窪田将治監督による、江戸川乱步の短編を三部作で映画化した赤い部屋シリーズが、2020年8月を皮切りに公開されました

 

第1弾:メビウスの悪女(双生児)

第2弾:裸の天使(畸形の天女)

第3弾:聖なる蝶(悪魔人形)

 

         カッコ書きは原作・原案

 

 

 

 

 3作品とも1時間余りの上映時間。エロティックなサスペンス映画となっています

 

 赤い部屋に集まった男女が1人ずつ自分が犯した犯罪を暴露していく、そんな構成です

 

 

 第1弾「メビウスの悪女」は、双子の妹が姉を殺害し、姉の婚約者を奪うというお話

 

 第2弾「裸の天使」は、会社社長が出会った奇妙な少女に溺れていくというお話

 

 第3弾「聖なる蝶」は、元教師と生徒との禁断の愛と悲しい結末を描いたお話

 

 

 

 

  第1弾:メビウスの悪女(双生児)

 

 双子の姉:彩・・・清水楓(二役)

 双子の妹:楓・・・清水楓(二役)

 彩の婚約者・・・川野直輝

 双子の母・・・美保純

 

 双子の姉妹:彩と楓は母と3人暮らし。同じ部屋に寝泊まりする姉妹だったが、彩と婚約者のセックスを覗き見した楓は嫉妬する。そこで、姉を殺害し姉になりすます計画をする。実行した楓は婚約者を手に入れるも憔悴する母。楓の完全犯罪は成功したのか?

 

 

 原作「双生児」は、江戸川乱步が1924年に発表。殺人を犯し死刑宣告を受けた双子の弟が実は兄も殺害していたという、うちあけ話です

 

 その原作をアレンジして製作されたのが「メビウスの悪女」

 

 徹底的な悪女でした。妹の楓は。姉の化粧や癖、夜の営みそのすべてを研究し、計画に計画を重ねた犯罪

 

 双子の姉妹の一方が一方を殺害する、松嶋菜々子さんが演じた古畑任三郎「ラスト・ダンス」を思い起こします

 

 他人になりすます...まるで「パノラマ島奇談」 隠しカメラで覗き見...まるで「湖畔亭事件」

 

 江戸川乱步の世界を十分に堪能できる作品です

 

 姉妹二役を演じた清水楓さんの大胆な演技ももちろん、母を演じた美保純さんも大注目の作品です

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  第2弾:裸の天使(畸形の天女)

 

 宮城(松永)・・・木下ほうか

 文子・・・中山来未

 斎田・・・仁科貴

 

 不動産会社社長の宮城(松永)は、週に一度、社長という肩書きを忘れて隠れ家で過ごしていた。そこで出会った少女:文子と関係を持つ。その文子につきまとう斎田を2人は殺してしまう。妻子持ちの宮城は文子に愛情を迫られ、困惑。文子がとった最終的な行動とは?

 

 

 原作「畸形の天女」は、1953年に発表。4人の作家による合作で、江戸川乱步は発端部分を担当。したがってあまり知られていない作品ですね

 

 原作でも宮城が変装して名を変えて街を歩き回るという設定で始まり、出会ったふみ子と斎田を殺害します。宮城はもう一人の男を殺害し逮捕されますが、ふみ子は宮城のために罪を背負って自殺するといったお話

 

 好きでもない男でもセックス中は抑えがきかなくなるという奇妙な少女を演じたのは中山来未さん。「ザ・ラストヒロイン~ワルキューレの審判~」のグランプリ受賞者

 

 個性派俳優木下ほうかさんとの濡れ場には圧倒されました

 

 変装までして会社社長という肩書きを一瞬でも忘れたい...。江戸川乱步らしい発想です

 

 そして出会ったのが少女。おじさんにとっては天使のような存在だったのでしょう(LINEに天使で登録しているのが面白かった)

 

 

 

  

 

 

 

 

 

  第3弾:聖なる蝶(悪魔人形)

 

 先生(杉浦)・・・波岡一喜

 ルミ・・・栗林藍希

 配送員・・・柾木玲弥

 

 盗撮が発覚し職を失った元教員杉浦。彼は10代の女性にしか興味がない男。そこへ高校生のルミが現れる。結ばれた2人だったが、しだいにルミを束縛するようになる。過去の思い出を胸に受け入れるルミは、蝶のようになりたいと願い...。赤い部屋から帰った杉浦の前には...

 

 

 原作「悪魔人形」は、少年探偵ものであり1957年に発表。連載時は「魔法人形」です

 

 小学生のルミちゃんとミドリちゃんが、学校帰りに奇妙な老人と出会い不思議な体験をする。すべて怪人二十面相の仕業で明智小五郎と少年探偵団が活躍します

 

 「聖なる蝶」は監督曰く、脚本を書いてから原作を探したらしく、なるほど、美しい姿のままで...そこから原作が浮かびますね

 

 もうラストは想像できましょう!そのラストシーン綺麗でしたね

 

 ルミが何故杉浦に近づいたのか?その理由がわかるシーンは乙女チックでよかった

 

 ルミを演じた栗林藍希さんは歌手でもあるんですね。新人女優としての演技、体当たりな演技が魅力的でした

 

 

 

  

 

 

 

 

 先にも記載しましたが、集まった男女が1人ずつ、過去の自分の犯罪を発表していく「赤い部屋の会」

 

 

 

 

 第1弾「メビウスの悪女」では双子の妹:楓が、第2弾「裸の天使」では社長の宮城(松永)が、第3弾「聖なる蝶」では元教師杉浦が発表します

 

 

 

 

 そうなんですよ。3人ともこうして赤い部屋に集まっているということは、逮捕されていないんですね

 

 原作「赤い部屋」では、男7人の1人、T氏が犯罪を暴露します。これまで、99人の人間を殺めてきたというお話。その犯罪が確実性はなく偶然性に頼るものの、犯行がバレることはなく完全犯罪となるトリックによって行われたこと、いわゆる「プロバリティーの犯罪」

 

 窪田監督が生み出した3人の犯罪者も「プロバリティーの犯罪」ともいえるのではないでしょうか。その完全犯罪ともいえるその方法はどうぞ、映画を観てお楽しみください