図書館の役割 | 岡直樹の天下泰平 ~図書館から街づくり~

岡直樹の天下泰平 ~図書館から街づくり~

サードプレイス理論に基づく交流空間を内包した街づくりで、新時代のライフスタイルと居場所づくりを!

この所、自分のことを棚に上げ、方々で偉そうに喋っていたら、言葉だけでなく文字に起こせとの指導が何人かから入ったので、記す場もなくとりあえずここへ。

1.なぜNPOにこだわるのか?

 これを読む皆さんはともかく、NPOに対する世間一般のイメージとして多いのは、ボランティア=無償奉仕であったり、役所から補助金をもらっているとか、大抵そんな所です。

 実際はどうかというと、無論無償でのボランティアも結構なことではありますが、法人として事業を行う以上、規模によってはフルタイムの社員が必要となりますし、何よりも事業の継続・発展を願うのであれば、すべてが無償でというのはなかなか難しいのかなぁと思います。
 法的には、設立・登記等での費用は免除されているものの、税金関係は一般企業と全く変わらず納税の義務がありますし、給与や賞与、社会保険等も一切変わりません。
 ただ、設立は都道府県知事の認証が必要で、毎年事業報告と収支報告の提出・公開が義務付けられています。

 余談ですが、一般に中小企業が銀行から借入をする際には県の保証協会を活用されていると思いますが、NPO法人はその対象となっていないため普通に資金を借りることはできません。地元の千葉銀行あたりで1億ぐらい借りるといえば話は聞いてくれるかなという状況です。実はこの保証協会、個人事業主は対象にしているというからまたなんとも言えない感じなのですが・・・。ちょっと愚痴っぽくなりました。

 さて、そんな我が国のNPO制度ですが、阪神淡路大震災を契機に整備されたと言われています。当時全国から多くの方が支援・ボランティアに駆けつけたそうですが、指揮系統が存在せず、十分な力を発揮できなかったという教訓を踏まえ、市民活動やボランティアを組織的に運営できるようにとの事のようです。

 実際に先の東日本大震災の時には、多くのNPOがそれぞれの活動・ネットワークを活かし様々な支援活動を行い、現在も多くの団体が続けています。これはこれで、社会における一つの役割・成果を果たしたと評価できると思います。

 他方、これまでに多くのNPOが生まれ、また無くなっていったのですが、現存するNPOの多くは日常的に様々な分野で活動を行なっています。

 僕らは、日常的なボランティア活動。仕事とも家族とも違う自分がやりたい事。地域や社会に自らの技能・想い・時間を提供する。そんなボランティアをしたいと思う人の受け皿としての役割が、いまこの日本でNPOに一番求められていると感じています。


2.なぜ図書館なのか?

 団塊世代の大量退職で、我が船橋のようないわゆるベッドタウンでは、今まで日中都内へ働きに出ていた人たちが地域へと戻ってきます。そんな彼らは、今まで会社と家の往復で地域での交友関係などほとんど持っていないでしょう。
 この人達が、仕事に行かなくてもよくなくなった時、一体何をするのでしょうか?これは私の体感ですが、パチンコ屋に行くか、家でテレビを見ているかのどちらかです。そういえば、最近はゲームセンターに集まっているという話も聞きます。

 そんな皆さんが、気軽に集える・参加できるのが僕らの民間図書館です。誰でも無料で利用できる図書館は、本が好きな人・何か読みたいと探している人にとっては非常に魅力的です。かつては町中に小さな本屋さんがありました。しかし今は、大きな本屋に淘汰され中心市街地まで出ないと本も買えません。無論公立の図書館もありますが、市内に数カ所しかありませんので、電車やバスで行かなければなりません。NPOの民間図書館は小さいながらも、とりあえず読みたいものを探す程度の蔵書はありますし、毎日でも歩いて通うことができます。(←数年後の話です・・・)

 ちなみにこの図書館、スタッフは原則ボランティアで運営しています。交通費などは一切出ませんが、住所や連絡先などを登録すればすぐに活動に参加できます。というのも、図書館のメイン業務である本の貸出などはすべてシステム化され、スタッフ証や蔵書に付いているバーコードを読み込めば誰でも簡単に操作することができるのです。なので、本の並べ方や選書、図書館でのイベントなど、多くの方に図書館を楽しく使ってもらう活動にも時間を割くことができます。

 例えば、毎月1回図書館で開催している飲み会『図書館BAR』。これは元々ボラティア2名が図書館でお酒を飲みながら色々な話をしたことから始まりました。同じ図書館で働く仲間が協力して、毎日少しずつ図書館を居心地の良い場所にしていきます。図書館BARも1年が経ち、様々なメディアで取り上げられました。今では毎回30人近くの人が、このイベントをきっかけに図書館へ来て友達を増やしています。

 そう、この友達を増やす場所。これは公立図書館では中々難しいのではないでしょうか?僕らの図書館は、飲食もできるし、お酒だって飲んじゃうし、昼間は一日中ラジオが流しっぱなしだったり、子供たちが大騒ぎしていても叱られません。それは、あくまで図書館は本を借りるための場所であって、読む場所は個々人で過ごしやすいところを探して欲しいからです。
 皆さんは、といっても僕に近い年代ぐらいでしょうが、小さい頃に友達の家に行って、それぞれ漫画本をずっと読んでいたりという経験はありませんか?まさにあれと同じ発想で、せっかく一緒にいるのにそれぞれ本の中に入っていってしまい、会話も生まれない状況ってどうなんでしょうか?
 図書館では、せっかく本が好きな人がたくさん集まっているんだから、もっと皆で楽しく過ごしてもらい、静かな所で本を読みたいのであれば、家でも喫茶店でも快適な場所を探してもらいたいと思います。

 流れに任せて書いてきた図書館編ですが、重要なことが抜けてました。我々の民間図書館はその蔵書をすべて寄贈本でまかなっています。皆さんの家庭にも読み終わった本がありませんか?実用書や時点などはともかく、犯人がわかってしまった推理小説など、一度読んだらもういいかなぁという本は是非図書館に寄贈して下さい。いつか読むかもと思って本棚に閉まっている本ほど、読む機会は訪れません。それならまだ机の上に積読ほうがよろしいかと。

 寄贈本とボランティアで運営される民間図書館。まさに地域のみんなで作る手作りの図書館です。

 そんな図書館を日本中にたくさん作りたいんです。地域の人達みんなの協力で、商店街の空き店舗など空きスペースを活用し、みんなが気軽に集まることのできる交流拠点。誰もが家から歩いて通える範囲にそんな図書館があったら今よりもちょっと自分の街に愛着がわきませんか?


3.僕らは街づくり団体です!

 こんなに図書館の話をしておきながら言うのもなんですが、僕らは図書館の為の団体ではなく、まちづくりをテーマとしています。一言にまちづくりと言っても、中々伝わらないと思いますので僕らは次のように定義しました。

『そこに住む人々が、自分の街に対して誇りと愛着を持ち、風土や歴史を元に、文化の創造と経済の自立を目指し続けること』

 つまり目的は、地域の文化と経済の発展です。日本中隅々まで個々の地域・街が発展すれば、日本全体が活性化すると考えます。なので、『地域活性化で日本を元気に!』という旗印のもとで『民間図書館とイベントで街を元気に!』というスローガンを出しています。

 日々図書館において、地域の方々の交流が生まれ、先のイベントのような様々な活動が派生していくことによって文化の卵が生まれていきます。彼らが、家でテレビを見ているだけの生活でなく、外へ出て食事を取り、趣味を見つけ、地域で生活をする事で経済も動きます。

ふなばし駅前図書館では、毎日数十件の道案内を行ない、近隣の商業施設を案内しています。
柏井町のおいしい図書館は、パンを食べ、珈琲を飲みながらくつろいで本を読める図書館です。
船橋北口図書館は、図書館BARをはじめ、パソコン教室や易の勉強会などが開かれています。
袖ヶ浦団地図書館は、高齢化の進む団地の中の憩いと交流の場となっています。
ちばぎんざ図書館は、紙芝居や中国語講座を催し、ボランティアの手作りアクセサリーを販売中です。
福知山ほっこり図書館は、4WD専門の車屋さんの中にあり、専門誌と絵本が隣同士に並びます。
SAZAN の小さな図書館は、マンションの中の絵本専用ですが連日子供たちに大人気。
ビビットみんなの図書館は、絵本の読み聞かせだけでなく、子育ての情報交換もしています。

 図書館は、そこを使う人にとっては便利な場所ですが、そこで働く人にとっては生きがいになります。そして、人と情報が集まる図書館が街の憩いと交流の拠点として、文化と経済の礎となり、地域の底上げにつながると信じます。