誤論というのは誤った考え方です。
誤った考え方に反論しているからといって、その反論が正しいとは限りません。
その反論もまた間違っている可能性が存在します。
私も当ブログであれこれいいたいことを言っていますが、気を付けているものの、結果として誤っているということも少なくないのかもしれません(個人的には、極力少なくなるよう努力しているつもりですが...)
本日、11/10(水) 11:16配信 PRESIDENT Onlineにて
医師の大和田 潔さんが書かれた
『「激減した理由すら説明できないのはおかしい」現役医師が痛感した"コロナ専門家"の無責任ぶり』
という記事が目に留まりました。
このタイトルに関しては、私も全くの同感ですが、中身に関しては賛同しかねる箇所があったので、ご紹介します。
陽性者が激減した理由として、大和田先生は『地の利』の可能性を挙げられています。
・季節性コロナウイルス(変異を起こした今回の新型コロナウイルスとは異なる、通常の風邪症状を起こすウイルスの一種)の感染を通じて、私達がある程度の免疫を獲得している可能性
・APOBEC(アポベック;apolippprotein B mRNA editing enzyme, catalytic polypeptide-like)というヒトの細胞内に存在する酵素は、ウイルスが侵入すると細胞内の一連の信号を発し、ウイルスを自滅させる。APOBEC活性によって日本の流行被害が小さくなった可能性
このほかに、日本の清潔な都市設計や暮らし方、充実した医療システムも波を乗り越えた大切なファクターとして挙げられています。
これらの可能性は否定しきれないものの、ここでは重要な事実が抜け落ちてしまっています。それは『第5波による日本での医療の逼迫状況』です。原因がはっきりしないまま感染がおちついているので、すっかりぬけおちてしまっていますが、第5派によって重症者は増え、確実に医療現場は逼迫していました。大和田先生のお考えが妥当なものであれば、この医療現場の逼迫は起きていなかったと考えます。
まあ、一旦おいときます。
これらのファクターを挙げた後、
"■新型コロナウイルスはどう乗り超えればよかったのか" という項目があり次のように記載されています。
"地政学的なアドバンテージを理解しつつ、重症者に対応しながらユルユル対策するのが正解だったわけです。
ロックダウンもせず、緊急事態宣言を無視して営業を続ける飲食店に警察が踏み込むこともなく、私権制限をする法律をつくるでもなく、国民に自粛をお願いすることでなんとなくやり過ごした日本は大正解だったのです。
国民が過剰な危機意識をもつこともなく、オリンピックやパラリンピックを開催して正解だったのです。コロナ専門家やメディアが引き起こしている過剰な恐怖の欺瞞を見抜いて懐疑的だった国民の慧眼も正解でした。
(中略)
日本のコロナウイルスの激減の理由は、「自粛の成果」や「若者に危機意識が浸透したから」ではないと思っています。専門家は最後まで行動変容を呼びかけてきましたが、目の前で起きている激減を説明できていません。以前の記事で「陽性者急減の理由も(専門家には)わかっていない」と書いたのはそのためです。
(後略)"
『思っています』ばかりです。
まず、『第5波』はチョロイものではなかったという現実を思い出してみましょう。
9.14 毎日新聞の記事です。
重症高止まり 続く医療逼迫
緊急事態宣言 19都道府県延長
一般診療4割減「災害対応のよう」
(中略)
都によると都内の重症者数は、7月初旬の約50人から8月末には6倍の約300人に急増した。
さて、ここに関しては、断定できるものではありませんが、7月初旬から8月末には何があったのか。そうオリンピックです。ここに関して、次のような記事がありました。
読売9.6 東京パラ閉幕 メダル51個
コロナ慰霊の大会完結
(中略)
組織委は5日、新たに大会関係者4人がウイルス検査で陽性判定を受けたと発表。7月1日の公表開始から、五輪とパラの合間の期間を含めた累計の陽性者は848人(五輪547人、パラ301人)で、このうち選手は41人(五輪28人、パラ13人)となった。
いかがでしょうか。それなりの数です。無症状で、検査も穴だらけだったようなので、選手はともかく、関係者の中で無症状に感染していた人間はもう少しいてもおかしくないと考えてしまいます。もちろんここについては根拠はありませんが、この数字が全てと素直に信じられない自分がいます。
また、このような状況のなかで、日本国民の感染対策への意識がゆるんだことは十分考えられます。
さて、政府の緊急事態宣言等がユルユル対策だった中、非常に興味深い報告がなされています。
9.28 日経新聞の記事です。
自粛率、感染者数が左右
"政府はこのほど、日本経済の現状を分析し、課題などについてまとめた2021年度の年次経済報告(経済財政白書)を公表した。新型コロナウイルスの感染拡大から2年目に入った日本経済の針路を探る。
新型コロナは日本の経済も大きく揺さぶっている。政府は20年4月以降、感染抑制に向けて緊急事態宣言を複数回発出した。強いメッセージで人々に行動自粛を促す狙いがあった。だが行動に大きな影響を与えたのは、宣言よりも感染者数の増減そのものだったと白書は結論づけた。
グーグルによる人流データを基に、自宅周辺の滞在時間の増加率を「外出自粛率」とし、店の営業時間の短縮などの直接介入、宣言のアナウンス効果、感染者数の増減などが自粛率にどう影響するか、分析した。
その結果、東京都の場合、20年4月の1回目の宣言発出時は自粛率23%のうち、ほぼ半分の10~13%は感染者数の増減による情報効果で、7%強は営業時間の短縮といった介入効果のアナウンスの効果によるものだった。
政府の宣言や営業宣言にも一定の効果はあった。だがそれよりもテレビのワイドショーやネットニュースなどで連日報じられている感染者数の増減や医療の逼迫といった情報のほうが政府の宣言よりも人々に影響するとの結論だ。
宣言のアナウンスによる効果は、2回目、3回目と回を重ねるごとに小さくなっていったこともわかった。
いかがでしょうか。国民は過剰な危機意識をもたなかったかもしれませんが、感染者数をみながら妥当な自粛行為を政府のメッセージに関係なく行ったことがわかります。
さて、もちろん自粛効果のみで感染がおちついたとは考えられません。
ではその大きな要因は何でしょうか。
私としては、ワクチンの接種および、感染対策の徹底だけでもかなり説明がつくと考えます。
9.28 毎日新聞の記事です。
専門家「第6波」警戒
(中略)
"接種歴が判明している感染者のうち約8割が未接種だった。東京都が24日に開いたモニタリング会議でも、8月1日~9月20日の都内の死者の約8割が未接種と報告された。感染と重症化は、接種を受けていない人に集中している。"
9.1 毎日新聞 医療費減少過去最大 受診控えなど 前年度比3.2%減 20年度
"厚生労働省は31日、2020年度に病気やけがの治療で医療機関に支払われた概算の医療費は42兆2000億円で、前年度から1兆4000億円(3.2%)減少したと公表した。減少幅は過去最大。同省は、新型コロナウイルスの感染を心配した受診控えや、マスク着用、手洗い・うがいといった予防の定着でかぜなどの呼吸器系の疾患が減ったことが要因とみている"
海外をみて、"日本はいつまでマスクをしてるんだ。馬鹿か"なんていう人が少なくありませんが、感染再拡大が報告される中で、日本は感染状況が急速に落ち着き始めています。
ここには、ワクチン接種、マスク着用等の感染対策、日本人の倫理観などが影響していると考えます。
また、日本はPCRを徹底せず、把握されてはいないものの、無症状あるいは軽症のままで既に感染し回復した人たちもかなりの数が存在すると思われます。
そう考えれば、抗体を保有する国民の割合は実際に把握されている数字以上である可能性も考えられます。
さて、このようなことを考えると、第6波に関しては、感染者数以上に、重症者数、死者数をより重視する視点が大切になります。2度のワクチン接種によって、抗体がどれくらい維持されるのか等、まだ予測できない状況も起こりうるので、油断は禁物ですが、これまでとは臨床症状や臨床経過が変わってくることも十分予想されます。
仮にワクチン接種からの時間経過によって、抗体の絶対数は低下していても、ウイルスへの曝露をきっかけに、抗体が急増するようであれば(ブースター効果と呼ばれます)、抗体数の減少は必ずしもワクチン接種前と同様とは限りません。
これらのことに関しては、更なる科学的知見が重要です。
また、条件が変わる時には注意が必要です。海外渡航者の出入国の規制が緩和され始めています。ワクチン接種や、感染対策、国民性の違い等が、感染状況に及ぼす影響は決して小さなものではないと考えます。なぜ感染が急速に下火になったかに対して、ろくな説明もできないのに、とりあえず規制を緩和するということであれば、どこをどう緩めて、どこに注意しなければならないかの適切な判断ができるとは限りません。もし第6波が医療現場の逼迫をもたらすとすれば、水際対策の甘さからくる気がしてなりません。
私の意見をサポートするように、都合のいい記事をピックアップしたような構成になりましたが、むしろこれらの記事を総合評価しながら、私の現時点での仮説を組み立てました。
あくまでも仮説であり、これが絶対正しいといえるものではありませんが、少なくとも大和田先生の"個人的見解"よりは客観性に配慮したものであると考えます。
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