汗だくになりながら、三俣山荘に到着。これは小屋前に広がる景色。
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高天原を出発してから8時間余り。既に正午を過ぎている。

おいしいおいしいカレーを食べて、パワーを充電!!

と思いきや、なんと、疲労困憊の相方はこのままここにテントを張ると言い出した。

絶対に今日中に双六に行くんだってば~~~~~~っ!っと、すっかり根の生えた相方の説得にかかる。


何故こんなに双六にこだわるのか。

それは、出発前にある人物とした「待ち合わせ」のためである。

2人がブログでおつきあいさせていただいているB氏と、この日、双六のテント場で会うことを「約束」していた。

縦走中の約束がどれほどの効力をもつのかは知る由もないが、初対面の者同士が山中で待ち合わせをするという、
一見非現実的なこの約束を、わたしたちはとてもとても心待ちにしていた。

だから、何が何でも遅れを取り戻して、今日中に双六のテント場にたどり着きたい!

ただし、無事にわたしたちが到着したところで、B氏の方だって予定通り双六にたどり着いているという保証は
どこにもない。

この山域は圏外で、携帯電話での連絡も取りようがない。

なんともかんとも、こころもとない待ち合わせである。


それでも会いたいったら会いたい~~~!!!と駄々をこねまくり、やっとのことで、相方に出発を決意させる。


歩き始めて振り返ると、大きく翼を広げた鷲羽岳が後押しをしてくれている。
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地図上で、双六岳までのコースタイムは約3時間。
暗くなる前に余裕で到着できそうだ。

地図にはタイムも書いていないくらいの三俣蓮華への登り。
あっと言う間に着くのだろうとタカをくくっていたら、急斜面で強風というダブルパンチをくらい、なかなか前進できない。

向こうに見える稜線をこれから歩くんだね♪ なんて余裕の発言をしてみるけど、現実は1時間近くのタイムロス。
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それでも、三俣蓮華山頂にはわたしの大好きな県境(しかも三県!!)が待っていて、しばし幸せな気分にひたる。
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ここからはひたすら稜線歩き。
長い道のりに少しでも励みになる標識がほしいわたしたちは、双六の手前にある「丸山」登頂を目指してただただがんばる。

が、ない。
地図を見てもとっくに過ぎているであろう「丸山」の印は、どこにも見当たらなかった。

このあたりから、おもた~い荷物を担いでいる相方が減速。
表情がなくなっている。
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こうなったら、触らぬ神に祟りなし、である。
八つ当たりされないように、さっさと先を行く。


ようやく双六岳に着く頃には、日が傾きかけていた。
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予定を大幅にオーバーしたが、なんとか暗くなる前テント場まで行けそうだ。
ほっとして、力が抜ける。
さて、ここから一気に下ろう。




ところがところが。
このままじゃあ終わらなかった。



道が・・・ない。
いつからか、わたしたちは踏み跡のないハイマツの中を歩いていた。

雪渓を避けるために迂回したルート。

遠くにはたしかに双六小屋へと続く道が白く見えるのに、そこへ行き着くための道がない。

前も後ろも、右も左も、見渡す限りハイマツだらけで、進んだ方がいいのか、戻った方がいいのかすらわからなくなる。

こんな時は、分かる所まで戻る、のが鉄則なのだろうが、日が落ちてきて気持ちばかりが焦り、ついつい前に進む道を探してしまう。

たかが小さな道迷い。
でも、刻々と過ぎていく時間の中で、恐怖感がすっと入ってくるのを確かに感じた。

このまま暗くなったら、下手に動かない方がいいのだろう。
双六岳の大地で緊急ビバークだろうか・・・


テントもシュラフもあるし、食料もある。
どうにかなってしまうことはないだろう。
そう自分に言い聞かせ、気持ちを落ち着ける。



どのくらいハイマツと格闘しただろう。

はじめに曲がった所まで戻ることを決める。
そして、その曲がり角で冷静に標識を確認し直す。

ちゃんと読めば、正しいコースはちゃんと書いてある。
思い込みからくる間違いだった。

ゴールが近づいて、気がゆるんだ結果だろう。


気を取り直し、最後の下りにとりかかる。
時計は既に17時をまわっている。
ここから双六小屋まで1時間。何としてでも、太陽が沈む前にたどり着きたい。


てくてく・・・

黙々・・・


双六小屋が見えた時の安堵感と言ったら・・・
帰ってきてから気が付いたが、双六岳から小屋までの写真が1枚もない。
余裕がなかった何よりの証拠。
この喜びを表現する方法がなくて残念。


下の方に、たくさんの人の姿が見える。

B氏はいるかな。
あの人かな? 
あ、あっちの黒い服の人かな?

いよいよ会える!!!
この瞬間のために、今日1日こんなにこんなにがんばったんだから。
どきどきどきどきしながら、最後の岩場を下る。




さて。
果たしてこの後、「待ち合わせ」は成就するのでしょうか・・・?




裏→表 第20回「油断」