翔ちゃんは、小さい頃から他人に執着しない子だった。
僕の後ろに付いて回っていたけど・・・
それは、好きだから、というわけじゃない。
家でおにいちゃんでしょ、って言われることに疲れたとき。
僕のところに来て、甘やかしてもらいたかっただけ。
人にこだわらない代わりに・・・
翔ちゃんのモノだよ、って言われたモノには、執着した。
人が翔ちゃんの持ち物を勝手に触ったり、使ったり。
そんなことがあると、癇癪起こすくらいに怒った。
大事に大事にして。
もう使えなくなるまで使って。
それでも、見切りを付けたら、最後はそれまでの執着がなんだったのか?
と、思うくらいにあっさり捨て去る。
人を好きになる、って気持ちを翔ちゃんが持っているのか?
僕にもわからない。
でも、誰かが翔ちゃんを好き、って言った時。
きっと言葉では理解しても、心には響かないんじゃないか。
そう思ってる。
人の感情を理解できないのか?したくないのか。
そこまでは分からないけど。
中学、高校で多分、翔ちゃんは何回も女の子に告白されたと思う。
付き合って欲しい、と言われたら、支障がない限り要望に応えたんだろう。
何人かの子に付き合ってはデートした。
僕が翔ちゃんのことを好きになったのはいつなのか?
もう、記憶にない。
気がついたときには、好きだった。
翔ちゃんが他の子と話してるとモヤモヤした。
翔ちゃんは僕の後ろに付いて回っていればいいのに!って。
子どものわがままだけど・・・後から嫉妬してたんだ、って分かった。
ある日、翔ちゃんが誰かに好き、って言われて。
その言葉が心に響いて、翔ちゃんがその人を好きって、思うようになったら?
そんな想像をしただけで・・・僕は気が狂いそうになった。
他の誰かに目を向けないで。
翔ちゃんも人並みに性的なことへの好奇心はある。
僕はそれを利用した。
僕は翔ちゃんのもの。
僕は人として翔ちゃんに好きになってもらうことを諦めた。
ただ、翔ちゃんのモノとして。
最後の最後まで、執着されることを選んだ。
きっと翔ちゃんには人もモノも同じレベルで存在してるものなんだろう。