胃や腸に残っているものが死んだ後に出てくるのが嫌なので、極力全て出し切ってから死にたいと思い、何度もトイレへ向かった。


首吊りをしたら、死後の機能しなくなった身体により穴という穴から全て出てきてしまうらしい。賢い人は自ら詰め物をして、自殺するのだという。


オムツは持っていなかったので、生理用のナプキンをつけた。少しは防げるだろうか。


体液が床に浸透して、大家さんや後に住む人のことを考えてビニールシートでも敷きたかったが、もうわざわざ買ってまで敷く気力は残っていなかった。


死んだ後のことまで考える真面目な自分が、

最期まで自分らしいなと笑えた。


自分は腐るかもしれないけど、生ゴミは腐ってほしくない。綺麗な部屋で最期を迎えたい。ゴミは全て処分し、荒れていた部屋も掃除して綺麗にした。


辛い気持ちを記した日記、希望を持ちたくて

書いていた未来日記、全部捨てた。

こんなもの、何の意味も無い。


簡単にだが、遺書を書いた。

あまり長く書く気力もなかった。

家族と恋人への感謝の気持ち。

早く旅立ってしまうことの謝罪。

そして、幸せに暮らしてほしいという心からの願い。

たとえ長文を書いたとしても、伝えたいことはここに収束したと思う。


死への準備を淡々とこなす自分がそこにいた。


本当はお風呂に入って身も綺麗にしたかったが、死んだらどうせ汚くて同じかと諦めた。


静寂が満ち、

ぬるい空気が充満した、

私だけの部屋。


この世界は私しかいないんじゃないかと思えるほど、静かな時間が流れていた。


テレビ台に立ち、延長コードの輪っかに首をかける。喉にあたる、冷たく無機質な感触。


恐怖ではなく、清々しい気持ちになっていた。心の霧がすんと晴れたようで、自然と口角も上がった。やっと解放される悦びからだろうか。


冷静にあたりを見回した。

こだわって揃えたインテリア、

可愛くなりたくて買った洋服、コスメ、

ああ、どれもこれも無意味だったね。


短い人生振り返って

嬉しいこともあったけど

私が何をしたんだと思うくらい

辛いことばかりだったな。


どんな苦境も耐えてこの道を駆け抜けてきたけど、もう疲れた。


死ぬ間際、最後に思うことは周りの人達への感謝だった。

ありがとう。ただただ愛をありがとう。


そして目を閉じ、テレビ台から足を外した。

体がふわっと浮き、首に縄が食い込んだ。

喉を、気管を、ぎゅうと締め上げる痛み。

グエッと何か喉から出そうになる。


本能的なものか、

反射的に私は自ら手をロープに伸ばし

死ぬことを断念した。


締め上げられた喉がじんじんと痛み、この痛みが生きているという残酷な事実を突きつけてくる。


ここまで来ても死ねない自分に嫌気がさすと同時に、相反して本当はまだ生きたいと思っている潜在意識に、嗚咽が止まらなかった。


死にきれなかったが、

私の魂は、この時死んだ。


死んだ私の、死ななかった世界線が始まった。




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