ピッコマ連載『悪女は2度生きる』第92話のネタバレ&感想です。
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【もくじ】
・アルティゼアの狙い
・ロイガール大公の不平
・ロイガール大公の強欲さ
・教会への寄り道
アルティゼアの狙い
アルティゼアの心外な発言に、へイリーは申し開きをした。
するとアルティゼアはこう返した。
「私はあなたをよく知らない」
へイリーの動きが止まる。
「今は…?」
ソファーに座しているアルティゼアがへイリーを見上げて語りかけた。
“あなたは賢いけど私からすればまだ世の中を何も知らないのと同じよ。
エブロン大公領と首都は全く違う場所なの。家族よりも価値を見出だせるものがあるかもしれないわ。
カメリア侯爵夫人は自分の身分にコンプレックスを持ってる。下女の子として幼少期を過ごしてきたから。
皆に尊敬されたいと願うほどの非現実的な理想主義者ではないけど、自分の手下に対しては完璧な上の者でありたいという思いが強い人よ。
下についた者の責任は最後まで負ってくれるはず。
だから裏切るならカメリア夫人につくといいわ。”
複雑な思いで黙聴していたへイリーだが、話の矛盾点を冷静に指摘した。
「私が裏切ると思ってたとしてもこのような忠告をするなんておかしいです。何が目的ですか?」
アルティゼアはすぐに答えをくれた。
「あなたを惑わすため。裏切りの心が芽生える日に備えてね」
依然として仕える主人におぼめかれていることに、へイリーは心臓が冷たい汗をかいたように表情を強張らせた。
だがようやくアルティゼアの趣意をとらえた。
アルティゼアはニコリとした。
「そうよ。考え続けなさい、へイリー。そうしないと私達のような人間はこの伏魔殿で生き残れないから」
回顧から戻ってきたへイリーは、差し向かいのロイガール大公を観察しながらそう思った。
ロイガール大公の不平
ロイガール大公がへイリーに話題を振ってきた。
へイリーはひとまず無難に答えた。
「一介の侍女である私の口からそのような重要な話は申し上げられません」
《気をつけないと…笑みとは裏腹に隙を狙ってるだろうから。
少しでも隙を与えたらすぐに弱みを握られるわ。
妃殿下の邪魔をしないためにはどうするべき?
戦争の深刻さを伝えるにしても敗戦を匂わせてはいけない。
だからと言って軽々しく言ったら一足早く首都に戻ってきた理由がなくなる…》
へイリーはプレッシャーから唾を呑みつつも、続けて自分なりのベストアンサーへ着地させた。
「しかしエブロン大公殿下は妃殿下を首都に戻らせました。それが答えの一部になるかと存じます」
ロイガール大公は納得したように頷いた。
そこに、ロイガール大公妃が間延びした声を上げた。
「セドリックの性格じゃこんな大事を後回しにしてまったり楽しんだりできないだろう」
ロイガール大公は隣の妻にハハッと笑いかける。
「でも~旦那がいなくても南海の別荘に1人でいるほうがマシじゃない」
《え…今って戦争について話してるのよね?》
大公妃の能天気な調子にへイリーは呆気にとられた。
と、使用人が大公の元にワインとグラスを奉じた。
そう言って大公が手ずから注ぐ赤ワインのグラスを、へイリーは物珍しげに見つめた。
「へえ…」
そしてほとんど口にしたことのないワインを口に含んだ。
「美味いだろう?去年のワインはきっと高値になる」
「そうですか」
《そんなに味はわからないけど》
妥当な相づちを打ちながらも、味に疎いへイリーの本音は別にあった。
大公妃が夫に尋ねた。
「去年は人件費が跳ね上がったから生産量が少ないんだ。セドリックのおかげでな」
「どうして?」
夫妻の会話を聞いていたへイリーが、エブロン大公家の者としてコメントした。
エブロン大公殿下は責任感が強いお方です。
西部を救ったのも当然のことで、名誉だとは考えておられません。
3年の月日を過ごした場所ですから愛着もお持ちです。
ロイガール大公殿下がそのように嘆いておられるとは思いもしませんでした。
《東部の生産力は他の地域とは雲泥の差がある。なのにこんな話をするってことは…》
ロイガール大公の強欲さ
西部は周期的にモンスターウェーブが起こる場所だ
基盤の施設への投資はおろか果実園の設立すら難しい
モンスターウェーブで発生した流民は、首都圏と東部に流れ込み安い労働力となる
周期的に人口が増加した影響で労働力が溢れ返ると
農民達は労働力の搾取を避けては通れなかった
しかしセドリック様がモンスターウェーブを食い止めてから状況が変わり始めた
彼は北部の盾であり西部の英雄だった
栄転や左遷で消えたりしない「皇室」の一員
そういう信頼にセドリック様が皇帝から圧迫を受けているという現実は含まれていなかったが…
セドリック様は彼らに帰郷の希望を与えたのだ
「モンスターウェーブがまた起こってもエブロン大公が防いでくれる」
そうして流民達は荒廃した故郷に戻り
助け合いながら生活を立て直した
《ロイガール大公からすれば面白くない話よね。
なぜ妃殿下がロイガール大公を強欲っていう単語で言い表したのか分かった。
いくら育った環境が違うと言ってもこの人はモンスターウェーブをお金としてしか見ていない。
それにこの話を出したのも大きな意味はないはずよ。
侍女になりたての私なんか話相手にもならないだろうから。》
へイリーの言葉に、ロイガール大公は手のひらを返すように笑みを浮かべた。
「私が嘆いていると誰が言ったんだ?」
《え…》
大公はワインを自分のグラスに継ぎ足しながら話す。
「西部を救ったのはセドリックなのにそれに見合った褒賞がなかったのは可哀想だと思うさ。
西部の穀倉地帯…肥沃でいい所だけどな」
へイリーはビクリとした。
《穀倉のことは何も言ってないのに!…》
大公は立ち上がって大公妃に顔を向けた。
次にへイリーに目をやり、にこやかに告げた。
「私はサロンの主人ではないがゆっくりしていってくれ」
「恐れ入ります。よろしければこちらのワインを1本頂戴しても構いませんか?」
へイリーは深々と頭を下げて頼んだ。
大公は機嫌をよくした。
「気に入ってくれたようで嬉しいよ」
大公はクイッと人差し指を曲げて使用人を呼びつけ、彼に下命した。
「飲む楽しさを味わえるようにたんと用意してくれ」
へイリーは低頭したまま重ねて礼を述べた。
「ありがとうございます」
教会への寄り道
その頃
教会
皇后宮からの帰路、アルティゼアは首都にある小さな教会に立ち寄った。
馬車を降りて先を歩く彼女にリシアが問いかけた。
「別に…今日は時間があったから」
「そうですか」
それ以上の質問はしないリシアに、アルティゼアは教会に来た目的を自分から明かした。
ご年配の司教様がいらっしゃるんだけど、今は修道士として静かに暮らしてるわ。
今からその方に会いに行くの。
珍しく俗世に染まってないお方で平民の気持ちをよく分かってる。
慈善事業について助言を頂こうかと思ってね。
「はい…」
《リシアに任せようと思ってた事業だ。早く始めて遠くに行かせよう。》
そうすれば自然にローレンスから引き離せる。
アルティゼアは西部の穀物事業と並行して慈善事業を始めるつもりだった。
教会の入口に着くと、意外な人物が待ち伏せていた。
「カメリア侯爵夫人」
カメリア侯爵夫人はベール越しに嬉しそうに微笑んだ。
アルティゼアは表情を固くした。
《どうしてここに?》
つづく
感想
正しいことをする善人より憎まれっ子が世にはばかるのは、ロイガール大公や皇帝のように利己的な権力者がいるせいなのですよね。
モンスターウェーブを人件費と絡めて考えるのは確かに強欲。戦争すれば武器輸出で経済が活性化するとのたまう輩と同類です。
ロイガール大公妃ちゃん…可愛いけど、可愛いけど、オツムが…w でも可愛いw
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