思索の蒼穹言 2021.8.28 『男性育休9割 発想の転換』 | 進化するブログ『思索の蒼穹』

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 東京新聞 6.4E の記事からです。

 

 "発想変え 男性育休9割

  政令市で断トツ 管理職 意識付け効果

 

 千葉市 取らない部下に「なぜ?」調査

  政府が男性公務員の育児休業取得率向上を掲げる中、千葉市は2019年度、政令市で断トツの92.3%を達成した。数字を押し上げたのは職員に「休まない理由」を聞き取るという発想の転換。子育て世代の市長によるトップダウンや管理職への研修で仕事と仮定の両立への意識付けを進めた。

 

 (中略)

 

  千葉市の男性職員の育休取得率は16年度で12.6%だったが、翌17年度から職員が育休を取得しない場合に上司が理由を聞き取る調査を開始。取得は同年度28.7%、18年度は65.7%と上昇した。19年度の数値は政令市で次に高かった福岡市(20.2%)と比べても圧倒的で、千葉市の担当者は「取らない理屈を考えなければいけないので、取得への心理的後押しになったのではないか」と話す。

 二児の父で、自ら子どもを保育園に送迎していた熊谷俊人前市長(43)=現千葉県知事も幹部会議で繰り返し育休取得を促し、全管理職が毎年度、子育てを積極的に支援する「イクボス」宣言をし職場に働き掛けた。"

 

 (後略)

 

 2019年度取得率一位の千葉市が92.3%

 2位の福岡市が20.2%

 3位の北九州市が19.3%

 4位 さいたま市 18.2%

 5位 新潟市 16.2%

 

 千葉市、断トツです。

 

 いかにトップからの積極的な働き方、心理的・社会的ハードルをさげることが大切かが窺えます。

 それだけでなく、休まない理由を聞き取るという「発想の転換」

 

 この視点は、育休にとどまらず職場や社会における様々な点で参考になると考えます。

 

 たとえば子供たちに勉強を促す際に

 「勉強しなさい!」と頭ごなしにしかってしまうことはないでしょうか。

 発想の転換をして「何故、勉強しないの!?」と尋ねると

 

 「勉強がいやだから」

 「めんどくさい」

 「勉強なんて役にたたない」

 「別にいい大学や会社に入りたくないし」

 

 という返事が返ってきそうです。

 

 う、言い返せない、、、

 

 発想の転換失敗でしょうか。いえいえ、そうとも限りません。

 

 「何故、勉強しないの!?」と質問するということは、質問する側は『勉強はするべきだ』という前提を持っているはずです。ではその前提はどういう理由によるものなのでしょうか。

 

 いい大学や会社に入れるから

 点数の悪い子より、優位な立場にたてるから

 勉強を促した親や教育者、指導者が、実績を誇れるから。

 

 まあ、そういう側面はあるでしょうが、これを伝えて子供が、「はい勉強します」と素直になってくれるとは思えません。もし仮にこれで勉強に打ち込んでくれても、同時に困った考え方が植え付けられてしまいそうです。

 

 ・知る事そのものが楽しい。

 知識が増えれば、周りのしくみや、状況がよりわかることにつながります。

 興味も沸くし、一見無関係なものに関連があることがわかれば、知識欲はさらに高まります。

 

 ・他人に騙されない

 無知な場合には、誤った情報を他人から与えられ、相手にいいようにあやつられてしまうかもしれません。知識を増やすことは、自分の身を守るためにも大切です。

 

 ・勉強は、義務ではなく権利

 歴史を通じて、一般大衆が言葉を読み書きでき、知識を学ぶことが今ほど当たり前だった時代は存在しません。『教育・勉学』というものは、為政者にいいように情報をコントロールされ、出世の機会もなく、差別も今より更にひどく当たり前だった時代を通じ、先人達がやっとの思いで勝ち取って来た権利とも言えます。

 

 こういう勉強のメリットを十分に認識してもらった上で、「何故、勉強しないの!?」と質問してみましょう。

 「頭が悪いから」

 「暗記が苦手だから」

 「役に立つとは思えないから」

 「勉強が嫌いだから」

 

 私は頭の良さは他人と競う必要はないと考えています。どう考えても勝てない相手というのは存在します。しかしながら、知識をつけることで、昨日の自分に勝つことは不可能ではありません。地道に努力を続けていれば、気付けば勝てないと思っていた相手をはるかに超えていたという場合もでてくるでしょう。

 

 勉強が嫌いな場合には、勉強が役立つこと、勉強の楽しさを知れる機会を一緒に探っていくことが必要となります。

 

 暗記が苦手、苦手科目があるという場合には、まずは苦手意識を解消するために、ハードルの低いところから始め、徐々にハードルを上げていくのが良いでしょう。

 

 すごく薄い本や参考書をまずは一度読み終える。それを何度か繰り返して読んでみる。私自身暗記がすごく苦手なのですが、「興味をもつこと」「反復すること」は非常に有効な戦略となります。苦手意識を軽減させ、ちょっとした成功体験を増やし、自己肯定感につなげながら徐々にハードルをあげていくのがよいでしょう。

 

 

 さて、『育休』に話しを戻しますが、千葉市と違って育休の取得が進まない理由の一つに職場の理解が得られないという状況も存在するようです。

 

 2021年5月23日 東京新聞5.23Eの記事からです。

 

 "4人に1人が「パタハラ」被害経験 上司の妨害などで4割が取得諦め 厳しい男性の育児参加

 

 過去5年間に勤務先で育児に関する制度を利用しようとした男性の26.2%が、育児休業などを理由にした嫌がらせ「パタニティーハラスメント(パタハラ)」被害の経験があると回答していたことが23日、厚生労働省の調査で分かった。上司による妨害行為が多くみられ、経験者の42.7%が育休の利用を諦めた経験があった。

 政府は男性の育休取得を促進するため今国会に育児・介護休業法などの改正案を提出しているが、改めて男性が育児で休みやすい職場の環境づくりの難しさが浮き彫りとなった形だ。
 調査は昨年10月、インターネットで実施。自営業や役員、公務員を除いた500人が回答した。
 内容としては、育休制度などを利用させなかったり取るのを邪魔したりする言動のほか、人事考課での不利益な評価やほのめかしなどが目立った。"
 
 
 なんてひどい上司なんだ!
 人でなし!
 
 とお思いになられますか?
 
 私は思いたいところですが、こんな上司は山ほどいそうです。決して一部の意地悪な人間、職場に限ったことではない気がします。
 
 何故パタハラが減らないのでしょうか。
 様々な理由が考えられますが、『「育休」への理解の欠如』、『不公平感』は大きなウエイトを占めると考えます。
 
 そもそも何故育休が必要なのでしょうか。
 
 ・出生率が低下する中で、女性の社会機会・進出を増やし、出産・育児を支援する
 ・育児は女性だけのものなく、男女ともに関わるもの
 ・福利厚生を充実させ、優秀な人材を幅広く雇用する
 
 メリットは様々挙げられますが、一時的に個々人の休職によって、その他の人々でサポートする必要があるものの、中長期的にみるとその方が職場や社会にとってトータルのメリットが大きいのがその理由であることは間違いないでしょう。
 
 私は、育児休暇を様々な福利厚生の一つと捉える視点が必要で、育児休暇を『育児』として切り取ってしまう限りは、パタハラはなくならないと考えます。
 
 「私達の時代には、育休なんてなかった」
 「君が休むと、そのしわよせが誰にくるかわかってるのか?」
 「まだ、就職して何年もたってないのに、いきなり育休!?」
 
 こんな感情に、日々のストレス、会社への不満などが重なると、必要以上に理不尽なパタハラにつながることは容易に想像がつきます。
 
 育児世代には育休、介護世代には「介護に関する休職」、病気にかかった人には「病気休暇」
 
 職場全体で、仲間をサポートしていく。そういう制度の一つが育休であるという視点が欠けたままでは、育休制度も広がりはしないでしょう。
 
 制度を推し進めるにあたっては
 「何故その制度が必要なのか。そのメリット、デメリットはどういうものなのか。メリットはデメリットを上回るのか」
 「その制度から直接恩恵を受けられない人にとって、その制度をサポートする意味や理由はどこにあるのか?」
 
 制度を採用し普及をはかるトップや担当部署は、こういった部分を十分に検討する必要があるでしょう。
 
 制度が普及しないとグチをこぼす前に、まずは自分自身がその制度のメリットを十分に認識できているか、メリットがあると考えるならばそれを周囲が認識・理解できるように十分な説明が行えているか。
 やはりまずは他人よりも、自分に変えられる点、変えるべき点がないかを内省することが大切だと考えます。
 
 
 
 また、不公平感があれば、無意識にパタハラをする側に回ってしまいそうですが
 ここでもちょっと、立ち止まって考えてみることが大切です。
 
 パタハラで同僚の育休の意思を無理矢理阻止してみせれば、その時は立場の優位性を感じたり、一時的な感情のはけ口にできるかもしれませんが、
 
 中長期的には決して得にはならないでしょう。
 
 何らかの理由で休みを取りたいと思っても、周りから助けは得にくくなるでしょうし、
 その同僚が自分より出世した場合には、それこそ窮地に追い込まれるかもしれません。
 
 不公平感にとらわれ過ぎて、過剰な反応をとってしまうと
 かえって今よりマイナスな立場に自分を追い込んでしまうかもしれません。
 
 『損して得取れ』という言葉はよく知られていますが、
 『一文惜しみの百知らず』ということわざもあります。
 
 目先の損得にとらわれすぎて、結果的に大損してしまうことの例えです。
 
 意識しててもなかなかできませんが、やはり中長期的な視点に立つことが大切なのは間違いありません。
 

 

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