エントリーシートに記入する志望動機をメモ用紙に下書きする。

いくつかの下書きを済ませたら・・・・今日のノルマは終了。

頑張った自分へのご褒美!

大好物のストロベリーアイス。

 

ノルマを達成した時に食べるアイスは格別。

しかも今日は第一志望のが満足できるレベルに書けた!

特別なご褒美!

 

ハーゲン○ッツだ!

この、ストロベリーのつぶつぶ感!

濃厚なストロベリーの味わい!

最高!

 

なのに・・・!

 

 

アイスを口の中で溶かしてると・・・

ずきんっ!と奥歯のあたりに違和感・・・ではなく。

はっきりとした痛み。

 

これは・・・ヤバイ。

ちょっと前からしみるかも?な感じをだましだましやってきたのが。

レベルアップしてる。

鏡の前で大口開けて、痛みを感じたところを見てみても・・・

よく見えないし、よく分からない。

これはとうとう歯医者に行かなきゃダメなレベルか・・・

 

検索して通学経路にある歯医者にすることにした。

予約は歯医者のホームページで出来た。

 

 

 

ホームページの地図を見ながら歩いて行くと。

住宅街の中に新しそうなコジャレた建物。

目指す歯科医院だった。

 

受付は女の子。

笑顔も、仕種も、声も話し方も可愛い。

ピンクの白衣の胸のあたりがポヨンとこれみよがしに膨らんでて。

この子目当てのヤツいそう。

 

待合室にはWi-Fiが飛んでた。

スマホで暇つぶしをしながら、呼ばれるのを待った。

 

 

 

俺の名前を呼んだのは、受付の子の可愛い声じゃなかった。

男性の声だった。

ぼそぼそとした声はあまり通りがよくなくって。

 

ん?俺?と顔を上げたら、尖った口調で名前を呼ばれた。

うわっ、もしかして怒らせた?

 

マスクをしたちょっと小柄な男性の後に着いていく。

個室が並んだ診察室は和風な色の名前が付いていた。

先生なのか?その男性が入って行ったのは、瑠璃の部屋だった。

 

椅子に座ると膝掛けをかけてくれる。

 

 

「今日はどうされました?」

 

言葉は丁寧なのに、ぶっきらぼうな話し方。

さっき、名前を呼ばれたときに、すぐに返事しなかったから?

そんくらいで腹立てるなんてさ。

なんか・・・面倒くさい先生?

 

 

「で・・・アイスで痛みを感じて・・・」

 

「分かりました。

虫歯は我慢したって治んないですからね。

早く来てもらってよかった。

早速見せてもらいますね?」

 

椅子が倒される。

マスクをかけていても、鼻筋が通ってるのが分かる。

目はパチっとしていて、綺麗な二重。

無影灯の灯りで影になった睫毛が目に影を落とす。

 

 

「痛みが我慢できなくなったら、右手を上げて」

 

先生の右手に握られた器具が俺の口の中、痛みがある歯をつつく。

ずきーーん!

頭まで痛みが響く。

ダメだ!手上げようとした時。

先生が急に眉顰めて、目付きが悪くなった。

痛いのはコッチなのに!

 

なんとか痛みが我慢できる程度でよかった。

レントゲンを撮ってくるように言われて、診察室から出て。

おしりプリプリ振りながら歩く女の子に着いていく。

レントゲンは・・痛くないよな?

もう痛いのは終わり・・・だといいんだけど・・・・

 

 

診察室に戻って、また椅子に座らされる。

おしりプリプリの子がよだれかけみたいなのを付け直してくれる。

 

ちょっと待ってたら、先生が戻ってきた。

先生がさっきより怖い顔してる。

器具を持って、また俺の口の中の診察再開。

さっき触られて痛かったとこ、優しくしてくれないかな?

なんてのは、淡い期待だった。

 

さっきよりもグイグイ来る感じ。

しかも痛いとこ、ぐりぐり器具で探ってるのか?

ずきーーーん!が連発でくる!

痛い痛い痛いい!!

先生の目が釣り上がってる?

しかめた目がボヤケて見えた。

怒ってる?なんでっ!?

これで手を上げて、治療を中断させたら・・・

 

 

「あがががっ」

 

「んーこの歯ですね。

よく見えないかもしれないけど、中の方まで広がってますね。」

 

俺の口の中をよく覗きこもうと、近づく。

額に汗を浮かべて、俺の歯をぐりぐりぐりぐり。

先生の眉間のしわが深くなる。

そんな怖い顔しなくても!

 

時々、ブツブツ何か言ってるのは何!?

俺の歯、そんなにひどい虫歯!?

 

・・・・いてーーーーー!

足先までもピン!となるほど痛みが走る。

右手がピクピク、もう我慢ならない!右手を上げたい!

でも治療を中断させたら、その後何をされるか、分からない怖さが!

 

ここはグッと我慢するしか・・・!

右手がピクピクして・・・・ちーん。

 

頭の中で何かが終わった音がした。

ホワイトアウトなのかブラックアウトなのか。

行き先は天国なのか地獄かなのか。

 

 

 

 

「櫻井さん、今日はこれで終わりです。

うがいをして、待合室にお戻りください」

 

椅子を起こされて、目が覚めた。

先生は診察室から大股で出て行くところだった。

 

 

 

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