「翔くん!はい!あーん?」


仕事の資料を読んでいるときには、普段は話しかけることもしないのに。


深刻というか・・・泣きそうというか・・・すごい真剣?な顔をしてて。
智くんが持ったスプーンが迫ってくる。
スプーンになにか、ぐちゃっとした何か?があって。

それは、「はい、あ~ん♡」な感じでは絶対になくて。
そのスプーンにのせられているものが、呪いの薬な・・・感じで。


「え??ええ???」


つい・・後ずさった。
智くんの迫力に・・押されて。


「・・・しょうくん・・食べてくれないの・・・?」

「いや・・あの・・智くん・・・これ・・何?」

「カップケーキ」


そんな甘~いものを「あーん?」なら、もうちょっと、カワイク「あーん♡」と・・
していただきたいんですけど。


スプーンの中身をじっと見てたら。
スッっと・・スプーンが遠ざかった。



「もう・・いい。僕が食べる」

スプーンの中身を美味しくなさそうな顔して口に運ぶ。
カップの中には、ピンクのクリームが乗った甘そうな・・ケーキ。


「甘い・・・」

楽しくなさそうな、美味しくなさそうな顔してて。



「あの・・・?俺の分は?」

「ない。っていうか・・なくなった。
今、僕が食べてる」

「智くんの分は?」

「買ってきてない」



なんで??
こういうのって一緒に食べるもんじゃないの?