静かなる町ルアン・パバーン | フーテンの無職 〜無職の大将放浪記〜

フーテンの無職 〜無職の大将放浪記〜

日本社会のレールから外れて、気の向くまま風の向くままプラプラと、あてどもなく彷徨う。そんな刹那的な人生を邁進中。


人生、酒と旅と本があれば、それで良い・・・

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   バンビエンで4日間滞在したあとは、ルアンパバーンへと移動することにした。本当はもう数日バンビエンの滞在を延長しようと思っていたのだが、バンビエンではちょうど週末の音楽フェスティバルが開催されるようで、どの宿もその期間は宿泊の予約で埋まっているようだった。

   ルアンパバーンへは早朝7時発のミニバンを予約したので、6時には宿を出てピックアップ地点へと向かう。外はまだ夜が明けておらず、町は寝静まっている。一部飲食店やサンドイッチの屋台だけがポツポツと店を開く準備をしていた。周囲には早朝の散歩を楽しむ中国人たち。彼らの朝は早いのだ。


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   屋台でサンドイッチを購入して朝飯代わりにパクついていると、まだ薄暗い空には気球が上がっていた。夜明けの空を楽しむアクティビティだろうか?  空は徐々に明るみを増してくる。

   それにしても、爽やかでヒンヤリとした朝のこの空気がうまい。普段は移動日以外に滅多に早起きすることはないので、なんとも新鮮な気分である。町がまだ寝静まっているのがまたいい。この薄暗い静けさの中から徐々に煌々とした明かりが照らされていき、小鳥やニワトリの鳴き声と共に少しずつ町が目を覚ましていくのだ。その中をひとり静かに歩いていく。いわゆる「旅立ちの朝」というやつである。


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   ミニバンは各地のピックアップ地点で客を集めつつ、ルアンパバーンへと勢いよく走り出した。車窓からは朝の仕度をするラオス人たちの姿が垣間見える。この流れゆく景色をじっくりと眺めるのもまた旅の情緒である。


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   バンビエンからルアンパバーンへはミニバンで4時間。途中、一度だけ長い休憩を挟んで、バンは時間よりも少し早くルアンパバーンへと到着した。


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   バスターミナルで、さっそくタイムテーブルを確認する。次の行き先の候補はルアン・ナムターとウドムサイ、中国のシーサンパンナ、ベトナムのディエンビエンフーである。このうちシーサンパンナ以外は毎日バスがあるとの事。とりあえずそれだけ分かれば十分である。


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   バスターミナルから町の中心街へはおよそ3キロの道のりだ。まだ朝の11時前である。急ぐことはないので、ゆっくりと中心街を目指して歩きはじめる。

   
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   ここにきて、突然多くの漢字の看板が目に入るようになってきた。中国とルアンパバーンはバスで通じているのだ。中国の国境が近づくにつれて、中国語の看板も徐々に増えてくる。国境をいくつも越えていくと、こうした変化が手に取るように分かるのだ。


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   町中を歩いていると、突然ラオっ子の集団に出くわした。どうやら近くに学校があるようである。そういえば、今はちょうどお昼時だった。

   ラオスでは給食がほとんど普及していないので、子供たちは昼時になると、一旦家に帰ってゴハンを食べてからまた学校へと戻ってくるのだ。なのでこの時間は送り迎えの親たちがスクーターなどで迎えにくる。一部の子供たちは近くの食堂や屋台で、親と一緒にカオソーイなどを食べている。また家庭によっては満足な食事ができず、空腹を抱えたまま授業を受けざるを得ない子供たちもいる。ラオスのこうした事情はまだまだ深刻なのだ。

   日本の学校給食で、あれが不味いこれは嫌いなどと言って、平気で食べ物を残しまくるガキには一度こうした世界の現状を見せた方がよさそうである。「食べられるだけで幸せ」という事の本質を、この飽食に満ちた日本人に理解してもらうことは出来るのだろうか?   

   日本には本当にバカな大人や子供が多い。テレビでは食べ物で遊ぶバカな企画を通すバカオトコで蔓延し、学校では大量に給食を残す甘ったれたバカガキで溢れ、飲食店では「ご飯を食べると太るしぃ〜」と、寿司屋でネタだけ食べては平然とシャリを残すバカオンナで溢れる。日本はもう来るところまで来たのだなあ・・・と、それらの光景を思うともう溜め息しか出ない。

   ちなみに、日本の食料廃棄率は世界一である。年間5500万トンもの食料を輸入しておきながら、その3分の1である1800万トンを棄てているのだ。もはや「お金を払っているのだから云々」だの言えるレベルではない。テレビで散々食べ物で遊んでおきながら「愛は地球を救う」だなんて、よくもまあ平気で言えたものである。本当に地球を救いたいならこの事実を大々的に取り上げ報道して、真剣に食に対する意識改革を図れバーローめ!  ・・と、段々と鼻息が荒くなってきたのでこの辺で。


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   宿はまだ決めてなかったが、まあこの時間なら充分余裕があるだろう。通りがけの適当なゲストハウスに飛び込んでみる。その名も「チャンティ・バンチット・ゲストハウス」。


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   うん、なかなかいい感じだ。ルアンパバーンは他と比べると宿泊料金は高い。ドミトリーならまだ安く泊まれるが、プライバシーの無いそんな所を好んで泊まる気にはなれない。少々値が張ろうとも個室を選んで、完全なる自分ひとりの空間を十分に満喫したいのだ。値段を聞くと一泊80000キープ、1080円という。これならバンビエンで泊まっていた宿と同じだ。ルアンパバーンの投宿先はこれで決まった。


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   宿でひと息つくと、さっそくメコン川を眺めに行ってみる。ルアンパバーンはメコン川の支流にナムカーン川が流れ込む合流点である。大河メコンはこのようにして幾つもの支流と合流し、その源流であるチベットからラオス、ミャンマー、タイ、カンボジアと流れていき、最後にはベトナムから南シナ海へと注ぐ、全長4000キロの大河である。このインドシナ半島の国々を潤す、まさに「インドシナの母なる大河」なのだ。


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   いいねえ・・・。と、しばらく見惚れていると、ちょうどそこに路上のアイス売りがやって来た。そうだなあ、ここはひとつ買ってみようか。


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   つぶつぶナッツ入りのチョコレートアイスバーである。アイスなんて日本にいる時は見向きもしない。酒を呑むようになってからは、甘いものとはとんと縁が無くなってしまったのだ。懐かしいチョコレートの香りが、その甘みとともに鼻腔をくすぐる。口の中につめたいアイスの食感が広がった。・・・懐かしいなあ。もう20年以上、まともにアイスを食べたことはなかった。


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   左手にメコン川を眺めつつアイスを頬張りブラブラ歩いていると、川沿いには幾つもの展望レストランが連なりを見せていた。早朝のサンドイッチ以外はまともな食事をしていなかったので、ちょうどいいとばかりにその内のひとつに飛び込んだ。


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   18000キープでカオソーイを頼む。こうしたレストランは値段が若干高いが、景色の景観料も込みと思えば納得の範囲内である。時折メコン川を見やりながら、優雅にカオソーイに舌鼓を打つ。


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   カオソーイを食べ終えると、ずっとメコン川沿いに歩いていき、ナムカーン川との合流点を眺める。川には竹で出来たバンブーブリッジが掛けられており、ひとり10000キープで対岸へと渡れるようになっている。


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   ナムカーン川はメコン川に比べると小さい支流だが、そのこぢんまりと小さくまとまった景観はなかなかの美しさがある。バンブーブリッジが掛けられているのも、このナムカーン川なのだ。

   メコン川沿いの北側の道よりも、このナムカーン川沿いである南側の方が閑静としていて、とても静かな安らぎに満ちている。私はどちらかと言うと、このナムカーン川沿いの道の方が好きだ。緑豊かで人も少なく、騒々しい音楽もトゥクトゥクの呼び込みも無いので、この静けさに満ちた散歩道を妨げられることもない。ルアンパバーンの中でも、とてもいい時間が過ごせる空間なのである。


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   ルアンパバーンに以前来たときは、正直あまり印象に残らない地味な町としてしか映らなかった。しかし、今回の印象は全く違った。美しいのである。なぜだろう?  

   もしかすると、前回の長い旅による経験により、自分の中にあるかつての価値観や物の考え方が変化したからかもしれない。

   旅に出る前と旅から帰った後とでは、明らかに自分の中に変化が訪れていた。それは国内での日常生活においても顕著であった。以前は全く興味のなかったものに目がいくようになり、長年固執してきた考え方や習慣にはそれほど執着しなくなった。人は人、自分は自分と、人と比較することもいつの間にかやめていた。それを思うと、自分の中にある程度の幅が生まれてきたと言うことができるだろう。旅という名の学校によって、自分でも気づかない内に多くのものを学んでいたのかもしれない、なあんて書くと少々キザであろうか。


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   そんなことを思いながら、この心地よさを最大限に味わうべく、通りがけの売店でビアラオを買う。ビール片手に飲みつつ町を散策するのだ。そういえば、旅をしてもこの呑兵衛根性だけはひとつも変わらなかった。多分、こんな私は死ぬまで呑兵衛なんだろうなあ。お酒をやめるぐらいなら私は人間やめます。


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   ルアンパバーンを歩いていて気づいたのだが、この町に訪れる観光客は比較的年齢層が高い。老夫婦や子持ちの家族連れが多いのだ。それに、心なしか一人旅の者を多く見かける。老若男女問わず、ひとりで自分のペースでじっくりこの町と向き合っている印象を受ける。他の観光地では、ここまで幅広い年齢層の一人旅の観光客はいない気がするのだ。バックパッカーは勿論のこと、そうでない人も多勢見かける。どうやらルアンパバーンはあらゆる人々にとって関心のある土地のようだ。


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   町のメインストリートから、この長い階段をプーシーの丘を目指して登っていく。プーシーの丘は僅か150mほどの小さなものだが、ここはルアンパバーン全体の街並みを拝める絶景スポットなのだ。


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   丘の周辺には遮るものは何もない。見事な絶景である。遠くメコン川やナムカーン川の流れゆく様が一目で分かる。ラオスの中でも一大観光都市として有名なこのルアンパバーンも、こうしてみるとまだまだ多くの緑に包まれた自然豊かな街のようだ。

   この川と緑に恵まれた自然美豊かな街の景観が、これからも少しも損なわれることなく続くことを願うばかりである。


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   丘から降りてくると、町の中心部であるメインストリートではナイトマーケットの準備が始められていた。


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   こうやって道に敷いた敷物の上で、巨大な荷物の中から商品を手ずから一個一個丁寧に並べていく。細かい品物となれば並べるだけでも一苦労だ。一体、全部で何百個あるのかと思う露店も少なくはない。

   これを年老いた人から年端も行かない小さな子までが、その一つ一つを丹念に整えながら並べていく。まるで少しでもお客さんに手に取って見てもらえるように、一つ一つに願いを込めながら並べているようにも思える。事実そうだろう。こうして毎日一所懸命に心を込めて並べても、一個も売れずに終わる日だってあるに違いないのだ。その時は一体どんな気持ちでまた一つずつ袋に収めていくのだろうかと思うと心が痛む。

   この光景を見て、同じネパールの露店商たちのことを思わずにはいられなかった。ネパールもまたこのラオスと同じアジア最貧国の中の一つである。ここと全く同じ光景がネパールでも展開されているのだった。


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   ルアンパバーン名物のナイトマーケットは、だいたい午後4時辺りから徐々に展開されていき、午後も6時になる頃には大盛況となる。このメインストリート一帯が露店でギッシリ埋め尽くされるのだ。このマーケットに並べられている商品を順に眺めていくのも面白いが、露店の中で過ごすラオス人たちの営みを見るのもまた楽しみのひとつだ。

   持ち寄ったご飯をみんなで食べたり、露店商同士で井戸端会議を始めたり、子供たちは同級生たちと時折笑いながらお喋りを始めたり、はたまた泣き叫ぶ赤子をあやすお母さんがいたり・・・。ここにはラオス人の剥き出しの日常生活が展開されているのである。


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   さあて、と。そんなナイトマーケットを見物していると、さすがに腹が減ってきた。時間もいい頃合だし、これから混み出す前に、先に晩メシを食べておくことにしますか。さっそく食事の屋台がひしめき合っている通りへと行き、カオソーイを注文して食べる。うんうん、うまいぞ。


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   そうしてカオソーイを胃袋に掻き込んだ後、今度は食べ放題の屋台に出くわす。こちらは15000キープ、200円でドンブリ一杯盛り放題のビュッフェ形式だ。自分の胃袋と相談してみたところ、まだいけるとの回答を得たのでさっそくこちらにも挑戦してみる。


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   ・・・うーむ。カオソーイを食べた後なので若干控えめにしてはみたものの、全体的にみて少し青みが足らんかな。なんだか全体が黄色っぽくなってしまったぞ。だがまあ、バックパッカーはまず腹一杯食べることが先決なのだ。味や栄養は二の次である。

   どのおかずも食べてみると味がほとんど感じられないが、とにかく腹を満たすためにモリモリと食べ進めていく。まるでドラゴンボールの孫悟空になった気分だ。私の後ろの席についた欧米人カップルは、山盛りにしたそのドンブリの中身の大半を食べきれずに持ち帰りにしていた。

   ・・・確かに美味とは言えないかもしれない。それでもメシはメシである。私はこんな時、何でもおいしく食べられる自分の境遇をありがたいと思う。好き嫌いとかアレルギーといったものとは殆ど無縁だ。一人暮らしをしている時でも、味付けに失敗したなと思ってもおいしく食べることができた。もともと薄味好みなせいか、トーフでも何でも素材の味そのままでムシャムシャ食べては満足するのだった。味がくどいものは正直あまり箸が進まないが、それでも必ず食べるようにし、決して残すことはなかった。食べ物を残すという行為がとにかく嫌なのだ。

   私はとにかく出されたメシは全部綺麗に平らげる。茶碗のメシ粒ひとつ、ドンブリの中の麺一本残さない。だから、中国などにみるメシを残すことが美徳とされる文化圏では私は酷く狼狽してしまう。だが、結局は綺麗サッパリ平らげてしまうのである。なので、こうした国々では本人はうまいうまいと満足しつつも、その国の人たちにとっては酷いマナー違反を犯しているのかもしれないのだ。

   あれ・・・?  俺ってナンダカンダ言っても、結局のところ何も変わっていないのかもしれないな。


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   すっかり胃袋が満たされたあとは、再びビール片手にナイトマーケットを見物してみる。これがまたうまいんだ。こんな祭りのような最中でビールが飲めるのだ。呑兵衛にとって、こんなにうまいビールを飲むシチュエーションは他にはなかなかあるまい。


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   ナイトマーケットはすっかり本来の在り方を成し、多くの観光客の目を惹きつけていた。こんな素敵なお祭りの状況が、ルアンパバーンでは毎日毎夜繰り広げられているのである。こんな贅沢なシチュエーションを肴にビールを味わう。ラオスという国は、本当に何から何までうまいと思える国なのであった。