正義と真実はどこにある?「アムール、愛の法廷」フランス映画紹介

 

あらすじ・ストーリー

厳格で人間味のない裁判官と恐れられるミシェル。

法廷では、娘を殺した父親の裁判が始まる。

かつて思いを寄せていた女医・ディットが、偶然、この裁判の陪審員に選出され、動揺するミシェル。

そんな中、裁判は進み、被告側、原告側の証人が次々と証言してゆく。果たして、真実はどこにあるのか。

ベネツィア国際映画祭で脚本賞と男優賞を受賞した作品。

 

 

作品情報

製作年: 2015年
製作国: フランス
原題: L’hermine

キャスト・監督

監督:クリスチャン・ヴァンサン

出演:ファブリス・ルキーニ、シセ・バベット・クヌッセン

 

「正義の目的は真実を暴くことではない」(感想)

フランス語タイトルの「アムール」は映画の内容にそぐわないと個人的には感じました。アムール、愛、など、日本人の勝手なフランスへのイメージを映画に押し付け、映画館に客を動員しようとする意図があると思います。

日本人の熟年のラブストーリーは確かに描かれていますが、ラブストーリーが主体ではなく、裁判と、法廷を取り巻く人々の人間味溢れるドラマです。

 

この映画の紹介、オフィシャルホームページでさえも、「冷徹な裁判官が恋をしたことにより、人間味を取り戻して、良い判決ができた」のように書かれているが、私はこの解釈に全く賛成できない。

 

長い経験のある裁判官が、個人的な感情で行動を変えるとは思えない。

 

みんなからは好かれていないかもしれないが、真実と正義に対する信念をしっかり持ち、仕事のできる裁判官、それが、この映画の主人公。

その魅力に、偶然再会した、裁判官が思いを寄せる女性も陪審員として見守る中で惹きつけられてゆき、映画のラストでは、これから二人の恋が始まるんだなとわかる展開になる。

 

なので、私はこの映画が、大人のラヴストーリーだと紹介されていることに不自然さを感じます。

 

フランス語タイトルのhermine(アーミン)とは、司法官の礼服のガウンのような布の事です。

大人のラヴストーリーと紹介されていますが、冒頭から全編を通して、裁判の様子が描かれます。

 

フランスの一般人の陪審員の様子や、裁判の様子がわかります。

裁判の内容は殺人事件が扱われており、暗いムードではあります。

裁判長、裁判官、陪審員、警察。全ての裁く人も、また一人の人間であり、真実はどこにあるのか、何を真実とするのかをいつの間にか考えさせられる映画。

 

正義の目的は真実の追求ではないというセリフも大変深いと思いました。

 

 

裁判の結果が気になって、最後まで見てしまいます。