8月26日の記事「和紙って何?」で、手漉き和紙の現状について触れた時に、次回は、機械漉き和紙について取り上げると約束してから、はや、2カ月を超してしまった。

 

機械漉きの和紙は、手漉き和紙と比べてコストが圧倒的に安い。「デザインのひきだし29」という情報誌によると、値段は、高級印刷用紙(艶のある紙)とそんなに変わらないものという。ただ、上質紙などと比べると、3-5倍はするらしい。また、素材の点では、針葉樹のパルプを使うことが多く、楮、三椏、雁皮などの素材を使っているケースは少ないようだ。このために、和紙という範疇に入らないという人も多いようだ。手漉きでないことと、素材の違いから、和紙風の洋紙という見方をしている人がいるのだ。

 

機械漉き和紙のコスト面での有利性によって、需要は拡がっている。新鳥の子紙、里紙などを使ったラッピングペーパーは、和菓子だけではなく、高級感のある洋菓子、日本酒などを包むのに多く使われている。又、もっと高級な機械漉きの和紙では、重要文化財などの修復に使われているものもある。前述の「デザインのひきだし29」には、そういった機械漉き和紙のサンプルなども、綴じ込みに使っており、非常に参考になる本である。株式会社グラフィックが発行している情報誌である。

 

その本の中で紹介されている、土佐典具帖紙のひだか和紙が機械漉きで作っている最薄和紙の厚さ0.02ミリの紙のインタビュー記事は面白い。海外30か国以上に輸出されているという。まさに、後ろがくっきりと透けて見える紙である。

 

こういう風に優れた技術が世界で新しい需要を創り出すというのは、半導体などの電子部品で見たことのある景色である。日本各地で消えていく手漉き和紙の名残りを惜しむのも良いが、世界市場や、今まで、需要が発生していなかった市場を作っていくのも必要なのではないだろうかと思う。

 

今後、当ブログでは、日本各地の和紙の生産地を、そういった視点でも目を配って訪れてみたい。