ヤバそうな雰囲気をかき消す事が出来なかったが、僕はあまりにも空腹過ぎて、外出する事にした。


外は時刻のわりにはまだまだ明るかった。


それだけが救いだった。


サブバックをタスキ掛けし、適当なお金をポケットにねじ込み、部屋を出た。


僕は白熱灯の裸電球がポツンとぶら下がったうす暗い板の間の廊下を歩いてレセプションの前に向かった。


ロビーのソファには様々な国籍の旅人が談話したり地図を広げたりしていた。


その中に一人の日本人っぽい男を見かけたがその時は素通りした。


僕は近くの適当な食堂で、今日初めての食事にありついた。


食欲が満たされれば当然一服だ。


僕はタバコに火をつけてようやくマッタリする事が出来た。


プーケット・タウンから送った母宛の手紙はもう届いただろうか?


つーか、オカン元気かな?


僕はまだ日本に電話出来ていなかった。


国際電話は高すぎる。


そんなしょうもない理由で僕はまだ母の声を聞いていなかった。


僕が店から出ると偶然さっきの日本人が前のメインストリートを横断しているのが見えた。


背は低めで、肌は真っ黒だった。


髪の毛は後ろでくくり、長いあごひげが特徴的だった。


目で追ってみたけど彼は人ごみの中に消えてしまった。


僕はネット・カフェから家族にメールを送りしばらくしてから宿に戻る事にした。


僕が宿の廊下を歩いていると後ろからさっきの日本人に呼び止められた。


こんばんは。


彼はやはり日本人だった。


名前はシンペイ。


僕はシンちゃんと呼ぶ事にした。


シンちゃんは一年間旅をしている石川県出身の大学生だった。


オーストラリアでワーキングホリデーを利用して南米を旅してそこから東南アジアにやってきたらしい。


僕たちは妙にウマが合い、夜の街に繰り出した。


大丈夫、何もヤバい事なんかないハズ・・・・。


僕達は宿の情報ノート(色んな日本人旅行者が書き残してくれた情報)を頼りにレディ・ボーイ(ニューハーフ)の売春婦をからかいに行く事にした。


シンハ・ビールをコンビニで買って出会いに乾杯だ。


プシュっ!!


ゴキュゴキュ、くぷはー。


う・旨い!!



なんだかテンション上がりやがる。


が、まだ奴らが出没するまで時間があったので屋台をぶらついた。


食欲をそそる焼き鳥の匂い、音楽、笑い声、そこには様々な屋台が賑やかな雰囲気を演出していた。


僕らはそこでフルーツの王様、ドリアンを買った。


12B(50円程)とゆう安さには驚いた。


東南アジアは不衛生だから、生水、フルーツといった類は食中毒になるからアカンらしいけどそんなもん知ったことか!!


今の俺達のテンションは半端ねぇ!!(笑)

近くの賑やかな広場に腰をおろしドリアンを口に放り込んだ。


・・・・・・。


なんじゃこれ!?


黄色でねちゃっとした触感。


味は芋?いや、栗か?


とても果物とは思えない。


シンちゃん、俺のんやるわ。


いや、いいっス・・・・・。。


そっか、はっはは・・・・・。。


全然旨くねぇ!!


まったく、期待はずれもいいとこだぜ。


しばらく座りこんで色んな話をしている俺達の前に全身、和彫りだらけのスキンヘッドのおっさんと真っ赤な口紅の女が近づいてきた。


見た感じ、チャイニーズ系の奴らだ。


おい、シンちゃんあいつらヤバそうやなぁ・・?


隣のシンちゃんにチラリと視線を送ると、少し怯えた様子。


明らかに今までの客引き連中とは違う。


クソっ、間に合わねぇ。。


コンバンハ。


そいつらのターゲットはやはり俺達だったみたいだ。


しかも日本語で喋りかけてきやがった。


ココデ、ナニシテル??


ニホンジン?


シンちゃんはかなりビビっていた。


しゃあねぇな・・・・。


何や、お前らは!?何の用や?


僕は奴らを睨みつける。


不気味な笑みを浮かべながら手に持った袋をチラっと見せてきた。


完全にぶっ飛んだツラしてやがる。。


どうやらドラッグの売人と売春婦のようだ。


悪いけど、俺たちゃドラックなんかいらねぇし、女も買わねぇよ。


めんどくせーから消えろよ。


そう言った途端、急に俺達に触れてきやがった。


シンちゃんなんか腕を掴まれている。


こんなに人がいるのにコイツらマジ危ねぇ!!


おいボンクラ、馴れ馴れしくしてんじゃねぇ!!


気が付いたら僕は日本語で叫んでいた。


ざわつきだした群衆にガンを飛ばし僕はそいつらの手を振り払い、シンちゃんを連れて引き上げた。


ひゅ~、危なかった。


なぁ?シンちゃん、この後どうすんの!?


そしたらコイツときたら、オカマ達をからかいに行くんでしょ?だってよ(笑)


あんなにビビってたくせによく言うぜ。


でもシンちゃん最高!!


僕達は腕時計をチラリと見て次の場所を目指した。


つづく