶのはショパンの変ニ長調のプレリュードであるが、これもご多分に漏れず作者自身がつけたものではない。ただこちらについては「雨だれ」といってもそれなりに説得力のある表現である。

ブラームスの方は雨とは全然関係がない。
私が持っているディスクはこれ。

アーティスト: グリュミオー(アルテュール), シェベック(ジェルギー), ブラームス
タイトル: ブラームス:ヴァイオリン・ソナ
むかしアルテュール・グリュミオーの芸術と言うことでお買い得版で売っていたものであり、もはや店頭にはない。グリュミオーはヴュータン・サラサーテ・イザイなどとつづく「フランコ・ベルギー派」の名人である。もはやクラシック界は拡散・混和しすぎてしまったため、「~~派」という言葉はほとんど意味が無くなってきている。ただヴァイオリンについては楽器自体の物理的柔軟性がほかに比べてかなり高いため、個性は出やすい。



なぜ「もっとも美しい曲」と言ったかという理由。それは「キャッチーかつ飽きない」というスタンダードナンバーに要求される条件を2つとも満たしているからだ。だいたいクラシック音楽の場合、どんなに名曲と言われようとも何回か聴かない限り覚えられないし、たいてい長くて最後まで聴いてられないということがほとんどだろう。

このブラームスのヴァイオリンソナタはCMなどにつかわれるような感じの曲ではないので、クラシックを聴かない人が知っている確立は限りなくゼロに近い。ただそういうひとに聴かせても、ヴァイオリンという楽器自体が嫌いという人をのぞいて(あるいは含めても)、ほぼ100%が初めて聴いても覚えられ、かつ美しいと感じる曲だ。なんども言うが、言い過ぎは覚悟している。

ヴァイオリニストと呼ばれる人は、ほぼかならずこの録音をしているかするはずなので、いろいろ聞き比べできる名曲です。しかも3番しかないため、だいたい1枚のディスクに収まりきるというのもこのヴァイオリンソナタシリーズの良いところ。1番だけでなく、2番・3番も名曲です。
アーティスト: ムローヴァ(ヴィクトリア), アンデルシェフスキー(ピョートル), ブラームス
タイトル: ブラームス : ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78「雨の歌」
どれをあげていいかわからず、とりあえずちょっと異色なコンビをあげてみた。二人とも別々には聴いているが、ペアのものを出していたとは知らなかった。