このお話は「pathétique」の続編です。







翔くんが背負っている罪は・・
半分は僕のもの。


僕は、翔くんに懺悔しなきゃいけない。


だから。
今夜。





また、翔くんの家にピアノを聴かせてもらいに行く。

今度は、翔くんに、僕の熱情を感じてもらうために。




いきなり訪ねて行った僕に、翔くんは驚いた。

「あの曲。もう一回、聴かせて」
僕の言葉に翔くんは、もっと驚いて、躊躇いを見せた。
きっと、あの夜のことを思い出してるんだね。


「どうしても・・聴きたいの。お願い」
躊躇ったけれど・・拒否はしなかった。

ちょっと、時間が欲しいと、翔くんはヘッドホンを付けて、ピアノに向かった。
10分ほど、弾いた後、ヘッドホンをピアノから外して。



僕の方を視た。
僕は頷いて・・
「お願い・・・」


でも、今日の演奏は・・こないだのと、全然・・違ってた。
あの時受けた感じとは、違うものを感じる。

それは・・哀しみなのか、切なさなのか、躊躇いなのか、喜びなのか。



弾き終わった翔くんは、鍵盤を見つめたまま・・・
ピアノの前から動かなかった。


だから、僕から・・・近づいて・・

「僕のこと見て。こっち、向いて」
翔くんが向きを変える。



「この前と、違うね。翔くん・・・何か・・変わった?」
そして、唇に僕のそれを重ねて。

驚きながら、戸惑いながら、顔を上げた翔くんは・・・
僕に対して、こないだの夜のことを謝る。

謝る必要なんて、ない。
僕は、今夜、翔くんに懺悔しに来た。




「翔くん。僕ね・・・今夜・・・もう一度・・・・って。」
もう一度。
翔くんの唇に触れる。




今度は、誘うように。
罪の半分を分けてもらうために。