心臓移植は無事成功した。
移植した心臓は人工心肺の停止とともに、脈動を再開。
力強く血液を送り出した。
智くんから取り出した心臓はところどころ硬く白い病変があった。
病理検査へ回し、組織を調べてもらう。
智くんは手術3時間後に覚醒した。
目を覚ますのか?心配で、側から離れられなかった。
俺の腕を疑うのか?と。
二宮医師には冷たくあしらわれた。
睫毛がぴくぴくと動いたのが分かった。
手を握ると、微かに指先が動いた。
「智くん」
「しょう・・ちゃん・・・
僕・・・・・生きてるの?」
「生きてるよ。
智くんは俺のものなんだから。
決して死なせはしないから」
智くんが震える指で俺の頬を撫でた。
酸素マスクを外した。
少し震えて乾いているが血色のいい口唇にキスを落とした。
「でも・・・もう・・終わりでしょ?」
「終わりじゃないよ」
智くんの口唇にもう一度、キスを落とした。
智くんの目から涙が流れ落ちた。
何粒も落ちて、筋を作った。
保育室へ向かった。
そこには、同じ顔をした大きさがまちまちの子どもたちがいる。
「しょーちゃ」
「しょうたん!」
みんな俺のことを同じように“翔ちゃん”と呼ぶ。
遺伝子に刷り込まれているんだろうか?
俺に飛びついてきた子がいる。
これは何人目のサトシになるのか?
もう分からなくなってしまった。
初代のサトシから、2年おきに生み出している智くんのクローン。
智くんは決して死なせはしない。
俺の大事なものなんだから。
END