「翔くん?」
「翔く~ん?」
「しょおくん?」
「翔くんてば!?」


何回、呼んでも、こっち見ない。
ソファーで、膝抱えて、ちっちゃくなってる。



隣に座って、翔くんに寄っかかった。


「どうしたの?なんか・・翔くんが落ち込むようなこと、あったっけ?」


顔をのぞき込んだら。
大きい目に涙浮かべてて・・
今にも零れ落ちそう。



「智くんが・・・オレ、一押しの世界遺産・・選んでくれなかった・・」

「だって、今年の夏休みに行きたい場所でしょ?」

「オレが・・一番好きな場所、なのに・・」

「だから・・・選ばなかったんだよ?」



行きたいのは、今、じゃないから。



「智く・・ん・・・」
あ。涙、とうとう、零れた。
勢いよく、抱きついてきて。

・・痛いってば!


「俺のこと・・捨てないで~~~」

え?なんで、そうなるの??
翔くんの考えてることが、全然わからない!



「オレのオススメは、ダメだって・・・思ってるんでしょ?」

え?なんで、そうなるの??
行きたいと、思ったんだよ。
すごく、行きたいんだよ?




「翔くん、大丈夫。落ち着いて・・・」

「俺のこと・・キライにならないで~~~」

全然、話、聞いてくれないから・・
軽く、頭をぽかっと叩いた。



「智くん・・やっぱり、俺のこと、キライになったんでしょう~」
鼻水まで垂らして・・・
だから・・抱きつきすぎ!
痛いってば!



「翔くん。離して」

「さとしくん・・・やっぱり~」

「翔くん!大好きだから!落ち着いて!」



いつか、翔くんと一緒に行きたいから。
翔くんの案内で。翔くんの解説付きで。
翔くんのいい、と思ったところを、現地で翔くんの言葉で、聴きたい。
その方が・・僕、楽しいと思ったんだ・・・