CIA諜報員が駆使するテクニックはビジネスに応用できる | 進化するブログ『思索の蒼穹』

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有隣堂で並べられており、また面白そうな本が出版されたな!とおもって購入したら、2014年7月10日 第1刷発行とありました。

エキシビション、広告や宣伝って本当に大事ですね。

 

帯には(作家で元外務省主任分析官の)佐藤優氏大絶賛!とあり

「こんな本は今までなかった。日本語で読める最高の1冊だ」

最強の情報機関の極秘スキルは「対人の技法」の宝庫だ!

インテリジェンスのプロ中のプロである佐藤優氏がここまで絶賛した本は、かつてなかった。

読みやすく、実行可能なスキルとノウハウの数々。

「アート」ではなく「技術」だからこそ再現可能性がある。

本書は最高のビジネス実用書である。

 

と大賛辞のオンパレードです。

 

著書のJ.C.カールソンさんは作家で、元CIA諜報員。大学卒業後に、スターバックス、バクスターインターナショナル(製薬会社)、テクトロニクス(計量器メーカー)などの名門企業を渡り歩いたあと、CIAに入局。諜報員として10年近く勤務したのち、退職し、作家に転身された経歴をもちます。

 

一般企業も、CIAも知り尽くしたカールソンさんによって、諜報員の技術のうち、法律をおかしたりせずにビジネスに活かせる戦略やテクニックが盛りだくさん紹介されています。

その中には交渉術、人を説得して仲間にひきいれる際に気を付けること、上司としての心得、情報の守り方などが含まれます。

 

諜報員は情報をえるための協力者が必要となります。誰を協力者として選ぶべきか、そのターゲットとどう人間関係を構築し、どういったタイミングで協力者になってもらうように要請するか。要請する際にはどのようなことを注意すべきか。この過程の中のどこかで失敗してしまうと、たちまち命の危険が及ぶことになります。それほど失敗が許されない諜報員がみにつけている技術のうち、ビジネスの中でも活かせるものが沢山紹介されているのです。

 

いくつか紹介してみます。

 

まずはターゲットをきめて、その人に会いたい時にどうすればいいのでしょうか?

接触すべき人間がいるからといって、ただ闇雲に会おうとしてもうまくいかない。向こうが「会いたい」と思うような人間になる必要がある。そのためには、少なくとも相手に3つのことを感じさせなくてはならない。

◎「一度あってみよう」と思うだけの理由

◎「人間関係を保とう」と思うだけの理由

◎「何度も繰り返し会おう」と思うだけの理由』

 まず、一度あってもらうことが重要です。これがなければ始まりません。そのためには相手がどのようなことに興味をもっているのか、どのタイミングで声をかけるとよいのか、どう話をきりだすことで自分に興味をもってもらえるのか、といったことを考える必要があります。

 
 そして1度目は多くを語る必要はないといいます。一度目の目的は2度目の話の場を設けることができれば十分なようです。そして2度目以降で徐々に信頼関係を築いていくことが重要となります。
 
信頼関係を築く上で、筆者は

『協力者を選ぶことや、知りたい情報を相手から引き出すことは一種のスキルで、そのためのテクニックもあり、訓練することも可能だ。しかし、誰かと信頼関係を築くことはスキルとはいえない。自分が有用で信頼に足る人間であることを、時間をかけて辛抱強く証明していくしか方法はないのである。』

と述べられています。

信頼関係を築く時に、絶対的なスキルはなく、相手の肩に手をおくなどといったような特定の行為は、ある人にはよくても、ある人には逆効果になるリスクがあるため、その人に合わせた対応が必要になるようです。

 

本書では、情報の守り方についても多くの記載があります。

ごく普通の人でも、大事な情報を奪われてしまう可能性があり注意が必要です。仕事上の企業機密をぬすまれる可能性もあれば、個人情報を奪われる可能性もあります。

アポ電なんかがいい例でしょう。誰もが騙され、利用される可能性があります。

 

情報を守る上で、使える技術は、スパイから身を守るコツから応用することができます。

①出張など移動の際に持ち歩く情報は最低限にとどまめる。また、データを保護するのに使える技術はすべて使う。

②共用の電子機器やネットワークは極力使わない。

③書類は必ずシュレッダーにかけてから捨てる

④自分についてどんな情報が世の中に出回っているかを知っておく

⑤ブログやSNSは注意して使う―SNSは情報を共有するためのもので保護するものではない

⑥普段から近くにいてよく話す人だからといって安心しない

⑦自分の直感を信じる―「何か変だ」と思ったら、話題を変えるか話を打ち切る

⑧同業他社の人間に気をつける

⑨アルコールに気をつける―アルコールはスパイの最高の友

 

ただし、普通のビジネスマンなら、神経質になりすぎない程度の警戒心で十分といいます。情報泥棒は最も狙いやすい標的を選ぶので、一般の人より警戒心があれば、より盗みやすい人にそういうスパイは流れていくというのです。

 

さらに注意は続きます。『外部からの侵入に関してはコストをかけて対策をしても、いったん内部に入った人間への警戒を怠っている組織や企業は多い』というのです。一度内部に入った人間でも、常に裏切りのリスクは考慮しながら、日々の生活を送ることが大切といいます。

 ここで重要なのは『何も、周囲の人間を疑いながら働くべきだということではない。たとえスパイが入り込んでいても、大きな被害が発生しないような体制づくりが大切だということだ』という点です。

疑心暗鬼になるのではなく、もし仮にここを利用されたら致命的というところには、裏切りやスパイがいても対処ができるように対策を前もってたてておく必要があるということです。

 

  また、各企業の強みは、そのまま弱点になることがあるといいます。

 『その企業がまさに強みとしている部分こそ、他社にとっては狙いどころなのである。

 たとえば、顧客に対するきめ細かい配慮が何よりの強みになっている企業があるとする。それは逆にいえば、顧客対応に関して悪い評判が立つことは、その企業にとって命取りになりかねないということである。競合企業はその弱点を突き、わざと悪い評判を立てようとするかもしれない。

 また、業界でもトップクラスの才能を集めているのが強みの企業があったとする。その場合、競合企業はヘッドハンターを雇って、有能な人材をいっせいに奪い取ろうとするかもしれない。最先端技術が強みなら、競合企業はできるだけ早く模倣しようとし、そのために必要な情報に狙いを定めるだろう。低価格が強みなら、供給業者や流通網が狙い目になる。競合企業は供給業者に大金を積んで、取引先を自分のところに変えさせるかもしれない。流通網もそっくり奪い取るかもしれない。

 こういうことを知っていれば、競合企業が何を狙ってくるか事前に予測できるだろう。自分がもっていて、相手がもっていないもの―狙われるのはそれだ。』

 

人材採用でやりがちな失敗についても述べられています。

① 直感に頼って人を選んでしまう。

② 求める人物像も採用基準もあいまい

③ 会社の大方針と照らし合わせず、担当する職務や採用担当者の好みに合う人だけを選ぶ

 

著者はこう述べられています。

あいまいで具体性のない基準で採用すれば、社内はその基準のとおりの人材ばかりになるだろう。自分が何をすれば会社が成長するか、具体的には何もわかっていない人ばかりになってしまう。

 それを防ぐには、条件をできるだけ具体的に示すべきだ。たとえば職務を遂行するのに必要な学位や資格、最低限必要な経験年数などを明示するようにする。どういう能力や人間性をもった人を採用したいのか、その目標をあらかじめ明確にすることだ。

 ただしその場合、会社全体の大方針に照らし合わせることも重要である。全体の方針ではなく、たんに担当する職務にだけ合う条件を掲げてしまうと、あとあと問題になりかねない。』

 

優秀な人材の扱い方については次のような記載があります。

『CIA5つの人事戦略

①次々に新しい仕事を与える―優秀な人材は停滞を嫌う

②社員の履歴書が充実するような肩書きや地位を会社に用意する

③重要な仕事ほど、任せる人は純粋に能力と人間性だけで決める

「優秀な人材に来てもらいたい、定着してもらいたい」と真剣に望むのならば、決して簡単でつまらない仕事などさせてはならない。にもかかわらず、せっかく優れた人を雇っても、すぐに責任の重い仕事を任されるのをためらう経営者が多い。「少し時間が経って職場にも慣れてから」などと考えてしまう。「まだ若すぎるので」というだけの理由で責任をもたせないこともよくある。そうしている間に才能豊かな人は退屈してしまい、余った時間に「もっとよい仕事はないか」とインターネットで検索を始めてしまう。

④部門横断的なチームを編成し、退屈な仕事にもやりがいをもたせる

 退屈な仕事をなくすことはできないが、それを担当する人間にやりがいをもたせることはできる。それには当事者意識をもってもらうことが大切だ。

⑤一匹狼にも居場所をつくる―無理にマネージャーにもチームのメンバーにもしないほうが組織にとっても本人にとってもプラス

優秀な人間だからといって、必ずマネージャーに向いているとは限らない。また、チームで動くことにどうしても向かない人もいる。無理にメンバーにしたところで、本人にとってもチームにとってもためにならないこともある。経営者はそのことを理解し、ひとりで動いてこそ力を発揮する人材に、無理にチームワークをさせないようにすべきだろう。』

 

 

最近はあまり報道されませんが、少し前に報道されていた、バイトテロにも関連すると思いますが、次のような記載がありました。『私生活は必ず仕事に影響するので、日ごろの行動にも注意する

 個人のブログで人種差別的な発現をしている人間は、職場の人達に対しても同じような見方をしているはずである。簡単な話だ。過去の行動を見れば、未来が予測できる。私生活で不道徳なことをしていれば、いずれ仕事中にも同じことをすると考えられる。人間性は一貫したものだ。あるときに不誠実なのに、別のときに誠実ということはない。

  そもそもひとりの人間の行動を、それがいつやったことかで区別する理由などない。不道徳なことをしたのが仕事中でもそうでなくても同じだし、屋外だろうと屋内だろうと、すべて同じことである。問題があるということがわかっている人物を抱えておく余裕のある会社など、ほとんどないはずだ。』

 
 このブログもそうですが、SNSが発達するなかで、ネットはメリット・デメリット様々です。少しの発言がやたらと炎上するのも考え物です。言葉には伝える側の問題もありますが、受け取り側の問題もあります。

 かなり以前にアンパンマンの歌詞の「愛と勇気だけが友達さ」の部分に抗議をしている人がいるというのを耳にしたことがあります。愛と勇気だけというのが子供にとって誤解をあたえるというのです。言葉ですべてを伝えるのは困難です。誤解を避けるには、何も発現ができなくなってしまいます。この場合も、愛と勇気の二文字のなかに人類愛だったり、兄弟愛だったり、友人への愛だったり、正義をつらぬく勇気だったり、様々な言葉が凝縮されていると考えられます。いわば象徴としての二文字です。作詞する際にどの単語を選ぶかかなり悩まれたことでしょう。あきらくんも、たろうくんも、たかしくんも、〇〇くんも、△△さんも、□□さんもみんな、みんな友達さーとしていたら、それこをきりがありません。もし仮に子供たちに「あんぱんまんの友達は愛と勇気しかいないの?」といわれたなら「愛と、勇気っていうのは象徴的にとりあげられているわけであって、この愛と勇気のなかには、友情も平和も大切にする人類愛、正義をつらぬくためには困難や恐怖に立ち向かっていく勇気が含まれているんだよ」と説明すれば、子供たちの発想力、読み手としての想像力も膨らむと考えます。「確かに変よね。作者は間違ってるよね!」なんて説明してしまえば、それこそ、文章なんか書いてられない時代が到来してしまうでしょう。

炎上してしかるべきものも、もちろんありますが、本来炎上しなくてもよさそうなものまで、炎上しているのはいただけません。

 

 

その他にも『敵味方は変わりうるので、競争相手にも誠意と礼節を忘れない』ことも大事とあります。

 『買収や合併、ジョイントベンチャーなどは珍しくないし、時には担当者がひとり替わるだけで、昨日の敵が今日の共になる場合もある。JPモルガン・チェースのように、長い歴史の中で何度も競合相手と合併、買収を繰り返してきた企業もある。そういうことを考えれば、市場で激しく競争している相手に対しても、たとえいくら憎んで軽蔑していたとしても、誠意と礼節を忘れないのは大切だろう。世界はめまぐるしく変わる。将来、誰と利害が一致することになるかは、まったく予測がつかないのだ。』

 

上司・経営者が心掛けておくこともあります。

会社が不振になり、ストレスにさらされると、ほとんど人を褒めなくなる経営者もいる。これは、経営者にとって重要な仕事を放棄しているともいえるだろう。社員のやる気を引き出すこと、社員が成果をあげればそれを称賛することは、大事な仕事のはずだ。』

 

『◎トップの人間が中間管理職を通さずに情報を直接発信すれば、より正確に伝わるうえに信憑性も高まる。

◎姿を見せ、頻繁に話をしていれば、社員のトップの人間に対する信頼感は高まる。この人も自分たちと同じようにこの会社に賭け、必死に苦境を乗り切ろうとしているのだとわかってもらうことが重要だ。

◎組織はどうしても「縦割り」になりがちだが、(人間が二人以上集まれば必ずそういう弊害はある)、トップが直接、皆に語りかければ、部署の壁を越えた人材、資源の活用がしやすくなる。危機においては普段とは違う動きが多く求められるので、この柔軟性は大切である。』

 

顧客への配慮にもアドバイスが述べられています。

 

 『何より大切なのは、顧客の存在を当たり前だと思い、安心しないことである。競合企業に奪われる危機に陥ってからでは遅い。普段からつなぎ止める努力を怠らないようにする。これは会社と顧客との関係だけに限った話ではない。上司と部下、あるいは社員同士の関係にもいえることだ。相手の存在を当たり前だと思い、いい加減な扱いをしていれば、心は離れていくだろう。そうならないように常に心配りをしなくてはならない。』

 

CIA諜報員の交渉術についてです。

『①参加者の数は最小限に抑える

②いきなり地位の高いトップの人間を狙って話をする

③相手の肩書にとらわれず、意思決定をする人間を的確に見分ける

④「敵側」ではなく「中立地帯」で顔を合わせる

⑤相手の弱みを知ったうえで、相手が断りたくても断れない申し出をする

⑥相手とした約束は必ず守る

⑦「ムチ」よりも「アメ」を使いこなす。』

 

巻末には次のようなことが述べられています。

 『現代は非常に競争の激しい時代なので、つい卑劣な手を使ってでも勝ちたいと考えてしまうかもしれない。常に正直に、正々堂々とふるまうのは難しく感じられる。競争相手を蹴落とすようなことはせず、いつも真正面から闘うのは理想的ではあるが、まったく現実的ではない、そう思う人も多いだろう。手段を選ばず相手を叩きのめすほかはないというわけだ。

 しかし、そういうやり方だと、結局、最後には誰も生き残らないことになる。それはスパイの世界もビジネスの世界も同じだろう。汚いことをして、たとえ一時的に勝てたとしても、他人からの評価を下げ、信頼を失ってしまっては長続きしない(法をおかすようなことをすれば訴追され、高額な弁護士費用がかかるかもしれない)。だから、どれだけ破りたい誘惑にかられても、法律などのルールは守っているほうが得策なのである。

 正直さや誠実さが貴重な財産であることはすでに書いた。CIAの諜報員はたしかによく嘘もつくし、法に反する行動もとるが、この本ではその面は強調しなかった。そんな諜報員さえ、任務を遂行するうえでは正直さ、誠実さがとても重要になるという点をわかってもらいたいと思ったからだ。細かいテクニックなどよりも、人間として信頼されるかどうかのほうが大切である。』

 
ビジネスだけでなく、日常生活でも心掛けておくべき情報が満載です。一度手に取られてはいかかでしょうか。