膨らんだ「のれん代」1兆円超(7月21日 現代ビジネス) | 開示の杜_dpro2015

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膨らんだ「のれん代」1兆円超

東芝がひた隠す「原発事業の不都合な真実」


封印される「2つの問題」

 発覚からすでに半年近くが経過した東芝の粉飾決算疑惑が今週、節目を迎えそうだ。報道によると、東芝が事態の究明のために設置した「第三者委員会」が本稿掲載の前日(7月20日)夜、調査報告の概要を公表。本稿掲載日(21日)の夕方、田中久雄社長が記者会見して、佐々木則夫副会長と共に引責辞任を表明するという。

 注目の決算の修正額は、過去5年間のコストの先送り(約1600億円)と事業そのものの収益力低下を反映した工場の減損処理(約700億円)の合計額、つまり2300億円前後の巨額に達する模様だ。だが、これまでの報道をみている限り、より本質的で構造的な2つの問題の解明は進まず、封印される懸念がありそうだ。

 事件の発端は今年2月。関係者が証券取引等監視委員会に行ったとされる内部通報がきっかけだ。不可解な発端だけに、東芝内部でなんらかの内紛があった証拠だとささやかれている。事態を受けて、東芝は当初、4月3日付で室町正志会長を委員長とする「特別調査委員会」を設置。2013年度のインフラ関連の工事の会計処理について「自ら事実関係の調査を行う」と発表した。

さらに、5月8日には、「更なる調査が必要」で「ステークホルダーの皆様からの信頼性を更に高めるため」、第三者委員会を設置するとした。

 その後は泥沼の展開だ。決算発表もできないまま、6月25日に定時株主総会を開く事態になり、田中社長は「創業以来最大の危機」と繰り返した。当初「500億円程度の下方修正」と報じられていた修正額も、膨らむ一方。修正額の膨張を第三者委員会の調査が徹底している表れと見ているのだろうか、リークらしき情報をマスメディアは競うように大きく扱っている。


(中略)


荒療治が必要

 もうひとつの大きな問題は、監査法人である。新聞は「(日本公認会計士協会が)東芝の決算を監査した新日本監査法人について、手続きが適正だったかを調査する」(7月15日付日本経済新聞朝刊)と報じているが、同じ記事の中で「(東芝が)会計処理を巡って監査法人に実態と異なる説明をしていた」として「第三者委員会は監査法人に大きな問題があったとは考えていないもようだ」と疑惑を否定するスタンスを採っている。騙されたのだから仕方ないといわんばかりなのだ。

 しかし、会計士は、会計監査のプロである。原子力事業に加えて、もう一つの大黒柱の半導体事業が死に体になっていた東芝の経営を監査して、疑わしい会計処理がいくつも存在したことを見抜けないようではプロの資格がない。

 問題は、世界的な粉飾事件として注目された2001年の米エンロン事件以降、グローバル監査法人の間で「マニュアル監査」と呼ばれる安易な監査がすっかり定着してしまった点である。

 マニュアル監査というのは、それまでの監査法人の会計士たちが経営の深淵にまで踏み込み、経営コンサルティングを兼業することによって、粉飾に手を貸す結果になった反省から生まれた。

 監査項目を記したマニュアルに従って会社をヒアリングし、表面的な回答を得ただけであってもマニュアルの要件を満たせば善しとするものだ。「実態を追及しない監査になってしまった」とベテラン会計士たちの間では批判が絶えない。

 こうした状況を打開するには、詐欺罪の刑事罰(10年以下の懲役)と同程度に過ぎない、金融商品取引法の有価証券報告書の虚偽記載を厳罰化し、経営者たちが真摯に粉飾決算の看破を会計士に懇請する環境に変えるぐらいの荒療治が必要かもしれない。

 金融当局は水面下で、取材記者たちに、「財界団体のトップを輩出した大企業がこの程度の粉飾決算で経営危機に陥るわけがないでしょう」と吹き込み、問題の矮小化を図っていると聞く。こんなことでは、傷付いた証券市場や企業のガバナンスに対する信頼回復は容易に実現しないだろう。


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44271


(出処 : 現代ビジネス 7月21日)