みっともないな。
いい歳した男がさ。
なんか電話で名前よばれただけで泣いちゃうなんてさ。
電話切った後、ため息を吐いた。
ずずって鼻をすすって。
グイって頬に流れた涙拭って。
両手でパンと顔を叩いて気持ちを上げた。
さ、松潤がうまいもん、ごちそうしてくれるっていうし。
久しぶりに会うんだから、楽しい時間にしなきゃな。
家ではTシャツ短パンなのを少しはマシな服装に着替えて。
財布とスマホと。
そんくらいで大丈夫かな。
家を出てタクシーが拾えそうなとこまで歩く。
いつの間にかもう季節変わってんだなぁ。
僕がぼーっと過ごしてるうちに、時間だけはしっかり流れてってる。
待ち合わせしたコンビニに入って雑誌のコーナーに向かった。
雑誌の表紙にいる翔くんを見て、つい手が伸びた。
僕が触れたいのは、こんな写真の翔くんじゃない。
伸ばした手が自然と下る。
それに合わせて目線も下がる。
自分の爪先を見てると、ポンと肩を叩かれた。
「大野さん、久しぶり」
大きめのエコバッグを持った松潤がいた。
「買い物してきたの?」
「そう、ちょっと足りないものがあってね。
もうちょっと買うものがあるから付き合って」
「おっ!?かなり凝ったごちそうの予定?」
松潤の作ってくれるご飯美味しいから楽しみ。
初めていく店での買い物も楽しくて。
落ちかけた気分が少し上がった。
美味しいごちそうに美味しい酒。
調子に乗ってちょっと酔っぱらう。
一人で家のみしてると、こんなに酔うまで飲むことないから。
久しぶりかも。
「最近、どう?翔さんとうまくやってる?」
「・・・・分かんない。翔くん、僕のこと嫌いになってるかも」
涙声になりかけて俯いた。
「そんなことあるわけないじゃない」
聴こえた声は松潤のものじゃなかった。