このあいだ、初めてのDVDについて書いた(ロストロポーヴィチの記事)。じつはその前から買おうと思っていたのは、村治佳織のコントラステスである。

 
タイトル: CONTRASTES〈初回限定盤〉
これは単純なスタジオ録音ではなく、しっかりとした映像作品である。しかもアランフェス宮殿で収録されたとのこと(世界初の試み)。宮殿名を冠した「アランフェス協奏曲」のほかに、スペイン人作曲家の作品を集めたDVDとなっている。

アランフェス協奏曲については今回は特に言及しない。

曲目のなかにロドリーゴ作品がほかに3曲ある。古風なティエント・祈りと踊り・小麦畑で、の3曲である。村治はいままでにロドリーゴ作品を3つ出している。

アーティスト: 村治佳織, ロドリーゴ
タイトル: パストラル
アーティスト: 村治佳織, 新日本フィルハーモニー交響楽団, ロドリーゴ, 山下一史, アーノルド, カステルヌオーヴォ=テデスコ, ディアンス
タイトル: アランフェス協奏曲
アーティスト: 村治佳織, ロドリーゴ室内管弦楽団, ロドリーゴ
タイトル: レスプランドール


ほぼ1年から2年おきにアルバムを出しているのでディスコグラフィーとしてはかなり多いのだが、その中でも同じ作曲家のものが3枚とはギター演奏家の中ではめずらしい。というかロドリーゴ作品集というアルバム自体がそれほど多くない。日本人ではほとんど出していないはず。

技術的に困難ということもある。困難とはたとえばバイオリニストにとってのパガニーニ、ピアニストにとってのリストなどとは少し違う。ギターにとっては理不尽な運指・和声が多用されているからだ。そのわりに演奏効果自体は大きくない。いわゆる「損な」曲となっている。

しかもだ。ロドリーゴ作品はギターを弾かない人が聞くとポカ~ンとしてしまう。クラシックを聴く人でもである。聴かない人ならなにをか言わんや。私もいちど他の楽器もある演奏会で弾いたことがあるが、反応はものすごく鈍かった。はっきりいて失敗である。もちろん下手だというのもあった。しかしかなりうまく弾いても結果はそんなに変わらないだろう。

知り合いにパリ音楽院のフルートを一位で卒業してなぜか医者になった人がいるが、前に村治のロドリーゴ録音(いちばん最初のやつ)を聴かせたら、「なんか空っぽだね」といわれた。彼は天然なので本心だろう。演奏者が私と同い年だと知ると「そのせいか」とはいったが、そのせいだけではないだろう。

ただ、ギタリストにとってロドリーゴはつねに特別な存在である場合が多い。

譜読みもむずかしい、演奏も難しい、そのわりにうけない。

なのに弾きたくなる。不思議だ。