昨日に続いて、日中書教育交流展の話です。

 

およそ100ページほどの作品集をいただきました。これがなかなか良いものでした。

カラー編集してありますので、出展者が選んだ紙の質までがよく分かります。

実物でも、分かるものは分かりますが、光の当たり方や、作品との距離で分かりづらいものもあるのです。

 

紙の使い方、選び方を見ていて、これなんか面白いです。

永田先生に紹介していただいた上野清美先生という方の「万緑の中」という作品です。

展示では、更に、木の枠の額装を使っておられました。

江戸唐紙(えどからかみ)という版画の一種です。漉き上げただけの素紙に対して、

色などをつけて加工した書道用紙のことを料紙(りょうし)と言います。唐紙(からかみ)も料紙の一種です。
唐紙は普通、着色した用紙に版木で模様を刷り出した料紙のことですが、

今回のものは着色した紙ではなく、潜金紙を使用しているので、かなり特殊なものとのことでした。
潜金紙は、金箔を貼った紙の上から典具帖紙などを貼ったものです。

普通の金箔紙と違って、金が強く出ないので柔らかい印象となり、

また、表面を紙の繊維が覆っているので金箔紙よりも墨が載って書きやすいです。

 

 

 

下の画像は、切り絵を使った作品ですが、これは、「躬恒の歌四首(四季)」という作品。

斎木久美(華渓)という茨城大学の教授が書かれたものです。

書かれている和歌は、凡河内 躬恒という平安時代の歌人の歌だそうです。

おうしこうち の みつねと読むのだそうです。

この人は三十六歌仙の一人で、古今和歌集の選者の一人とのこと。

恥ずかしながら、初めて、名前に接する経験です。

みつねさんも、自分の死後、1100年も経ってから、作品がこういう形で世に出され、

尚且つ、紹介されるとは、想像もしていなかったでしょう。

永田先生のみたてでは、この切り絵は、相当な時間と良いものを使って丁寧に作られているとのこと。

永田先生の紙の選び方も面白いです。

先生の今回の作品は、【悲嘆述懐】

浄土真宗の親鸞聖人の和讃からの経文です。

 

全部で13枚の紙に書いてあり、全ての紙の色合いと、模様が違っているのです。

紙には、雲母が入っていたり、模様も、鶴や亀がデザインされています。

例えば、この経文が書かれている紙を見ると、

亀甲模様の中に、更に、亀がいるのです。

 

末法悪世のかなしみは 南都北嶺の仏法者の
     輿かく僧達力者法師  高位をもてなす名としたり

 

 

又、この右側のページの3行目と4行目の間では、鶴が見えます。

このように、皆さん、紙には相当工夫を凝らして、選んでおられるようです。

元々、書道展を見に行くことも殆どなく、作品の前をさっさと通り過ぎていたので、気づくわけもなかったのです。

知らない世界の探訪も、なかなか面白いです。