前回の続きです。

 

 まりなちゃんの死体が発見されて、学校中が大騒ぎになります。それとともに、東くんはどんどん追い詰められていきます。もともとは東くんも優等生の兄がいて、母親に比較されていくという毒親問題。東くんはどんどん成績が落ちていき、母親から完全に見放されてしまいます。真面目だけど、成績が落ちる東くんに対して、兄は不真面目になるけど、成績は常に優秀。どんどん差が開く一方だという展開で、兄は東くんに『悩みを話せ!』と近づいてきますが、一方的に劣等感を抱く東くんはますます追い込まれていきます。そういうなかで、しずかちゃんは東くんを追い込みます。まりなちゃん殺害を身代わりで自首するように勧めてくるのです。この辺のくだりは秀逸ですね。そうくるか!と思いました。当然、東くんの母親の病院は悲惨なことになります。

 

 一方で、しずかちゃんはチャッピーを探しに父親に会いに東京に行きます。しかし、東京であった父親には2人の娘がおり、別の犬を飼っているという現場に直面します。これはしずかちゃんにとって残酷です。現実とはいえ、一番見たくない光景でしょう。ここから壊れたようにしずかちゃんは暴走します。まずは、タコピーをぶん殴ります。その後、この2人の娘を拉致し殺害。怒りの方向はどんどん悪い方向に進みます。とてもドラえもんにでてくるしずかちゃんとは別人で、逆にこういう環境ならば、こうなるよね。というリアルさがエグイです。この辺から、正直読んでいるのが辛くなっていきました。この不幸の悪循環。しかも、当人たちが悪いわけではありません。この問題は毒親問題の究極を言っている気がしました。

 

 しずかちゃんに殴られたタコピーは本来の目的を思い出します。なんと、実はしずかちゃんを殺すために来たというのです。それも、2022年に、まりなちゃんにタコピーは助けてもらうという展開でした。タコピーはまりなちゃんの笑顔を見たいがために、いろいろやりますが、まあ、いつもの調子で的外れなのです。まりなちゃんは東くんと付き合いを始め、まあ、タコピーとうまくやっていました。けれども、そんなまりなちゃんは転校してきた、しずかちゃんに東くんを盗られることで、しずかちゃんが邪魔してくるという展開になっていきます。しずかちゃんに殺意を抱くまりなちゃん。しかも勢い余って、まりなちゃんは母親を殺害し、自分も・・・そういう状況の中、、タコピーはまりなちゃんの笑顔を見たいがために、6年前に戻って、しずかちゃんを代わりに殺す決意をします。しずかちゃんがいなければ、まりなちゃんは笑顔になると思っていました。当然、タコピーの故郷、ハッピー星に戻ったタコピーはルールを破っているので、記憶を消されることと、永久追放されてしまいます。しかし、タコピーは6年前の地球に戻ってくるのです。戻ってきたタコピーはしずかちゃんにパンをもらうという最初の展開に戻ってしまうのです。タコピーは全てを思い出し、そして、まりなちゃんもしずかちゃんも悪くないということを悟ります。でもどうしようもできない状況になります。

 

 暴走した、しずかちゃんとタコピーは会います。そして、保健所を襲撃しようと考えるしずかちゃんを懸命に止めます。しずかちゃんの孤独を癒すために、一日中、一緒に遊ぶのです。そして、最後にタコピーは自分の命を懸けて、しずかちゃんやまりなちゃんを笑顔にする手段を取ります。この辺のお話はうるうるな感じになってしまいます。やはりお別れのシーンは切ないものですが、どうしようもない状況と環境の中、どう打開していくのか、僕には想像できませんでした。タコピーの選択が正しかったのかどうかもわかりませんでした。これは、ちょっとドスンときましたね。

 

 どこまでも暴走するしずかちゃん、一方で、6年後には暴走してしまう、まりなちゃん。誰かが悪いという単純な話ではないのですが、こういう状況に追い込まれていくという小学生の痛みが凄くするマンガでした。誰も救うことなんてできない、できるとするなら、自分で自分は救わなければならないということですが、それには小学生では重すぎる内容だと思います。だから、タコピーが必要だったのでしょうが、それほどまでに酷い状況がリアルならば、酷いことになっていると僕は思いました。最終話を読んだときはちょっと涙が出てしまいました。56歳のおっさんを泣かすマンガがあるのかと思いましたが、凄いマンガだなと思います。

 

 『おはなしが、ハッピーをうむんだっぴ!』

 

 この言葉は刺さりましたね。そうだよね。それしかないんだよね。と思いました。このマンガは全然レベルの違う凄いマンガだと思いました。こういう名作が最近、ちょこちょこ出てくるのは凄いなぁ~と思いましたね。このマンガは是非、大人に読んで欲しいと思いましたね。