ユニクロ創業者、柳井 正氏による経営者むけの本です。
経営をする上でのエッセンスが次々に述べられます。そして思うのは、これらのエッセンスは経営という点だけでなく、教育や生きていく上での生活態度にも応用できます。
未来の予測が困難で、激変する市場に対応して生き残っていくために必要なものは、まさしく今後の日本を生き抜く子供達に求められるものと一致すると考えます。
ディズニーのアイデアとも一致し、柳井氏もその影響を受けているのが紙面でもみてとれますが、経営をしていく上で成果をあげるために最も大切なことは、社会における自分たちの存在意義、つまり使命を考えることとしています。
会社の使命と成果が結びついていることこそが経営の原則とされています。この原則に従っていれば、会社のために全力でうちこむことで、会社も大きくなり、社会にも貢献できます。金儲けが目的となってしまうと、会社が大きくなるにつれて敵が増えるばかりですが、使命をかかげることで、会社の成長と社会貢献がリンクするようになるのです。
柳井氏によると経営は「実行」であり経営者には四つの力が必要とされるといいます。その四つとは
「変革する力」
「儲ける力」
「チームを作る力」
「理想を追求する力」 です。
我々は常識にとらわれやすいものです。うまくいっている時は特に、現状に甘んじてそれ以上の努力を怠りやすくなります。常識は会社の進化を妨げるため、柳井氏は非常識と思えるほどの目標を掲げ、既存の延長線の発想ではできないことに自らを追い込む必要があると説きます。
その背景にあるのは経営者は「危機感」にもとづいて経営をやるべきであって、「不安」にもとづいて経営をやってはいけないという理念です。
現状で満足していれば生き残れないという危機感が変革する力を生み出すのです。
柳井氏はいいます。「いつも断崖の上を歩いている、ちょっとでも油断があったら、真っ逆さまに落ちてしまうという危機感を持ってのぞむのが「正常な経営」」だと。
「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」
問題解決に対するスピード実行力がないと、一人のお客様を失っている陰で、何十、何百、何千というお客様を失っているのです。逆に問題解決により、今まで以上に企業として成長できる可能性もあります。よくいわれる「ピンチの時こそチャンスの時」です。
ではなぜ、非常識と思えるほどの目標が必要となるのでしょうか?顧客の要望基準は非常に高いため、世界のあらゆる人に通用する、普遍的な高い基準を目指してやっていなかい限り、経営者としては成功できないというのです。
経営者にはマネージメント能力も要求されます。
「現場の仕事は、放っておくと昨日と同じことを今日もやるようになってくる。関心をもたなくなると、毎日が同じことの繰り返し。一つ一つの仕事が単なる作業となる。」そうなると顧客の顔が見えず、顧客のニーズに応えようという気持ちが消失してしまいます。自分自身だけでなく、周囲の意識も自分と一致させる必要があります。
信頼して、仕事をまかせる・権限を持たせることで、各個人はモチベーションとともにその仕事に対する責任感をもつようになります。この責任感・モチベーションによりその企業における経営者とスタッフの理念・信念が一致していくのです。
スタッフに関しては、常に視野を広げ、可能性を広げてあげるよう見届ける必要があります。
優れたリーダーに求められる資質についても記載されています。
「厳しく要求して本当にやってもらおうと思ったら、部下に「君だったらできる」というようなことを言ってあげることが必要。
要求して、やらせる以上は最終的な責任は上司が全部取るということを覚悟しておくということ。部下が一番嫌いな上司というのは、言うことだけ言って、最終的に責任を取らなくて、責任は全部部下に押し付けるというような上司」なのです。
「責任は全部上司にある。うまくいった時は全部部下の功績だ」というような気持ちで部下に接することが大切と述べられています。