この項続き。
前の記事に書いた、父の介護で婚期を遅らし、父の死ぬ間際に結婚し妊娠したK子は、「自分が結婚して父親を安心させることが出来た」ことに満足感を覚えているらしく、
「DoXもはやく結婚して親を安心させなよー。いつまでもうちにいたんじゃ、お兄さん夫婦だってうっとうしいと思ってるよー」ととばっちりを受けた。しどい。
しかし、誰しもK子の彼氏のように待っていてくれる人ばかりでもなく、親の経済状態や病気などの理由で交際をやめる場合のほうが多いだろう。K子もずっと結婚相手と一対一の真摯な付き合いをしてきたわけでもなく、高校の時にはバイト先の店長と不倫だの、社会人になってからも友達の彼氏にちょっかいだしたのとさまざまな遍歴を重ねてきた。友人Aの奥さんがK子が「遊びたいから結婚しなかったんだろう」と推測するのは、この時期のことを聞いているからだと思う。恋人がK子を諦めなかったのは、K子が人格者だから、というよりはそういう過去を乗り越えた上の執着のほうが大きそうな気がしている。(「いろいろあったけどやっぱり俺にはK子しかいない」っていうバカップル状態というか)
K子と違って奔放な遊びもせず、誰しもが認める「いい人」で、「この人と結婚したら女性は幸せになれるんじゃないか」と多くの人(主に男もしくは既婚女性)が評価している50代の地方公務員のMさんという人がいる。しかし本人はもうすっかり結婚を諦めているようだ。
ずっと交際する相手がいなかったわけでもなくて、20代の頃に結婚を考えた女性もいたらしいのだが、若い時期から脳卒中で左半身が不自由になり介護が必要なMさんの母親が過剰に偏屈なバアさんで、「あんな女に看てもらうなんてとんでもない」とMさんの結婚を許さなかったんだとか。
それから30年近くMさんが仕事をしながら介護を続けた母親が昨年とうとうボケはじめて、特別養護施設に入所することが決まった直後、今度はMさんが心臓が悪くなって入院した。
見舞いに行ったら、「今までずーっと気が張っていたのが、一気に緩んで安心したらどっときた」と力なく笑っていた。俺はなんだか他人事と思えない。
入院しても身の回りを気遣ってくれる家族がいない、このままずっと独りでいることの不安はMさんにもあると思う。Mさんくらい安定した収入のある性格のいい人でも結婚できずに一生終えそうなのだから、不景気で収入がほとんどなくなった無学歴土方日雇いとか、容姿が特別にブサイクだとか、性格が悪いとか暗いとか、因習深い上に雪深いど田舎に嫁いで来る女性がいないとか、さまざまな理由で「一生結婚できなさそうな50代、60代」っつーのは周りに掃いて捨てるほどいる。30代40代の未婚男性なんかここいらじゃなんかまだ希望があるほうだ。昨年やってたトレンディドラマのセレブ系空気読めないだけの独身男など比ではない。
kuronekoさんやgegengaさんところのやり取りで、「年収300万超の約30%の強者女性と、年収200万以下の約20%の弱者男性のカップリングが達成できれば、二人で年収400~500万になり、うまく弱者を吸収できる」という主張を繰り返している方がいるが、収入面だけで男女を番わせるという理屈が通るような、単純な世界に我々は生きていない。そういう、個人的な人格・相性を否定したところで、上から押し付けられる「婚姻」が成立するような社会を望むなら、統一協会にでも入ればいいのに、とこの方のコメントを見るたび思う。
この人の想定する「強者女性」というのが、「結婚相手に同等の収入を求め、相手に贅沢を言って婚期を遅らせる、高学歴で高収入の独身女性」なのはコメントの端々に見えるのだが、「収入300万以上」という単純なデータは、「給食費未納率1%、損失額22億」というデータに、未納者の生活背景が見えないのと同じように、「年収300程度の女性がどのような環境でどういったやりくりをして生活しているか」などといったことは浮かび上がってこない。
年収300万くらいはいってそうだけど、子供二人を抱え、定職につかない夫と離婚した女性に、「再婚しないのか」と聞いたことがある。収入悪いけど子供の面倒見てくれる人なら、子供を見ながら仕事を続ける今より、少しは楽になるんじゃないかと思って、「稼ぎは少ないけど子供好き」の知り合いを紹介しようと思ってのことだった。しかし、そっけなく断られた。「今、子供と三人でいれることがホント平穏で幸せ。働いて、子供の世話して、その上ダンナに気を遣う生活が苦痛でしょうがなかった」「再婚しても、今以上に不安が解消されるとは限らない、今の収入でも子供を養うのがやっと。義務教育といってもやはりお金がかかる。将来、高校にいったりしてお金がかかるようになると、この先どうしていいのか落ち込むときもある。子供のことでも頭がいっぱいなのに、また結婚してどうなるかわからないのに今不安材料を抱えるわけにはいかない」みたいな話をされた。収入で見て凹凸をあわせればハッピー、みたいな意見を吐ける人のどこが「現実を見ている」のかわからない。
この女性は子供がいるから将来、子供が大きくなって母を支えてくれるかもしれないという楽しみがあるからまだいいが、頑張って稼ぎを得ても、それを当てにするドキュン親にたかられて、貯金すらおぼつかない女性もいる。仮にUとしておくが、Uと同じ職場の友人によると、しょっちゅう親の名前で借りた借金の督促電話がきているらしい。いっそ自己破産させれば、とか思うが、Uがキッチリ働いているので返さないわけにもいかず、金融会社もUの親のことを「いいカモ」だと貸し付けるらしい。収入はお局だから友人たちより高そうだが、親の借金のために贅沢はできないらしく、飲みに行ったりすると払わないで帰ったりする小ずるいところもあるんだとか。
友人が以前結婚しないのか、と聞いたら、「こんなみっともない親のことで、一緒に悩ませるわけにはいかない」「親のことは私が一生抱えていかなければならない」と言ったんだと。
収入だけで見てこういう「事情」を抱える「強者」女性と、全部了承して境遇を一緒に背負う結婚の「覚悟」のある「弱者男子」はあるやなしや?
ウェブ上の気軽なコメント欄での「説教」もだが、実生活でも自分が一番頑張っていて間違っていないという意識を持った「無邪気」なもの同士が、自分の有利に立てる土俵で好き勝手相手を非難する。
俺のことをカラッポだと思ってるのかAがBを、BがCを、CがDを・・・といった感じで次々にゲロ袋にするごとく非難のゲロはいてくれるので、俺の中で「自分の尻尾を追い回す犬」のごとくクルクル回ってわけがわからなくなってきた。
「子供二人を望むのが健全」だと言ってまたぞろ反感を買った大臣もいるが、この「二人以上産まないのは説教」に乗って、「一人で精一杯」とか、「産むに産めない」人に対して説教を始めるおっちゃんおばさん結婚もしていないくせに子供を産めというバカ若者もいて、「少しは相手の事情を考えろ」「子供を産むのに躊躇する世の中にしたのは大臣アンタらじゃろが、他人事にして白々しい」と言いたくもあるのだが、
「晩婚でせっかく生まれた子供が先天性心臓疾患で3ヶ月で亡くなり、子供を産むのに躊躇している40代の教師夫婦」については長くなったのでまた次の項で。
前の記事に書いた、父の介護で婚期を遅らし、父の死ぬ間際に結婚し妊娠したK子は、「自分が結婚して父親を安心させることが出来た」ことに満足感を覚えているらしく、
「DoXもはやく結婚して親を安心させなよー。いつまでもうちにいたんじゃ、お兄さん夫婦だってうっとうしいと思ってるよー」ととばっちりを受けた。しどい。
しかし、誰しもK子の彼氏のように待っていてくれる人ばかりでもなく、親の経済状態や病気などの理由で交際をやめる場合のほうが多いだろう。K子もずっと結婚相手と一対一の真摯な付き合いをしてきたわけでもなく、高校の時にはバイト先の店長と不倫だの、社会人になってからも友達の彼氏にちょっかいだしたのとさまざまな遍歴を重ねてきた。友人Aの奥さんがK子が「遊びたいから結婚しなかったんだろう」と推測するのは、この時期のことを聞いているからだと思う。恋人がK子を諦めなかったのは、K子が人格者だから、というよりはそういう過去を乗り越えた上の執着のほうが大きそうな気がしている。(「いろいろあったけどやっぱり俺にはK子しかいない」っていうバカップル状態というか)
K子と違って奔放な遊びもせず、誰しもが認める「いい人」で、「この人と結婚したら女性は幸せになれるんじゃないか」と多くの人(主に男もしくは既婚女性)が評価している50代の地方公務員のMさんという人がいる。しかし本人はもうすっかり結婚を諦めているようだ。
ずっと交際する相手がいなかったわけでもなくて、20代の頃に結婚を考えた女性もいたらしいのだが、若い時期から脳卒中で左半身が不自由になり介護が必要なMさんの母親が過剰に偏屈なバアさんで、「あんな女に看てもらうなんてとんでもない」とMさんの結婚を許さなかったんだとか。
それから30年近くMさんが仕事をしながら介護を続けた母親が昨年とうとうボケはじめて、特別養護施設に入所することが決まった直後、今度はMさんが心臓が悪くなって入院した。
見舞いに行ったら、「今までずーっと気が張っていたのが、一気に緩んで安心したらどっときた」と力なく笑っていた。俺はなんだか他人事と思えない。
入院しても身の回りを気遣ってくれる家族がいない、このままずっと独りでいることの不安はMさんにもあると思う。Mさんくらい安定した収入のある性格のいい人でも結婚できずに一生終えそうなのだから、不景気で収入がほとんどなくなった無学歴土方日雇いとか、容姿が特別にブサイクだとか、性格が悪いとか暗いとか、因習深い上に雪深いど田舎に嫁いで来る女性がいないとか、さまざまな理由で「一生結婚できなさそうな50代、60代」っつーのは周りに掃いて捨てるほどいる。30代40代の未婚男性なんかここいらじゃなんかまだ希望があるほうだ。昨年やってたトレンディドラマのセレブ系空気読めないだけの独身男など比ではない。
kuronekoさんやgegengaさんところのやり取りで、「年収300万超の約30%の強者女性と、年収200万以下の約20%の弱者男性のカップリングが達成できれば、二人で年収400~500万になり、うまく弱者を吸収できる」という主張を繰り返している方がいるが、収入面だけで男女を番わせるという理屈が通るような、単純な世界に我々は生きていない。そういう、個人的な人格・相性を否定したところで、上から押し付けられる「婚姻」が成立するような社会を望むなら、統一協会にでも入ればいいのに、とこの方のコメントを見るたび思う。
この人の想定する「強者女性」というのが、「結婚相手に同等の収入を求め、相手に贅沢を言って婚期を遅らせる、高学歴で高収入の独身女性」なのはコメントの端々に見えるのだが、「収入300万以上」という単純なデータは、「給食費未納率1%、損失額22億」というデータに、未納者の生活背景が見えないのと同じように、「年収300程度の女性がどのような環境でどういったやりくりをして生活しているか」などといったことは浮かび上がってこない。
年収300万くらいはいってそうだけど、子供二人を抱え、定職につかない夫と離婚した女性に、「再婚しないのか」と聞いたことがある。収入悪いけど子供の面倒見てくれる人なら、子供を見ながら仕事を続ける今より、少しは楽になるんじゃないかと思って、「稼ぎは少ないけど子供好き」の知り合いを紹介しようと思ってのことだった。しかし、そっけなく断られた。「今、子供と三人でいれることがホント平穏で幸せ。働いて、子供の世話して、その上ダンナに気を遣う生活が苦痛でしょうがなかった」「再婚しても、今以上に不安が解消されるとは限らない、今の収入でも子供を養うのがやっと。義務教育といってもやはりお金がかかる。将来、高校にいったりしてお金がかかるようになると、この先どうしていいのか落ち込むときもある。子供のことでも頭がいっぱいなのに、また結婚してどうなるかわからないのに今不安材料を抱えるわけにはいかない」みたいな話をされた。収入で見て凹凸をあわせればハッピー、みたいな意見を吐ける人のどこが「現実を見ている」のかわからない。
この女性は子供がいるから将来、子供が大きくなって母を支えてくれるかもしれないという楽しみがあるからまだいいが、頑張って稼ぎを得ても、それを当てにするドキュン親にたかられて、貯金すらおぼつかない女性もいる。仮にUとしておくが、Uと同じ職場の友人によると、しょっちゅう親の名前で借りた借金の督促電話がきているらしい。いっそ自己破産させれば、とか思うが、Uがキッチリ働いているので返さないわけにもいかず、金融会社もUの親のことを「いいカモ」だと貸し付けるらしい。収入はお局だから友人たちより高そうだが、親の借金のために贅沢はできないらしく、飲みに行ったりすると払わないで帰ったりする小ずるいところもあるんだとか。
友人が以前結婚しないのか、と聞いたら、「こんなみっともない親のことで、一緒に悩ませるわけにはいかない」「親のことは私が一生抱えていかなければならない」と言ったんだと。
収入だけで見てこういう「事情」を抱える「強者」女性と、全部了承して境遇を一緒に背負う結婚の「覚悟」のある「弱者男子」はあるやなしや?
ウェブ上の気軽なコメント欄での「説教」もだが、実生活でも自分が一番頑張っていて間違っていないという意識を持った「無邪気」なもの同士が、自分の有利に立てる土俵で好き勝手相手を非難する。
俺のことをカラッポだと思ってるのかAがBを、BがCを、CがDを・・・といった感じで次々にゲロ袋にするごとく非難のゲロはいてくれるので、俺の中で「自分の尻尾を追い回す犬」のごとくクルクル回ってわけがわからなくなってきた。
「子供二人を望むのが健全」だと言ってまたぞろ反感を買った大臣もいるが、この「二人以上産まないのは説教」に乗って、「一人で精一杯」とか、「産むに産めない」人に対して説教を始めるおっちゃんおばさん結婚もしていない
「晩婚でせっかく生まれた子供が先天性心臓疾患で3ヶ月で亡くなり、子供を産むのに躊躇している40代の教師夫婦」については長くなったのでまた次の項で。