この1週間よく眠れていなかったからなのか?
それとも翔くんの家にチョコを置いてきて気が緩んだせいなのか?
翔くんの出ているニュース番組を見てて。
今日もイケメンだなぁ、って思いながらいつの間にか眠ってた。
そのせいか?翔くんが夢に出てきた。
『こんなところで寝ちゃ風邪ひくのに・・・
何回言ってもアナタはソファーで寝落ちするんだから。
まったくしょうがない人だね』
ゆらゆらと体が運ばれてベッドかな?
ゆっくりと降ろされた。
あーこれは夢なんだ、って分かってる夢って面白い。
ゆらんと世界が揺れて、あったかくなった。
額から顔に冷たい何かが触れる。
『智くん、チョコありがとう。
正直・・・期待してなかったから・・・
すごい嬉しかった』
あ・・・顔に触れてたのは手か。
いつも翔くんがするみたいに、僕の口唇にまで触れる。
頬が包まれて、だんだんあったかくなってるのまで分かる。
面白い夢。
んふふ、夢の中でも翔くんは翔くんだなぁ。
『うん、いい顔。
こないだからこんな顔出なくなってたもんね。
ごめんね・・・俺・・・・ちょっと・・・寂しかったんだ。
智くんの気持ちを形にするなんて・・・到底できないくらい・・
大きいのにね?』
ふわりと翔くんのコロンの香りがした。
夢って匂いまで分かる?
口唇に柔らかい何かが触れる。
やわやわと動く何かは翔くんの口唇?
夢から意識を浮き上がらせて、目を開けると・・・
やっぱり翔くん。
翔くんの肩をとんとんと叩いた。
「お疲れ様・・・疲れてるのに・・・来てくれたの?」
「お礼は直接言いたいし。
それに・・・渡したいものがあったから」
翔くんがちょっと待ってと、寝室から出て行った。
戻ってきた翔くんが僕に差し出したのは紙袋。
中を覗くと、チョコと思しきものがたくさん。
何?あちこちからいただいたもの?
「チョコ好きな智くんのためにあちこちで買い集めたんだ。
ごめんね。チョコもらえない、って駄々こねて。
智くんの今の状況も考えないで・・・反省しました。
バレンタイン、俺が渡せばいいだけだ、って思い直した。
でも・・・どこのチョコがいいのか?分かんなくなって。
目移りしたのを選びきれなくて・・・」
で・・・・この紙袋いっぱいのチョコ?
「ありがと・・・でも・・・
こんないっぱいは一人では食べきれないから。
翔くんも一緒に食べようね」
最初に目についたパッケージを取って開けた。
一つ口に入れると、優しく溶けていく。
「美味しい。翔くんも味わって」
チョコ味のキスで、また僕たちはいつもの僕たちに戻った。
冷え冷えと感じてた僕のうちも。
翔くんがいるだけでおひさまがいるみたいにあったかくなった。
END