前回は機材にプラズマを照射することで接着性を改善できるというお話をしました。
今回はプラズマ照射することで機材の表面を親水化出来るというお話をします。
親水化とは、水になじみやすくなることを指します。
上の写真のように電車やバスあるいはタクシーなどでよく見かけるようになったラッピング電車・ラッピングバスetc。
これは塗装をして絵を描いているのではなく印刷をしたフィルムを張り付けているのです。コンピューターで図柄を書いてそのままインクジェットプリンターで印刷をする。非常にコスパに優れた工法です。
ここで疑問に思うのが、インクジェットプリンターでフィルムに印刷をするとインクをはじいてしまうのではないかという心配があります。しかし、プラズマ処理を行うことでインクをはじきにくく(親水化)しているのです。
詳しく書くと、フィルムや金属の表面にはインクをはじく汚れがあったり、インクと反応しやすい官能基が存在しなかったりします。官能基がないということはインクと手をつなぎにくいということになってしまうので結果としてはじくという現象が発生します。
しかし、プラズマを照射することは今まで書いてきたように数多くの電子やイオンをぶつけることになります。観光地のお土産売り場でガラスに彫刻を施した製品を目にすることがありますが、あれはサンドブラストという工法で小さな石の粉をガラスに吹き付けてガラスを掘っているのです。ところがプラズマの電子やイオンは石の粉とは比べ物にならないほど細かく数も膨大です。ですから表面の汚れを奇麗に落とすだけでなく、プラズマを使う環境のガスの種類をコントロールすることで発生する電子やイオンの性質を変えて、機材表面に新たな官能基を発生させることも出来ます。官能基が発生すればインクはしっかりと機材表面と手をつなぐことが出来ます。
参考までに、ある実験ではガラスの表面に親水処理をする場合、酸素(O2)プラズマをガラスの表面に照射します。
固体表面と液体との濡れ性を評価する「水接触角」を測定すると、処理前は41度だったものがプラズマ処理を施すことで5度以下まで改善した事例もあると言われています。
この技術は現在多くの産業で用いられています。一例としては皆さんのお宅の玄関ドア、最近ではきれいな木目のドアが増えているのではありませんか。あれもドア自体はアルミ製です。アルミの上にフィルムを張って木目を出しているのです。それほどまでにプラズマによる表面処理技術は当たり前の技術になってきているのです。塗装の変わりにラッピングが今後の主流になっていくことは間違いないと思います。