深い霧の奥から犬の遠吠えが聞えた。


それは野良犬なのか飼い犬なのか解らなかったけど、何となく鳴き声の方へと歩き出した。


霧に混じって細かい雨が降っている事に気づく。


兎に角、気温が低い。


涼しいを通り越して寒い。20℃も行ってないと思う。


何故なのか解んねぇ。


今しないといけない事は・・・・・それも解んねぇ(笑)


一緒に下車した人はこの濃霧の中迷わないのか??


まだ意識がはっきりしない。


半径1m以内しか状況が把握出来ない環境で僕は少し混乱していた。


そうしている間にも犬との距離が近くなり、次第に民家にブチ当たった。


家の塀の中で黒っぽい犬が元気に走り廻っていて、霧の中に消えたかと思うとまたひょっこり姿を現す。


下車した場所はどうやら町のようで安心感が溢れる。


この調子だと人に出会えるな・・・・。


この家をスタートに、塀沿いを歩く事にした。


しばらく歩いていると早速女性を発見。頭にピンク色のスカーフを被っている所をみるとイスラム教徒の人だろうか・・・?


サイフーの暮らすマレーシアが急に懐かしく思えた。元気かな?


そして彼に教えてもらったマレー語が書かれた紙をサブバックから取り出し、道の尋ね方を確認した。


サイフーの話だとインドネシアでもマレー語が通じるようだ。少しニュアンスは変わるが大差ないらしかった。


僕は頭を下げてボンジョルまでの行き先を聞いてみる事にした。


サヤ イニャン ペルギー ボンジョル?(ボンジョルまで行きたいのですが・・・)

※ちなみにインドネシア語では、サヤ マウ ペルギー ケー ボンジョルと言うらしい事が首都メダンで知った。


女性は少し考えたあと、理解してくれたようで、バス停の場所を丁寧に教えてくれた。


トゥリマカシ(ありがとう)と、僕。


女性はサマサマ(どう致しまして)と言ってニコッと笑った。この濃霧と寒さの中でも褐色の肌を見ると南国なんだなという事を再確認出来た。


早速バス停の方向に歩いてみる事にしたがこの視界では通常の倍以上の時間がかかりそうだ。


それに今までこういう小さな町では、まともな「バス停」なんて見た事ねぇし・・・(笑)


それでも手さぐりの状態でゆっくり歩いて行く。


どれくらい時間を費やしたのか、辺りもようやく明るくなってきた。


何処に何があるのかもかなり明確になって来た。


雨は相変わらず、霧雨。


それでも確実に体温を奪っていたし、衣服もかなり湿ってきている。


早くしないと。


僕は再び通行人を見つけてバス停の場所を聞いた。


すぐそこだった。


すぐそこ!?・・・・また適当な事言いやがって。


何にも無ぇじゃねぇか。。


それでも数名の現地人が集まっていた。


皆短パンでサンダルをはいたラフな格好で、チェックのボタンシャツを素肌の上から羽織った人やポロシャツを着た人、子連れの女の人。中には大きなバッグを抱えた人もいた。


てっきり集会してんのかと思った(笑)


ボンジョル??僕がそう尋ねるとここがその「バス停」らしかった。


コイツらすげぇ・・・。


多分コイツラにしか解らない目印みたいなものがあるんだろうけど、果たしてそれが一体何なのかコッチにはさっぱり見当もつかない。


バスは意外とすぐやって来たけど、バスと言うよりも・・・・自走している事が奇跡。。


爆発しねぇか心配になるくらいボロボロのバスに乗り込む。


クチャクチャガムを噛みながらサングラスをかけた運転手が乗客と挨拶を交わしている。


床は板の間で、煙草の吸殻やら泥が散乱している。座席は目の覚めるような赤色でいたる箇所が破けてスポンジが飛び出している。


エアコンはなく扇風機が運転席の後ろに取り付けられている。


ミラーにはカラフルなお守りの様なものがぶら下がっていて心なしかエキゾチックな気分が漂っていた。


車内は寿司詰め状態で一気に賑やかになった。


やっぱ東南アジアはこうでなくっちゃ。


僕は大きなバックパックを膝の上に乗せてしっかりホールドした。


何となくスリに遭いそうな気がしたからだ。


通路を挟んで隣の乗客の女性は公然と赤ん坊に授乳を始め、その横の親父は平然とした顔で喫煙をおっぱじめる。


床に落ちた吸い殻の原因が判明した。


これが今のインドネシアの情勢。


発展途上真っ只中っつう感じだ。


すぐ隣の若い兄ちゃんに所要時間を聞くとどうやらボンジョルまでは2時間くらいで着くらしい。



バスはすぐに山の中に入っていった。


曲がりくねった坂道を上がったり下りたり、とにかく忙しなかったが景色は最高に良かった。


見た事のない植物や花、野鳥などが目の前を通り過ぎていく。


たくさんの木の根が地表から浮き上がり、それが大きなうねりとなって一つの生命体を形成している。


見ていて飽きなかった。



あっという間の2時間だった気がする。


バスが停車し、横の兄ちゃんが肘で突っついてきた。




おーい、着いたよ。





僕はお礼に煙草を一本差し出した。



赤道直下にまたがるってのは一体どんな気分なんだろう。


ワクワクしてきた。


つづく。





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