ドーザン受難記 in サンフランシスコ第7話

続き。

その内容を読むドーザンの顔から血の気が引き、FAX を持つ手の感覚はなくなり、宙に浮いた様な感覚になった。

飛び込んできた知らせは、

『ショックやと思うから落ち着いて読んで欲しいけど….

クリスチャンが年末、自殺してもうた….。』

『……え!!!!!....................!!!!!............ 』

才能ある一人の友人が………….、自ら命を…….断ったという….!。

それも1,2ヶ月前の年末の日本で……………………….!。

それは、ちょうどドーザンがロサンゼルスからラスベガスへの道、国道15号線を走行中に交通事故に遭った夜からほんの数日前のことである。

『……….!!!!!!...........なんで…….!!!!??? ?』

この問いには二つ意味があった。

『なんで………!!!!!.............自殺なんかした!!!!???!』
と、
『なんで………!!!!!.............今まで俺に知らせなかった!!!!?!??』

である。

その男の名は『MC Christian』。

父親が牧師で、本人は『俺はキリスト教は好きじゃないけど、キリストは好きやねん。』とドーザンに語っていた。
歌が上手く、歌詞も良くて、ヒップホップ風にラップが出来て、レゲエスタイルでディージェイが出来る….

………..天才だった…….。

簡単に言うと和製Shine Head。
（書き終えてから思い出したが、今ならApolloがそういう風に色々出来るね！Big up Apollo!! ）
彼が、その後もこの世にいたらどんな素晴らしい音楽、どんな楽しいステージを我々に見せてくれていただろう…。T_T

（彼の家に泊まりに行った夜、フリースタイルでちゃんと韻を踏み、ヘンゼルとグレーテルの物語をラップで最初から最後まで語られた時にはコタツの中で腰抜かしたよ。まだ日本語ラップで韻を踏む、ということ自体、当たり前になってなかったんちゃうかなその頃…）

悲しすぎる訃報の衝撃で、その後の数時間がブラックホールに飲み込まれたかの様に、重くて暗い“無”になってしまった….。

時差も有り、料金も高額なので、すぐに電話で事情を聞くということが出来ない。
後で聞いた話では、

『お前も事故でメチャクチャになってて精神状態がどんなんか分からんから、ちょっとすぐに言えなかった….。』

らしいのだが、“友人が死んだのを知らずに数週間過ごしていた…..”という衝撃は説明しがたい自律神経の不具合を胸に患わし、一人で自分の動悸と息切れを感じてただ寝そべる数時間であった。旅のプランなど考える気にもなれない…。
数ヶ月前にボブ・マーレーの再来と言われたジャマイカの天才シンガー、ガーネット・シルクが殺されたと聞いた時も半日、何も、する気が起こらなかったが、もちろんそれに勝るとも劣らないショックだった…。

しかし、そうこうしてるうちに腹が減り出し、飯屋に向けて歩いていたら、込み上げてきて、無言で号泣しながら松葉杖をついていた、という次第である。

そして、この時の感情の混乱は、もう一つの大きな理由があった。

ここで更に時計を事故の数日後へと、巻き戻してみよう。

ドーザンは、事故後ラスベガスの病院を退院した後、ロスの高級コンドミニアムにある平屋の白い一軒家にステイしていた。
事故った車に乗っていた3人のウチの一人であるジェシーのおバアちゃんの家である。
ドーザンがふかふかのベッドとじゅうたんのゲストルームで片付けをしていたら、大きなテレビと、これまたふかふかのソファーが並ぶ広いリヴィングから、ジェシーがなにやら焦った様子でドーザンを呼んできた。

ジェシー『へい！こっち来てテレビ見てみろ！日本が燃えてるぞ！！！』

ドーザンは、

（はぁ？ナニを言うとんねん、ゴジラの映画かなんかか？？）

と思いつつ、ジェシーのジョークのオチを確認しに松葉杖でリヴィングに行ってテレビを見てみた。

すると…..

『ん？？………え！？？……!!!!!!!……おおお!!!!!????….ええええええ!!!!!!??????』

テレビ画面には、…….信じられない光景が映っていた………。

続く。

続きをお望みの方で、早逝した若き才能クリスチャンの冥福を祈ってくれる人は、ツイッターでリツイートして、ブログのコメント欄に『 God bless MC Christian!!! 』と書いて下さいね...。

MCクリスチャン・・・・
俺がまだ関西のクラブで歌い出して間もない頃、既にコンピレーションアルバムに参加したり、大きなクラブで歌うなど先にキャリアの駒を進めていたこの同い年で尊敬に値する沖縄出身のアーチストは、今にも通じるアドバイスをくれて、更に『お前は天才』と俺に言ってくれた……、
それが、俺の生涯の宝物の一つです。
書いてて泣けてくるよ…。
クリスチャンよ、安らかに…
また向こうで一緒に歌おう…T_T

B04 地球の歩き方サンフランシスコとシリコンバレー 2015~2016/ダイヤモンド・ビッグ社