昔、セレンディップの国に3人の王子さまがおりました。
父上である王さまはジアファといいました。
ある日、ジアファは大きくなった息子たちを更に鍛えてやろうと、
旅に出すことにしました。
セレンディップを出発した3人の王子は、
やがてペルシャの国にやってきました。
そして都の近くでひとりの男に出会いました。
その男はひどく落ち込んでいて、
王子たちは一体どうしたのかと彼に訊きました。
「ラクダがいなくなっちまったんでさぁ。
旦那方、知りませんかねぇ? 困っちまいまして・・・」
すると王子たちは、そのラクダを知ってるかのように話しだしました。
「お前のラクダは片目が見えないだろ?」
「それに歯が一本抜けてるね?」
「それから足が一本悪くて、引きずって歩くだろう?」
それがみんな当たっていたので、
ラクダの持ち主の男は3人が自分のラクダを本当に見たのだろうと思って、
王子たちが来た方を探したのですが見つかりません。
男は道を引き返し、また王子たちに会いました。
「旦那方、ラクダはあっちにはいなかっただよ・・・
本当に見たのかね?どうして知ってたのかね?」
するとまた王子たちはペラペラと喋りました。
「お前のラクダが背負ってる荷物は、片側がバターで、もう片側は蜂蜜だろう?」
「それから女を乗せてるね」
「その女は身ごもってるのだろう?」
またまた王子たちの言うことが当たっているので、ラクダの持ち主の男は思いました。
(こいつらはきっと、おらのラクダを盗んだんだべ!
でなけりゃ、こんなにいろいろ知ってるわけがないべぇ・・・)
そこで男は王子たちを訴えてしまいました。
「あいつらはラクダ泥棒ですだよ!
大事なラクダを盗まれましただ! どうか引っ捕らえてくださいまし!」
王子たちは皇帝の兵士たちに捕らえられました。
皇帝は、なんと王子たちに死刑を宣告します。
そんなムチャな・・・
王子たちの命は風前の灯火・・・!!!
さぁ、どうする? スパイ大作戦のようにカッコよく逃げ出すか?
いえいえ、それからまもなくラクダは見つかって、
王子たちの容疑は晴れました。よかった、よかった・・・
皇帝のベラモは不思議に思い、王子たちに尋ねました。
「どうして見たこともないラクダのことがわかったのじゃ?」
王子たちはスラスラと答えました。
「道ばたの草が、左側だけ食べられてましてね。
だから、右目は見えないのだなぁ、と推理したわけですよ、ふふふ」
「草を噛んだ跡を見て、歯が一本ないのだな、とわかりましたよ」
「片足を引きずった跡が道についてましたからね、カンタンですよ」
「道の片側にはアリがぞろぞろいましてね、
もう片側はハエがぶんぶんしてました。
だから、アリんこがいた側はバターで、
ハエがいた反対側は蜂蜜だって思いましてね」
「ラクダが座った跡のそばに、
トイレタイムの跡がありましてね。
いや、ラクダじゃなくて人のです。
これは女だなとわかりましたよ。
いや、別に私は変な趣味があるわけじゃないんですけど」
「女が座ったところに手の跡があって、
おなかの大きい女性がよっこらしょ、と手をついたのが見えるようでしたよ」
ベラモは王子たちの機知に驚き、
自分のそばに置いていろいろな問題を解決させました。
やがて、王子たちは惜しまれながらペルシャを後にし、
セレンディップへ帰って行きました。
そして、それぞれ別の王国の王となり、幸せに暮らしたということです。