BS・TBSで、「高校教師」が再放送されている。
野島伸司脚本、桜井幸子&真田広之主演の1993年版だ。
第3回放送まで、使われている童子の曲は「ぼくたちの失敗」1曲のみ。
春のこもれ陽の中で
君のやさしさに
うもれていたぼくは
弱虫だったんだヨネ
センセーショナルな内容と展開とは関係なく、透明感のある童子の歌声が随所で流れる。
歌だけでなく、時にはインストでー。
以前も、「高校教師」について書いた。
1993年1月、ドラマの放送が始まったとたん、当時を知る友人から次々と連絡が入った。
十数年ぶりで聞く声、懐かしい友からの手紙。
不思議な感覚だった。
整理券を配り、チラシを貼り、ライブハウスや小劇場、東京カテドラル聖マリア大聖堂、黒テントを埋め尽くしても、すべてのLP数万枚売れたかどうか。
それが、ドラマ化されたとたん、CD化された「ぼくたちの失敗」はオリコン1位、約90万枚の大ヒットを記録。
すでに童子が現役を退いて10年という時が経っていた。
もちろん、マスコミがいくら騒いでも、新たなファンが一目本人を見たいと望んでも、二度と童子が人前で歌うことはなかった。
こんな形で注目される日が来るとは夢にも思わなかったが、嫌な感じはしなかった。
いや、むしろ素直に嬉しかった。
このドラマにより、童子とその作品たちにスポットが当てられたのだから。
前田さんと電話で話した件は、以前の記事に書いた通りである。
なぜ、あの時、前田さんと会わなかったのだろう。
なぜ、あの時、別の名前で作った童子の曲について詳しく聞かなかったのだろう。
絶対に開くことのない透明な箱にしっかりと「森田童子」は納められた。
どんなに解き明かそうと試みても、それは本人から答えを得ることはできず、「試み」でしかない。
しかし、数十年、いや百年経っても、
この世に音楽を聴く手段が残されている限り、
童子の歌は聴き継がれていく。
何度でも言おう。
童子の歌は、時空を超えて「いま、リアルに作用する」ものなのだ。
初めて聴く人にも、久しぶりで聴く人にも。
そう、必要な時、必要な人に、必要な童子の言葉が降りてくる―。