「ねぇ   「今夜も

 

もう夜も深い時間。

そろそろ寝ようかという頃合い。

 

 

「翔く   「智く

 

何か言いかけては。

 

 

「んふふっ   「くはっ

 

笑い出すタイミングまで同じ。

 

智くんが笑いながら、寝室のカーテンを開けに行く。

 

 

「来て   「どうした

 

俺の言いたかったことと。

智くんの言いたかったこと。

もしかして同じかもしれない。

 

 

「月   「月

 

智くんに並んで窓の外を見る。

そこにはちょっとだけ欠けた月。

腰を抱くと、智くんも心持ち体を寄せてくる。

 

話し出そうと、息を吸うタイミングも。

何かを伝えようと声を出すタイミングも。

 

面白いくらいに重なった。

 

ただ笑うしかなくて。

同じタイミングで同じことを言おうとしている。

 

そのことがたまらなく嬉しくて。

そんな智くんがたまらなく愛おしくて。

 

 

 

口唇を重ねようと。

顔を見合わせるタイミングまで同じだった。