「うわっ!やっぱ、無理!」
「んじゃ、僕が持ってあげるから。
自撮りして」
「ん、ありがと」
手を伸ばして、僕が吊り下げてる魚と自分を自撮り・・・じゃなく。
僕も一緒にと、肩を抱かれた。
僕は別に写さなくていいんだけど。
「せっかくの記念なんだから、翔くん一人で撮ればいいのに」
「でも、智くんと一緒に釣りした記念の写真でもあるんだよ?」
なるほど・・・それもそうか。
誕生日デートだもんね。
「じゃあ、僕も一緒に撮ってくれる?」
魚を吊るした手を翔くんの前に持っていく。
心なしか翔くんの笑顔が引きつってる・・・かな?
僕が持ってても、時々ピクピクと動いてる。
落とさないようにするのが、結構大変。
何枚か撮った後、すぐにクーラーボックへ。
ビギナーズラックかな?
潮目がよくなったからかな?
その後も翔くんが何匹か釣り上げた。
僕の竿に引っかかったのは、小さなカサゴだけ。
しかも、エラに引っかかって、奇跡的に釣れた感じ。
「今日は翔くんが大活躍だったねぇ」
そろそろ戻らなきゃいけない時間。
クーラーボックスの中の釣果を見ながら話してた。
「智くんの指導がよかったからでしょ?
俺が釣れ始めてからは、全面的に俺のサポートしてくれてたし。
ホント・・・自分の懐に入ってきた時のおもてなし・・・
ハンパないよね」
「ん・・・翔くんにさ。
いい誕生日だったな、って。
楽しかったな、って。
思って欲しいじゃん」
また来たい、って思って欲しいし。
でも、それは口に出しては言わなかった。
「楽しかったよ。
これで・・・後輩たちと釣りに行ったって聞いても・・・
ヤキモチ妬かずにすむようになるかも。
今まで話を聞いて、どんだけ、俺が嫉妬に駆られてたか?
わかる?
あーでも・・・手厚いおもてなしを知ってしまったからなぁ。
もっと嫉妬に駆られるかも」
☆★
明日はイベント参加のため、『Deepな冒険』はおやすみします。