「タオル使うと痛いかな?」
お湯がかかると背中が痛んだ。
思わずショウは痛みを訴えてしまった。
ショウにはこんな痛みを感じた経験がほとんどなかった。
擦り傷とはなんなのか?それすらも知らない。
痛みはすぐに消えた。
痛みがないようになのか?
サトシはごめんと言いながらもショウの背中を撫で始めた。
サトシの手は柔らかくショウの背中を撫でていく。
ショウはくすぐったいような感覚とそうでない何かも感じていた。
「一応、しっかりお湯で流したから、大丈夫かな。
痛かったよね。
これであとはハイドロコロイドドレッシングですぐに治るよ」
ちょっと待ってて、とサトシがバスルームから出て行った。
戻ってきた時にはスプレーを持っていた。
「もう、かけちゃおうね」
サトシがショウの背中を軽くタオルで押さえた。
サトシの手が触れた時と違い、少しの痛みを感じた。
サトシがショウにかけようとしているものが何なのか?
ショウの知らないものだった。
ショウの体は緊張で硬くなった。
シューッと音がしてショウは背中に冷たさを感じ。
それがすぐに温かさに変わっていくのを感じた。
「それは・・・何ですか?」
「ハイドロコロイド剤。
すぐに完全撥水のドレッシングに変わるからシャワーしてもしみなくなる」
背中に感じていた温かさはいつの間にか消えていた。
「もう、しっかり変わったからもうしみないよ」
肩からシャワーのお湯がかけられた。
確かに先ほどのような痛みは感じなくなった。
痛みを感じなくなるのならあとは自分で洗おうと思った。
しかし腕を動かすと背中が痛む。
サトシがそれに気付いた。
「お湯はしみなくなるけど、動くと痛いのはどうにもならないからね。
他のところも洗ってあげる。
ちょっと頭洗うから座って」
奇妙な形の椅子が置いてあった。
座り心地が悪く、安定しない。
それでもその椅子しかバスルームにはない。
ショウはなんとか足を踏ん張って座った。
サトシがショウの髪を手で梳いていく。
気持ちいい。
お湯をかけられている間、サトシの指がショウの頭を滑っていく。
その手に、その指にいつまでも触れられていたい。
ショウの頭に浮かんだのはそんな想いだった。