前回の続き


創作小説なので、苦手な方は

ブラウザバックでスルーしてください


実は、以前書いていた宝石小説の続き物なのですけど

それについては、また最後に記事にします










☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆




取り敢えず、仕事を終わらせることを目標に

集中して作業した


時刻は、只今16時


このまま何事もなければ、私はキッチリ後片付け迄して

定時上がり


不意に、背後から声をかけられた

嫌な予感


係長だ


「集中してる所、悪いんだけど。

椿さん今日進んでそうだからさ

会議用の文書を送るから、日付と頁数入れて30部出しといてくれない?」


うわ、これ出来上がりまで帰れないじゃん

ホチキスで留めてクリアファイルに入れるんでしょ、30部


「あ…、出した後は、何処に提出しておけば良いですか?」

前に、出来上がりをそのまま係長の机に置いて帰って、翌日キレ散らかされた記憶が蘇る


「あ〜、オレの引き出しの下段に入れといて」

白けたような顔で係長は答える


何か言うつもりだったんだろうな、この人


取り敢えず、自分の仕事を先にやってからとりかかった

ケド…

もう16:40やないかーい!

小走りで、コピー機に向かう


『待機5件』


うげ、順番待ち!?帰る間際だからか〜?


イライラしないように、先にデスク周りの片付け等をしておく


「出来た?」

呑気な顔で係長が覗いてくる


うっ!となりながら「今待機中です…」と元気なく答えた


途端に嬉しそうな顔になる係長

ナンジャコイツ💢


そう思ってる間に、スタスタとある人の元へ向かっていく


それは、この春部署異動してきた女性で

花山さん

結構年上だけど、私と同じ地味属性

私と同じくらい、雑用押し付けられてる


ただ、大人だから

私と違って、しっとりとした落ち着きがある人

すごく美人って訳じゃないけど

柔らかい笑顔が「The女」て、感じ


ひゃ~、なんだよデレデレしちゃって

妻帯者のくせして、やだね〜


クリアファイルを備品棚から取り出しつつ

呆れて横目で見ていた


花山さんは、係長と話した後

コピー機へ向かい、私の所へやってきた

何だろう?


「椿さん、コピー終わったら手伝うわね」

え?

私は驚いて、花山さんを見る

相手を警戒させない、優しい笑顔


「いえ、花山さんを手伝わせるなんて…。帰り遅くなってしまうので、大丈夫です」


確か、この人シンママだったはず

自宅通いの私はともかく、帰っても忙しいだろうに


だけども、彼女は「気にしないで、二人でした方が早く終る」と

笑って自分の机を片付け始めた


大体、係長が一人でやれば良いことなのに

話したいがために、残業させるー?信じらんない


その後も断ったけど、「気にしないで」で、押し切られてしまった


そのうち、だんだんと周りに人が居なくなる


作業しながら、なんやかんや

お互いの話をした

花山さんは、もう子供が大きいし、家事も仕込んでるから、夕飯の心配はしてない、とか

名前が「かおる」だとか(ワォ)


不意に、彼氏がいるのでないかと聞かれ

反射的に

「居ない居ない!こんな私に居ないですよ〜!私暗いし、地味だし、女子力無いし、顔も良くないし!」

自分下げオンパレード


「え?今までお付き合いした人はいないの?」

目を見開いて聞いてくる


「え、いや、大学の時に、二人くらいは付き合いましたけど…、二人目と別れてからは、音沙汰なし、ていうか、就活もあって、今に至ります…」


モゴモゴと歯切れ悪く

腐女子に戻ってからは

自分でもそんなの忘れてた


「椿さん、お人形さんみたいで可愛いのに。それに、よく動いてるわ。周りの見る目が悪いのね」


え!そんな事、初めて言われた!

ドギマギして、口がアワアワと動く

花山さんがウフフと笑いながら、少し真面目な顔で見つめてくる


「ね、椿さんて、名付け親は親族の方?」


不意に花山さんが聞いてきた


名前…。そう言えば、おばあちゃんが何か言ってたなぁ


「おばあちゃんと、おじいちゃんだったと聞きました

それが何か?」


よくシワシワネームとかからかわれたりもしたから、それかと言おうとしたら


「目鼻立ちのハッキリした、痩せ気味の若い女の人。の、イメージがする

あなたよりも、その人のイメージ。何かあやかってつけたのかしらね?」


え???突然の、オカルト発言?


「は、花山さんて、霊感あるんですか?」

彼女を見るも、腕を組んでどこかをみつめている


「アメジスト…、でも無いような?うう~ん

あ、私霊感あるわけじゃないよ。

時々、その人の雰囲気と違うものがあると、違和感感じるだけ」


それを世間では、霊感と呼ぶのでは?


「スミレ…、菫、何だろう?

とにかく、

椿さんはたくさんの人に守られていそうね」


そう言うと、花山さんはニッコリと微笑み

ホチキスで書類を留め終わり

クリアファイルをお札みたいに上下に振って広げる


確かに

お寺とか行くと、私だけお坊さんが話してきて、ご本尊に挨拶するように言われたりとか

そういうのは、よくあった


まあ、花山さんも「自称、霊感無し」と言ってるし

気にしないでおこう


書類が、全部出来上がった

それを係長の机の引き出しに容れようと、手をかけた


ガチっ!バコッ!

「痛っ!!」

引き出しは開かず、引っ張った反動で指先に力がかかった

爪に白い横筋が入ってる


「大丈夫?」

花山さんが駆け寄ってきた


係長、鍵かけたまんま!ンモー!!

花山さんには、大丈夫ですと言い

書類を花山さんは、使用済みの大判封筒に入れ

張り紙して机の上に置いてくれた


そこに、真壁さんが入ってきた


てっきり帰ったものと思ってたから、ポカンと見つめる


「…まだ居たの?花山さん、残業ですか?

残業あるなら、手伝いますよ」


私のことは一瞥しただけで、花山さんに歩み寄る


私に対する世間の男の目なんて、こんなもんですよ

爪がグニッとなったショックで、いつになく卑屈な考えが浮かぶ


花山さんは、今帰る所だと伝え

いそいそと帰り支度を始める


そこに、また係長が入ってきた


私達を繰り返し見つめて

「どしたの?帰らないの?カベ君、何してんの?」

何だろう、変な空気

だけど


私は言いたいことがある

「…係長、机の引き出し、鍵かかってますよ」


できるだけ表情は気をつけたつもりで、書類の話をしたつもりだったけど


「は?引き出しの鍵?何?」


ああ、忘れてるな、コレ


私が言うよりも先に、花山さんが、会議用の書類が出来上がった旨を伝える 

そこで、やっと意味を理解した係長

パッと明るく何か言おうとした瞬間


「お先に失礼します。椿さん、ありがとうね」


と、何故かお礼を言われ

そそくさと立ち去ってしまった


私も「では、終わったので私も帰りまーす」と

バッグを持ち上げた

ペンダントがはねて、顎に当たる

なんだかなぁ


真壁さんと係長は「おう」と、一言発し

扉を閉める時に、チラッと

動こうとする真壁さんの袖を

係長が引っ張るのが見えた


『ナニィ!?』

展開が気になったものの、じっと見つめる理由にも行かず

そのまま退社した

立ち聞きすれば良かったか!?

イヤイヤ、怪しすぎる


ていうか、真壁さん

モテるんだなぁ…



(続く)