東日本大震災と福島第一原子力発電所事故から、今日で15年が経ちました。

 

3.11は、地震と津波、原発事故が重なる未曽有の複合災害であると同時に、わが国の緊急事態リスクコミュニケーションの重大な問題が露呈した健康危機でもあります。

 

公衆衛生の緊急事態が発生した際のリスクコミュニケーションの目的は、①根拠を活用した(情報に基づく)意思決定、②ポジティブな行動変容、③信頼の維持です。

 

しかし、当時は入手した情報を伝えることで精いっぱいで

「何のためにそれを伝えるのか」

という目的が全く意識されていなかったように思います。

 

また、リスクの影響を受ける住民が意思決定・行動するうえで必要となる情報を迅速に伝えることが信頼を維持するためには不可欠ですが、それも行われていませんでした。

 

当時、専門家が発信していた情報の多くは、

「放射線とは何か」

「この数値は何を意味するのか」

といったハザードについての説明でした。

 

しかし、住民が求めていたのは

「放射線量が高い状況下で、いかにリスクを減らして生活すればいいのか」

という意思決定や行動に役立つ情報でした。


災害時には厳しい時間的制約があり、状況も混乱を極めるものです。

そうした中で、リスクの影響を受ける人びとのニーズに合った情報を迅速に伝えることは容易ではありません。

 

このため平時のうちに、戦略的リスクコミュニケーション計画(クライシス・緊急事態リスクコミュニケーション計画)を策定しておく必要があるのです。

 

戦略的リスクコミュニケーション計画は、以下の2つから構成されます。

1)危機管理チームが全ての関係者と適切にコミュニケーションをとるための計画

2)リスクの影響を受ける人びとのニーズに合った情報を伝えるための計画

 

住民が意思決定・行動するうえで必要となる情報を伝えるためには、平時の備えとして、住民や高リスク者(患者や医療依存の高い方々やその家族など)がリスク下で

  • どのような情報を必要とするか?
  • どのような懸念を抱くか?
  • リスクコミュニケーション活動に何を期待するか?
  • リスクについて科学的にどの程度理解しているか?
  • リテラシーはどの程度か?

などについて把握し、メッセージの下案を作成し、戦略的リスクコミュニケーション計画に入れておくことが重要となります。

 

しかし残念ながら、現在も、こうした戦略的リスクコミュニケーション計画を策定している自治体は、私が知る限り存在しません。

 

いま、この状況のまま想定を上回る複合災害が起きれば、15年前の悲劇が再び繰り返されるでしょう。

 

新型コロナウイルス感染症危機の際も、戦略的リスクコミュニケーション計画が策定されておらず、多くの情報の混乱、差別や偏見などの悲劇が繰り返されました。

 

その状況を改善したいという思いから、私は以下2冊の著書を緊急出版いたしました。

 

 

 

 

自治体職員や健康危機管理関係者の皆様には、これらの書籍をご一読いただき、ぜひ戦略的リスクコミュニケーション計画の策定に取り組んでいただきたいと願います。

 

また日頃から、健康危機下で必要となるコンピテンシーを身につけることを意識した人材育成に取り組んでおくことも重要です。

 

 

 

もし私にできることがございましたら、お声がけいただけますと幸いです。

 

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