「ね?翔くん。
今週末のコンサートは来られないんだったよね?」

夕飯の後の、コーヒーの時間。
智くんが、俺の肩に頭をもたせかけて言った。


「うん・・・どうしても抜けられないゼミの研修旅行があって。
ホントは・・・智くんのコンサートに行きたいんだよ!
でも・・・ゼミも・・・俺がすごい興味持ってるやつのだから・・・」

「気にすることないよ。
今の翔くんには、大学の勉強が一番大事なんだから」

「でもさ・・・俺、智くんのピアノ聴きたいのに!
それに・・・おまじない・・・できないじゃん!」

「んふふ・・そんなこと心配してた?」

「そりゃ・・・いつだって、会場でおまじないしてたし。
必要ないって言われたら・・なんかそれもショック・・かな」


智くんの手が、俺の腰をするっと撫でるように、回された。
多分、おまじないがなくたって、智くんは大丈夫なんだろうと思う。
でも・・俺のおまじないがあるから!
って・・・思いたいのは。
恋人として・・・当然だよね?


「でも・・僕はこれに・・守られてるよ?」

智くんの指先がネックレスにかかった。
クルン、と細い鎖を指に巻いて。
ぶら下がって揺れているものに指先を挿しこんだ。






学生は学業が本分。
智くんは俺に対しては常にその姿勢を崩さない。
いつも、ちゃんと勉強するように、って言われてる。


今では、ちゃんと守ってる。
でも、大学に入った当時の俺は違った。

俺が変わるきっかけは・・・・
やっぱり智くんだった。